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OKR運用が2年目に突入してわかってきた、機能させるためのコツ

はじめに

この記事はいちばんやさしいdora_e_mの Advent Calendar 2020、要するに一人アドベントカレンダーの23日目のために書いた記事だ。

今日は目標管理方法「OKR」について書く。今年の3月に「ハッカーライフラボ」でOKRについてお話をさせていただく機会があった。

このときは、OKRを導入してから1年ほど経過したタイミングでの手ごたえを話した。この記事では、あらためてOKRとは何か、なぜOKRか、どう導入するのがよいかを簡潔にまとめ、またOKR運用2期目に突入し見えてきた課題や現場で実践している取り組みについてまとめる。

逆に書かないこととしては、MBOなど他の目標管理手法との比較だったり、OKRを運用する上でどのようなツールを使うか、といった話だ。
OKRは特定のツールによってのみ運用しうるものではなく、また組織のコンテクストによって最適なツールは変わってくる。そういった理由から、ツールには触れていない。

OKR早わかり

OKRの基本形

OKR基本形

OKRは、「Objective」そして「Key Results」の頭文字をとった呼称だ。

Objective 目標
Key Results 主要な結果

達成したいことをOに、そのOが達成されていることを示す指標をKRに設定する。
Oに対しKRは2-5個が望ましい。
特徴的なのが目指す達成度に対しての考え方で、「100%達成」を目指すのではなく、達成度が60-70%になるようなチャレンジングなKRが望ましいとされている。

OKRツリー

OKRツリー

また、OKRは組織が目指すところと個人のアクションをつなぎ方向性をそろえるための仕組みが内包されている。会社のKRがチームのOとなり、チームのKRが個人のOとなり…と連動していく。(なお、この図では便宜的に会社-チーム-個人としたが、組織の規模によってはもっと階層が増える)

CFR

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C: Conversation(対話)
F: Feedback(フィードバック)
R: Recognition(承認)

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組織の会話に依らず対話し、フィードバックし、承認することでそれぞれの目標を連動させる。OKRを組織に浸透させるには、そして機能させるためには、CFRを意識したコミュニケーション設計が重要だ。

なぜOKRを薦めるのか

私がOKRを導入することになったきっかけが、そのままOKRを推奨する理由となる。それは以下の二つだ。

・組織と個人の方向性をそろえられる
・目指すものが「できる範囲」ではなく「達成したいこと」になる

ひとつめから解説する。

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会社の目標と個人の目標がズレてしまう、という経験はないだろうか。会社の方向性の理解不足だったり、方針転換だったりでズレていってしまう。結果、会社からすると期待した成果が生まれないことになるし、個人からすると評価されないという結果が待っている。
これはOKRじゃないと解決できない課題というわけではないが、OKRではツリー構造があるため仕組みとして発生しづらい。

ふたつめについて。

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多くの場合、目標設定は「100%」を目指すことになる。これは、100%に到達していない場合に「うまくいっていない」という印象を与えることになる。それを避けようとすると、何が起こるか。

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そう、100%達成できる置きに行った目標になってしまうのだ。しかし、OKRは達成度が60-70%になるようなチャレンジングな目標設定を求める。無難で置きに行った目標ではなく、達成したいことを目指す目標設定にするよう促されるのだ。

OKRとアジャイル開発

そしてもう一つ、私がOKRを導入している理由がある。
アジャイル開発を進めるにあたって、OKRと連動させることで向かうべき先がはっきりするのだ。私のチームではスクラムを採用しているので、以下の図はスクラムの場合の例になる。

OKRとアジャイル

このOKRとの連動は、チームからみた会社組織を「顧客」と捉えたときに「顧客と対話」するためのしかけとなる。

導入のコツ

小規模な組織であれば、いきなり全体に適応するのもいいだろう。しかし、それなりの規模であり、またこれまで別の目標管理手法を導入し浸透している組織にいきなり導入するのは難しい。そういうときは、組織の一部に出島をつくり導入するのがよいだろう。

そして、その際に気を付けるべき点は2つ。

・2階層以上の範囲に適応する
・既存の手法との互換性を担保する

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図のように、複数階層に対して適応する。そうすることで、ツリーによる連動の効果を検証できるからだ。
互換性に関しては、たとえば会社全体と直結する単位の組織で適応するなら、図のように会社のVision/MissionをOに変換するのがよいだろう。

対話不在のトップダウン導入はNG

前述したように、OKRは対話が生命線だ。CFRを意識したコミュニケーション設計が求められる。よって、上位層でのみ目標設定しメンバーはそれを実行するだけ、というのは避けたい。特にOKRの場合チャレンジングな到達点を目指す目標設定になるため、なぜその目標になっているのかという腹落ちなくしては機能しないのだ。

運用上の課題

これはOKRに限った話ではないが、短期的なプロダクトバリューに寄与しないものは優先順位が上がりづらい。たとえばテスト整備やメトリクス改善などだ。長期的な投資効果を明確にし優先順位を上げていくのが正攻法だが、難しい場合は1日1時間のカイゼンタイムを設ける、など仕組みでカバーするのがよい。

ツリー構造の限界

1年間OKRを運用して感じたのが、「ツリー構造には限界がある」という点だ。私の組織の場合はチームごとに完全にやることがわかれているわけではなく、相互に関連している。なので、OKRを分割していったときに、綺麗に分割できないポイントがあるのだ。

昨年は無理やりツリー構造にしていたのだが、どうしても歪が出てしまった。そういった反省から、今年度はセミラティス構造での連動という形をとっている。あるKRが複数のOに対応していたり、といったことを許容したのだ。

OKRセミラティス

また、会社全体のOから直接チームのKRを設定するということも許容している。下図においては「グループ」が「チーム」の上位構造になるのだが、「チーム」の射程はグループのOには内包されるものの、KRに内包されるとは限らないのだ。そういった組織構造を表現するために、飛び地でのOKR連動を許容している。

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まとめ

OKRを導入することで得られるメリットは以下のとおり。

・組織と個人の方向性をそろえられる
・目指すものが「できる範囲」ではなく「達成したいこと」になる

小さな範囲で、それでいて複数階層が対象となるようなところから導入していく。既存の組織の体制と互換性をもたせる。
CFRを機能させ、腹落ちした状態で目標に迎えるようにする。
そして、自分たちの現場にフィットした形にOKRを進化させてゆく。

この記事で紹介した内容は、私個人の経験からくる気づきと、ベストプラクティスだ。あなたの現場にフィットするとは限らない。しかし、オーセンティックなOKRからどのように現場にフィットさせていくのか、という点で考え方の参考になれば幸いである。

参考文献

OKRとは何か、という基本的な部分やOKRによって成果を上げた事例はこの本から学んだ。

OKRツリーをセミラティス構造にする着想は、本書から得た。

アジャイル開発に関しては、手前味噌だがこちらを参照している。




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