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相手の行動が期待と違ったときに、勝手に悪意を想像しないで

自分の感情と想像

仕事を進めていく上で、人と人が衝突してしまうことは不可避的に発生します。マネージャーとして多くの人々の相談を受けてきましたが、以下のような相談を受けることがあります。

  • Aさんのふるまいに困っている

  • 自分は◯◯のようなふるまいを期待していたが、実際にはXXのふるまいだった

  • Aさんはこの仕事に対してやる気がないのではないか

さて、この相談内容ですが、どこまでが事実、相談者の感情で、どこからが相談者の想像なのかを分析さると以下のようになります。

  • 【相談者の感情】Aさんのふるまいに困っている

  • 【相談者の期待(事実)】自分は◯◯のようなふるまいを期待していたが、実際にはXXのふるまいだった

  • 【相談者の想像】Aさんはこの仕事に対してやる気がないのではないか

感情については実際に相談者が感じたことですし、期待に対して異なるふるまいがあったというのは実際に起こったこと、事実です。ですが、「やる気がないのでは?」という疑念は、あくまで想像にすぎません。

ハンロンの剃刀

ハンロンの剃刀という考え方があります。もとは「製品に欠陥があった場合、それは企業の悪意によるものではなく無能か愚かさによるものである」という考え方です。

チーム内で人と人が衝突し、当事者がそこに悪意を見出しているときに思い出したいのが、このハンロンの剃刀です。

(個人的に「無能か愚かさ」という表現はあまり好きではないので、「なにか期待と違うことがあったときに、そこに悪意を想像せず「期待と違った」という現実だけを受け入れる」という考え方として解釈しています。)

なぜ「悪意」を見出してしまったのか

はい、あなたが見いだしている悪意は想像です、ハンロンの剃刀です、そんな考えは捨ててください。わかりましたね?

これで人間関係のこじれが解消するほど、人間は簡単なものではありません。「それはあなたの想像だから捨ててください」ではなく、その想像が生まれくるメカニズムを探求し、根本から対処していきたいところです。

脳は空白を嫌う

何かしら情報が欠損しているとき、脳はその欠損を埋めようと頑張る特性があるそうです。途中で中断した事柄がきになってしょうがないツァイガルニク効果もその一種でしょう。

この特性があるため、コミュニケーションの中で期待と異なるふるまいがあったとき、そのふるまいの行動原理を想像していくことになります。
そして、「期待と違う」ということは、自分自身の考え方、価値観であればそれはやったはずだということで、自分とは違う価値観を想像していくことになります。 ですが、他者の価値観を想像することは難しく、そうすると自分の価値観の中で「期待と違う行動をとる理由」を探索し、「やる気がないのでは」といった想像を膨らませてしまいます。

空白であることを自覚する

だからこそ、それが事実なのか想像なのかを分離して捉えたいところです。私も、マネージャーとしてメンバーと対話する際、想像で話している兆候を感じたら「それは実際にあったことですか?想像ですか?」を尋ねるようにしています。(なお、想像で会話している兆候としては、「◯◯であると感じられる」「あの人は◯◯だから」のようなフレーズがあげられます。)

そういうことを言いながら、私自身も想像で判断しそうになることがあります。想像自体を止めるというより、想像してしまったあとに「これは想像だ」と認知することが大切です。

空白を減らすために

では、空白を減らすためにはどうしたらいいか。その人への理解を深める、行動の背景について直接尋ねていくことが望ましいです。ようは「話そうぜ!」ってことです。

では、漫然と話す時間をとればよいかというと、そうでもありません。ガンダムの会話ばかりしていても、ガンダムに詳しくなっても目の前の人に関する情報は増えていきません。ガンダムについて話したい気持ちをおさえて、仕事の文脈で1on1を実施する、チームとしてドラッカー風エクササイズのような価値観、期待を探求するワークを実施する、などが有効です。

そういった対話の積み重ねが、自分の中に解像度の高い他者を作り出していきます。

悪意が頭をもたげたら、立ち止まってみよう

負の感情を抱き、そこから想像をひろげてしまうと、その想像が負の感情を増幅させてしまいます。想像の中の「嫌なヤツ」は想像でしかないのに、それを真実だと捉え、だんだんとコミュニケーションを取りづらい相手になっていってしまいます。
そこに悪意はありません。感情と想像を切り分け、自分が「嫌だなあ」と思ったことは受け入れつつ、相手に悪意は見出さずよりよい関係を築くためのアプローチをとっていきましょう。

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