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エンジニアリングマネージャーの孤独〜社内コミュニティのススメ〜

はじめに

エンジニアリングマネージャー(以下EM)という役割には、「ロールモデルが少なく、組織で教育体制も整っていないので、徒手空拳で奮闘しがち」という悩みがつきまといます。

はじめてマネージャーになった頃、周囲のマネージャーたちが「マネージャーは孤独な存在。メンバーには話せないことを抱えているから、それまでのような関係性を保つのは難しい。だからマネージャー同士で飲んだりしてるんだ」と言っている姿があまりしっくりきていませんでした。
現場にもっと飛び込んだらいいのに、マネージャー同士じゃなくてチームのそばにいたらいいのに。その想いはある程度は良いものだと今でも思いますが、経験を重ねた今、当時のマネージャー陣の気持ちがわかるようになってきました。

なぜEMは孤独になりがちなのか

EMは、人材育成・組織設計・技術選定・プロジェクト推進など幅広い責務を担うがゆえに、「これだ」というベストプラクティス、「この人こそTHE EMだ」というロールモデルが非常に少ないポジションです。もちろんEMとして名を成している方はたくさんいらっしゃるのですが、その定義のあいまいさゆえ、同じEMという名前を冠していてもやっていることが全然違ったりします。だからこそ、ロールモデルの定義自体が難しいのでしょう。

チームの中に目を向けてみましょう。チームのサポートをする立場でありながら、自分自身をサポートしてくれる存在が社内にいない、なんてことはざらにあります。そんな状態だと、「方向性は合っているのだろうか」「もっと良い方法があるのでは?」と迷いながら手探りで進めることになります。

そして、EMが手探りで進める仕事には、おいそれと人に共有できないものも含まれます。人事考課に関わるもの、まだ全体に公開はできない組織設計の青写真。なにをやっているかを開示できないがゆえに、メンバーからは「何をやっているかわからない」と思われる。透明性が欠如したところからは信頼関係のほころびが生まれやすく、メンバーとの間に距離ができてしまうことがあります。孤独。

また、同じ組織のEM同士であっても交流が少なく、自身が抱えている課題は自身で解決しなければならないという状況になりがちです。孤独。

横の繋がりをつくる

そういった「EM孤独問題」については、横のつながりを作る、というのが1つの解決策になります。

会社という垣根を越えたEMのコミュニティは、近年活動が活発になっています。そちらへの参加はぜひおすすめしたいところです。

ここでは、社内でEM同士のコミュニティを作るという方法にフォーカスして掘り下げます。同じ職種同士だからこそ、そして同じ組織に属しているからこそ、実務レベルで具体的な悩みの共有と解決策の議論がしやすくなります。

社内に閉じたコミュニティでは、OKRや1on1の実践事例、マネジメントスキルの伸ばし方など、その現場に即した、かつ生々しい成功談・失敗談を共有し合えるメリットがあります。社外コミュニティでも「ここだけの話」は出てきますが、同じコンテキストを共有している者同士じゃないと話せないことはたくさんあります。

悩みを1人で抱え込まないことは、精神的な安定にも直結します。他のEMと気軽に情報交換をするだけで、「あ、同じように苦しんでいる人が他にもいるんだ」と気づき、前に進む原動力を得られます。

また、お互いを支え合う関係性が生まれることもメリットのひとつです。横の繋がりは単なる飲み会や雑談の場だけでなく、「学びのコミュニティ」として発展していきます。たとえば、勉強会やワークショップの企画を横のつながりで行うことで、お互いの知見を深め合うだけでなく、継続的に助け合う関係を構築できます。
私自身、事業のOKRの運用について他のEMと一緒にブラッシュアップする作業に取り組む中で信頼関係が生まれ、とても仕事を進めやすくなったという経験があります。

どうやって始める?

横のつながりを作りたいと思っていても、どう作ったらいいのでしょうか。共通の開発言語があるわけではなし、前述のとおりEMと一口に言ってもやってることがバラバラだったりします。
すでに共通の課題が見つかっているならば、その課題を解決することを目的として集まるのもよいでしょう。やるへきことがあると人は集まりやすいものです。
まだ、組織におけるEMとしての共通の課題がみつかっていないなら、まずはそれぞれが抱えている課題の共有から始めてみるとよいでしょう。

私たちの現場では「EM Lean Coffee」という活動に取り組んでいます。なにをやっているかというと、その名のとおりEM同士でリーンコーヒーをやっています。

リーンコーヒー形式で話すことで、そこで話すテーマに対して主体的に関わる機運が生まれます。自立性をもって議論を深めていき、それをぶつけあうことで集合知になっていきます。

EMという、つねに緊急性の高い業務にさらされているロールであるがゆえにお世辞にも集まりがいいとは言い難いのですが、「もっとお互いのことを知りたいね」「お互いにスキルアップしていきたいね」といった主旨の話が出てきており、横のつながりを作る装置として一定は機能しているな、という印象です。

EM同士が繋がるとチームも育つ

EM同士がつながり多面的な視点を得ることは、自分のチームの成長にも大きく貢献します。他のチームでうまくいったことを輸入してみたり、一緒にワークショップに取り組んでスキルアップしたり。
つながりがEMを育て、そのEMに後押しされるようにチームも育っていきます。

横の繋がりをもって、新たな景色を見に行こう

EMはロールモデルが少なく、孤独に陥りがちですが、だからこそ横の繋がりを意識して学び合う姿勢が重要です。

社内コミュニティを通じて多角的な知見を得ることで、自分自身のキャリアだけでなく、チームと組織全体を成長させることも可能になります。EM同士が繋がり、情報交換とサポートをし合う環境を作る。それがきっと、チャレンジしつづける組織になっていくための大きな一歩になるはずです。

この記事が、「自分1人で抱え込むのつらいな…」と悩む皆さんにとって、何かしらのきっかけになれば幸いです。




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