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Tidy First?を読んだ

はじめに

ケント・ベックの新刊が出るとなれば、アジャイル界隈の人間は黙ってはいられないでしょう。Tidy First?(先に整頓すべきか)というタイトルも示唆に富んでおり、期待が高まります。

幸運なことに、翻訳者の1人である@ryuzeeさん(吉羽さん)より本書をご恵投いただき、発売よりちょっと早めに読むことができました。その感想をしたためます。

ネコチャァン

オライリー史上もっともチャーミングな表紙なのではないでしょうか。整った毛並みからTidyを感じますし、ちょっとしたきっかけで全てを乱雑にしそうな緊張感が、ネコチャァンからは漂ってきます。

薄い本

150ページにいくかいかないかというボリューム感の本書は、文字通り薄い本です。
3部構成、全部で33章で構成された本書は、一章あたりのボリュームがほんとに小さい。Tinyです。数ページ程度です。
ちょっとずつ読み進めるのに適しています。

なぜTidyという言葉を使うのか

第一部の冒頭に、とても印象的な一節があります。

「リファクタリング」という言葉は、機能開発の長い中断を指す言葉として使われ始めたときに致命傷を負った。

Tidy First? 第一部より

自分自身、機能開発の中断を前提とした大規模なリファクタリングに関わってきたことがあるので、なんとも身につまされる一節でした。

本書で扱われるTidy(整頓)は、リファクタリングのサブセットです。とても小さなサブセット。ガード節を設けたりデッドコードを削除したり、なんてのはちょっとずつやれば、「機能開発の長い中断」にはつながらないわけです。

いつ整頓を始めるか

Tidyのようにコードを整理整頓する作業は楽しいものです。誰だってずっとやっていたくなります(※要出典)。でも、今が整頓のための最適なタイミングであるとは限らないし、それが整頓するべきものでないこともあります(たとえば1年くらい誰も触っていないコードなら、今後も更新しない可能性があります)。
第二部は、そこらへんについての知見がまとめられているので、「いつコードのちょっとした改善に手を付けたらいいんだろう…」って悩んでいる人は必読です。

第三部はちょっと難しい

ふむふむと読み進められる1,2部と比べて、3部はいささか歯ごたえがあり難解です。(ジョジョと逆ですね)
(NPV、オプショングリークスなど自分にとって耳慣れない単語が出てきたので、余計にそう感じるのかも)
いますぐ価値を生むものか将来に価値を生むものか、その観点は意思決定を下すうえで重要な要素です。

そもそもエンジニアリングを楽しむ態度

本書を通読して感じたのは、極めて冷静な視点を持ち、ビジネスとの接続性にも触れながら、根本的に「エンジニアリングって楽しいよね」という考え方が通底している、ということです。楽しみながら、最高のエンジニアリング、最高のビジネスやっていこうな、という態度。それを実現するための、Tidy Firstな考え方。
リファクタリングが重厚なものになってしまった現代に、まさに必要な一冊でした。

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