「われわれはなぜここにいるのか」のつくりかた
この記事で扱うこと
インセプションデッキの要素のひとつで、プロジェクトの存在意義を問う「われわれはなぜここにいるのか」。そのつくりかたについて紹介する。
なお、インセプションデッキって何?という方は、@takaking22 さんのこちらの記事をご一読いただくことをお勧めする。
留意点
ここで紹介する方法は、唯一絶対のものではない。
STEP0: なぜ「われわれはなぜここにいるのか」を作るのかを伝える
プロジェクトの存在意義、方向性を明確にするために、「われわれはなぜここにいるのか」はある。まずは、作成プロセスに関わる人たちにそれを伝えよう。さて、それでは、作成プロセスには誰が関わればいいのだろうか。
なにより大切なのは、そのプロジェクトに関わる全員が「われわれはなぜここにいるのか」を作成するプロセスを共有し、その中で共通認識を形成していくこと。
最終的な文言には明記されていない文脈、対話の中で「採用しない」と判断されたもの。そういったことを全員で共有しておく。
STEP1: それぞれが考える「われわれはなぜここにいるのか」を書き出す
最初のステップでは「それぞれが考えているプロジェクトの存在意義」を各自で書き出してもらう。
これは個人作業で行おう。また、可能ならばお互いが何を書いているか見えないようにしておきたい。この時点では他人の考えに引っ張られず、フラットな自分の考えを明らかにしてほしいからだ。
STEP2: 個人の「われわれはなぜここにいるのか」を共有する
このステップの目的は「互いのdiffを知ること」。
それぞれが書き出した「われわれはなぜここにいるのか」を共有し、肯定も否定もせず受け止める。
STEP3: グルーピングする
このステップでは、プロジェクトに関わる人たちが何を大切にしているのかを概念レベルで理解することを目指す。
書き出してもらった「われわれはなぜここにいるのか」を、類似した内容同士でまとめ、ラベルを貼ってゆく。KJ法などを使うとスムーズにまとめられるだろう。
STEP4 なぜそれを大切にしているのか、を問う
このステップでは「われわれはなぜここにいるのか」を深堀りし、全員が納得できる形へと導くことを目指す。
ある程度抽象的にカテゴライズされたラベルに対して、「なぜそれが大切なのか」を問う。一人ひとりにコメントしてもらいつつ、自由に対話をしてもらう。
すると、ラベルという抽象度では一致しているかに見えた思惑が、実は一人ひとり違う捉え方をしているということに気づく。実はあまり合意できていないことなどが見える化される。
STEP5: プロジェクトの北極星を定める
このステップは最終ステップだ。全員が腹落ちする、またその言葉をみたらワクワクしてモチベーションが湧き上がるような「われわれはなぜここにいるのか」を作り上げることを目指そう。
前回のステップで、それぞれの思惑の違いが明らかになった。STEP2でも少し触れる部分だが、一度抽象化というプロセスを経ることで「大枠では一緒だ」という意識をもちながらdiffと対峙できる。
この段では対話をしながら、最終的にプロジェクトとしての「われわれはなぜここにいるのか」を明確に定めてゆく。その中でもともともっていた個人の考えとは違う部分もでてくるだろう。
それは「やらないことリスト」への明記だったり、トレードオフスライダーにおける優先順位としての表現だったりという形でも表出してくる。
最終的に自分たちで文章としてととのえた「われわれはなぜここにいるのか」をつくりあげ、全工程を完了させる。
思考の砂利道が舗装される感覚
このようにそれぞれのdiffを受け止めながらプロジェクトとしての「われわれはなぜここにいるのか」を明確にすることで、方向性が揃っていく。
おそらく、出来上がった「われわれはなぜここにいるのか」は普段の雑談などでも顔を見せているようなキーワードが顔を出すことだろう。そして、そういった点と点が結びつきひとつの線となって現れているはずだ。
先日、「われわれはなぜここにいるのか」の作成を支援したチームからは「砂利道を舗装するように道がまとまっていった」というコメントをもらった。
そう、まさに砂利道を舗装するような作業なのだ。砂利道と舗装された道、どちらが走りやすいか?どちらが、道中に何かあったときに気づきやすいか?
進むべき先を明らかにし、ずんずんと突き進むために、インセプションデッキを、「われわれはなぜここにいるのか」をぜひ作って欲しい。