心筆スコープ 【ショートショート】
神社や寺院に保存されている、古くから伝わる書物などには「角筆」なるものが記録されていることが、広島大学の小林教授による研究で明らかにされている。
角や竹の先を尖らせた筆を強く押しつけ、その筆圧で凹んだ文字(くぼみ文字)が残されていたのだ。
歴史的書物は、その記載内容の研究は行われているものの、その紙自体の研究はほとんどされておらず、画期的な研究である。
研究に当たり、特別な光を当て「角筆」の文字を浮かび上がらせる「角筆スコープ」も作られている。
そんな研究を元に、ある企業が「心筆スコープ」を開発したのである。
書かれた文章に特殊な光を当てることで、その作者の本心が浮かび上がると言うのだ。
この機械は、メールやラインのデジタル文字にも効果があることが分かってきた。
一度書かれた文章には、その書いた人物の電気エネルギーが染みついており、デジタル化された文字にも、しっかりコピーされるようだ。
これにより、突然送られてくる詐欺メールはなくなり、社会情勢も落ち着くと思われたのだが、思わぬ事態になってしまった。
時の総理大臣が、辞任に追い込まれたのだ。
先日の所信表明が新聞紙面に載った際、その「本音」が国民にばれてしまったのである。
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