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雨音に包まれた静寂

今日は朝から空がどんよりとしていた。湿気を含んだ重い雲が空に広がり、光のほとんどを吸い込んでいるように感じた。何もかもが鈍い色合いに変わり、まるで世界全体がぼんやりとした灰色のフィルターに覆われてしまったかのようだ。少しだけ雨が降り、窓の外に滴が小さな音を立てて当たる。ニュースをぼんやりと眺めていると、能登地方でまた大雨が降っているという報道が流れてきた。

「能登地方」と聞いて、あの日の地震のことを思い出す。元日、突然地面が揺れたあの瞬間のことを。僕はその地域に知り合いはいないが、それでも映像で見た仮設住宅が、今また雨によって浸水しているというニュースには心が痛む。大地が揺れ、人々が家を失った直後にまた災害が襲うなんて、一体どうしてこんなに不運が重なるのだろう。仮設住宅に避難している人たちは、これまでの生活のすべてを一瞬で奪われた上に、再び雨に追い詰められている。想像するだけで胸が締め付けられる。

不思議なことに、人間というのは自分の身に降りかからない限り、どこか他人事のように感じてしまうものだ。災難が彼らを襲ったように、いつか自分にも同じことが起きるのかもしれない。それを考えると少しだけ恐ろしくなるけれど、だからといって何か具体的な準備ができるわけでもない。結局、僕たちはいつも「その日」が来るまで、ただ待っているだけなのかもしれない。

窓の外を眺める。雨はまた少し強くなり、空気は冷たさを増していく。部屋の中は静かで、何かを考えようとしても、思考がどこか霧の中で迷子になってしまう。こんな日には、ただ静かに時が過ぎていくのを感じるしかないのだ。

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