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【家賃からの解放】 逆さの城(4)

そもそも「氷見うどん」というのは、茹でたあと、冷たい水で〆て、大層コシのあるうどんだと、Sがいう

ところが、ホテルのレストランで出てきた「氷見うどん」なるものは、コシのカケラもなく

コシがないだけなら、博多で有名な、わりと柔らかくなるまで茹でたうどんも

わざわざ指定よりも長くふやけるまで時間をかけてつくる「10分どん兵衛」が流行ったりもした

このホテルのレストランの「氷見うどん(仮)」は、なんだかぬるぬるしていて、そういった明確な意図を持ってつくられたとは、到底思えない代物だった

Sもそこら辺が気になったらしく、ウエイターに訊いたところ「確認して参ります」と

結論から言えば「本日は出勤していないが、料理長が考案したメニューです」とのことで

料理長…ふとレジの横にある食品衛生責任者の札の田口正雄(仮)という名前が目に止まった

確認すると、料理長なのだが、その名前になんとなく見覚えがあった

富山の某所で、自ら畑を耕しながら、地元の食材を使った完全予約制のレストランを開いて成功している料理人と同じ名前ではなかったか?と

料理長と料理人は別人だったのだが、結果として、2ヶ月以上も前に退職していることが、明らかになる

また別の日、せっかくなので富山の銘酒を、とルームサービスでオーダーしたところ、ホテルにあるのが「銀盤」だけだという

別経営のホテル内に居を構えている和食店なら、もっと品揃えはあるかもしれないが、とのことだが

富山には、有名な酒蔵が多数あり、その品揃えでは、インバウンドだけでなく、国内の旅行者に対しても、お粗末なのではなかろうか

富山で最近有名になった、錫(すず)を使った食器で「能作」というのがある

Sが取り扱っていたので、たまたま知っているだけかと思ったが、どうやらすでに全国区どころか、海外での知名度もあるという

せっかくなので、ホテルにあれば……と思ったが、まぁ、なかった

丸いポールような、置くとグラグラする「お猪口」がある

そのまま置くと、底が丸いので傾き、注いでも半分くらいしか注げない

それをコマのようにまわして、止まるまでしばらく待つ

すると、不思議なことに、間口が水平となり、表面張力が働くほどに、酒を注ぐことができる

そういった「粋」な仕掛けがあるなど「能」を冠するだけある地産品

その杯をゆらゆら、富山の銘酒を並べて愉しみたい

レストランマネージャーも能作を知らないというので「しばらく滞在するし、自分も使いたいし、買ってきてホテルに寄付するよ」と

ただ足が痛くて、とも伝えると、この頃にはもう、スタッフの不注意で足を怪我させてしまったということは、スタッフの間で共有されているらしく

「代わりに買いに行きますが」と言ってくれるまでになっていた

のちにSから「なら俺から買ってくれたら良かったのに」と言われ「たしかにそうだな」となるのだが、このときは思い至らなかった

せっかく富山城公園の満開の桜を一望できる部屋に移り、足を犠牲にしてまで模様替えもした

どうせなら富山で一番だ、と自分が納得できる「酒盛り」をしたい

英語が話せない一件から、さらに気がついたことが、業務レベルで英語が話せるスタッフが、ナイトマネージャーの金さんと、支配人の浅沼さんの2人しかいない

ということを、金さんが教えてくれた

「富山は島流しなんです。全日空ホテルのメインは金沢なんですよ。優秀な人材は金沢に行くんです」

あくまで金さんが云うには。そこは強調しておきたい

ただ「ANAクラウンホテル」の「クラウン」の意味を知っているのも、金さんと浅沼さんだけだった

クラウンホテルのクラウンは「Crowne」と表記する

トヨタのクラウンに乗っていた人ならわかると思うが、通常のクラウンは「Crown」と表記する

最後の「E」が余計についている

これは、シェイクスピアが描いた物語からきている

「Crown」だと王冠を表すが、ここに「E」が足されると「ピエロ」道化師という意味も持つ単語になるのだ

王様のような暮らしと、サーカスのような楽しさを

最上級のグランドインターコンチネンタルと、ホリデイインの間のランクである「クラウン」

うまく設定されていると感心したことがあり、憶えていた

が、クラウンホテルで働く人間が「知らない」というのは、これまたお粗末なのではないだろうか

ホームページを見ていたら、本国の英語のページでしか「クラウン」のコンセプトについて書かれていなかった

研修もしないのだろうか

なんで、支配人の浅沼さんは「クラウン」の意味を知っているのかわかったかというと、本人と話す機会があったからだ

足を怪我させたのに、すぐに病院にも連れていかず、夜に痛くなったのでフロントに連絡したがスムーズにいかず、などの一連の出来事をナイトマネージャーの金さんが共有してくれていたらしい

実は、あまりに痛くなったのに、ナイトマネージャーが捕まらなかった夜、なんだか腹が立って、余計なことをしていた

たまたまオーナーが星野リゾートさんだと知ったので、あの顧客サービスにこだわる星野リゾートなら、こんなややこしいことは許さないだろう、と

ホームページから、一連の出来事について、クレームめいたメッセージを送ってしまっていた

Sはバリ島の不動産を手がけている

「ここのオーナー、星野リゾートなんだって」とやりとりしていたら、そんなSから

「時間があるなら、隣の長野県に星野リゾートがあるから、泊まってみるといいよ、勉強になるから」と言われていたのも、ついメッセージをしてしまった要因かもしれない

このあと、言われたとおりに、長野は松本とアルプスにある星野リゾートさんに泊まりに行った

そこで、またまた余計なことに気がつくワケなのだが、それはまた別の機会に

支配人の浅沼さんからお詫びのメールが来ていた

都合の良い時に部屋に来てくれるというので、待ち合わせ、直接話すことができた

できれば、改めて指定の病院に行ってほしいという

その際の料金はすべて負担します、と。こちらがメールの原文☟

インシデントだとかメールで挟むあたり、英語が堪能なのを超えて、人によっては鼻につくレベル、独特な表現

バイリンガルレベルで仕事をしていたら、こうなるのかもな、と、浅沼さんの経歴について金さんと話していたら、ヒルトンホテルグループから引き抜かれたか、なにかしらで転職してきた、という

ここで、脳内で何かが光ってしまった

というのは、富山の駅前に新しく「ヒルトンホテル」ができるというのである

ANAクラウンホテルが、市内ではホテルランクの頂点であったのが、ヒルトンホテルの登場で揺らぐ

ここから

浅沼さんがヒルトンホテルの廻しもの……クラウン(ピエロ、道化師)で、様々な業務を中途半端にすることで、ランクダウンを狙っている?

だとか

スタッフ……従業員たちが結託して、ミスを重ねることで、支配人を追いだそう!などの抵抗をしている?

だとか

浅沼さんが、星野リゾートに送ったクレームメッセージのコピーを持っていたのも気になった

星野リゾートはなんか関係してるのか?

だとか

あらぬ妄想を抱き描いてしまったのである

環境デザインの話をおもしろく書けないか

と、連載小説としてチャレンジしはじめたのはいいが、この「逆さの城」も、結局は最後まで押し通せず

こうやって「あらすじ」を書いて終えてしまうに至る

ダイジェストというのは、してもらうものであって、自分でしてたら世話ないわね

この話には2つの連続したオチを想定していた

まずは、

さて、このあとこのホテルはどうなったのか?気になる方はこちらから💁‍♂️

と、このホテルの宿泊奇譚を読んで、もし読者の方が「泊まってみたい」と思ってくださったら、このリンクから予約をしてくれるかもしれない

報酬として宿泊代金の何%かの楽天ポイントがもらえる

そのポイントで、またホテルに泊まるを繰り返していけば、見事に【家賃からの解放】の一助になるのではないだろうか

そして、こう続く

本当にドラゴンの化身を宿してしまったのかもしれない

結局、おかしなことばかり言ったりやったりするので、このホテルを追いだされることになってしまった

おかしいのはホテルではなく、どうやら俺だったらしい

the END
ちゃんちゃん、と

この場合だと「Game Over」かしら

クラウンホテルグループのブラックリストに載るってことは、インターコンチネンタルグループ全体に影響してしまうのだろうか……

それはさておき、おもしろい話をカキたい

師事している森先生から「夢十夜」をパスティーシュ、つまりはモノマネしてみるように言われ、チャレンジしてみた☟

そこで、気がついたことがある

現実に起きたことを、おもしろく仕上げるにはまだまだ筆圧が足りない、ということ

創作は創作で過去や自論に囚われず描き、自論は自論で、別にカキ連ね、いつかそれが融合する日を待つ

とはいえ「完全なる創作ならおもしろい話が書けるのか?」と言われたら「カキますとも」と、誰にいうわけでもなく、自分に発破をかけるのが精一杯なのが現状

自分の中に渦巻く余計なものをすべて吐きだして、一度、真っ新になれたら、と心から願う年末

まぁ、やり続けていればなんとかなるだろう

それに、目指すものがイメージできさえすれば、いつもなんとかしてきている

まずは、そこだわ
ゴールをハッキリと思い描くこと

気分転換に富山にでも行きますかね……そういえばヒルトンホテルはもうオープンしたのだろうか……

読むだけで脱炭素から「活炭素」に☟

【家賃からの解放】はこちらにマガジンもつくりました。現在約20篇を読むことができます☟


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