とりスープのきもち
ヒトに食べられるために改造された鳥は、いったいどんな気分なのだろう
藤子不二雄先生の「ミノタウロスの皿」のようなことを思いながら、マル鷄の骨、二体分を眺めつつ
肉とバラされた「ガラ」と呼ばれる骨群は、そこかしこにまだまだ肉が付いていて
それを大きめの鍋に入れ、水をたっぷりと注ぐ
そこに塩と酒、それとショウガとネギを加えて、火を入れ
あとはひたすらコトコトことこと
最初は、澄んだスープができる
肉をバラしたときにでる無駄な鳥皮も放り込んでいるのも相まって、脂が浮いてきはじめる
その脂だけを、うまいことアタマとオタマ使って、掬いたい
鷄の脂は、なんとなく金色にテカテカと光っているので、その名も「金脂すくいゲーム」
鷄脂だけをカキ集め「鶏油」としてカメにタメ、ほかの料理をつくるのに使うのだ
鶏油チャーハンなんて堪らない
鷄スープで炊いたご飯を、鶏油で炒めるなんて…この鳥が、もしくはその一族の卵もあれば、これぞゴールデンフライドライス、黄金炒飯
コトコトことこと
たまにカキ混ぜていると、だんだんと骨から肉がホロホロと剥がれていく
骨格標本ってこうやって出来ていくんだろうか
ある程度、鳥だとわかるカタチを保っていた骨群も、バラバラになってしまえば、もはやなんの骨だかわからない
そして、あるタイミングから、突如として白濁し始める
なんの拍子なのか、いまだにわからないが、澄んでいたスープが突然、濁りだして
肉がホロホロと剥がれだして、骨もバラバラと崩れだしていく頃合いだから、そこかしこから、なにかしらのエキスが溢れでるのだろう
白濁としたエキスは、瞬く間に拡がり、スープもなんだかトロトロしはじめて
いつしか蒸気までもがプルプルしはじめる
今日だけならいいが、日々、こんなスープをコトコトされたら、キッチンはもうギロギロベトベトだろうな
味見と称される行為も止めどなく、コクコクと変わっていく味わいが、これまた堪らない
初日にも1時間くらいか、2日目も、いま1時間くらいですかね、無為な時間がダラダラとすぎていく?
はたして無為な時間なのだろうか?
無になる時間?
それにしてはいろいろなことが次々と浮かびすぎて
味わい深いエッセンスを抽き出せただろうか
浮かんできたエッセンスをすくうことができただろうか
誰がためにコトコトしているのだろうか
誰がためのコトコトなのだろう
誰に味わってもらいのだろう
誰か味わってもらいたい相手はいるだろうか
いろいろなことが、キラキラした鶏油のように浮かんでは、トロトロと丁寧にすくいつつも、プルプルの蒸気となって、フワフワと消えていく
ボロボロになってしまった廃屋や古民家を、再生するのではなく、破壊して鳥小屋に
カゴ飼い?平飼い?
これは何飼いなんだろう
そんな新たなチャレンジに成功した、愛媛の旅ちゃん に、無事挙げることができた結婚式とともに「おめでとう」
こんなにコトコトことことしても、なにひとつ嫌なにおいがしない、滋味旨味ともに溢れる素晴らしい鷄を「ありがとう」
そのカケラひとつまで、無駄にすることなく、コトコトことこと
このスープを飲んでいたら、ずっと若気のいたれりつくせりウス
本日もご精読感謝🙏
無駄を価値に、そんな仕組みをひとつでも増やしていきたい。絵本や写真集をみるだけで実現できる仕組み、はじめました☟