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【家賃からの解放】 逆さの城

うどんが、おかしい

富山市内にある、全日空ホテルの一階のレストランでのこと

正式名称は、ANAクラウンプラザホテル

昔は全日空が管理運営をしていたのだろうが、最近は、海外のホテルチェーンに運営を委ねることも珍しくはない

クラウンホテルは、アメリカの大手ホテルチェーンが運営している

一番上のランクが、グランドインターコンチネンタル、そこから、インターコンチネンタル、クラウン、ホリデイインと続く

ホテルチェーンが設定した格付けとしては、3番目にあたるが、富山市内では、トップクラス「現時点では」一番良いホテルのはずだ

ホテルにチェックインした際に、朝食券とともにチケットを渡された 

そこには「氷見(ひみ)うどん」と書かれていた

どうやら、今回の宿泊パッケージに特典として付いていたらしい

ホテルはほとんどの場合、ネットで予約するのだが、一番お得な宿泊料金を選ぼうとネットを回遊していると、本来の宿泊料金よりも安いにも関わらず、そういった特典がついてくることがある

氷見は、ブリなどで有名な漁港だ

「うどんもあるんだね」

「そうなんですよ。結構、有名ですよ、よかったら滞在中にご利用ください」

本来は1800円するという

そんなハイクラスのホテルの一階、オフィシャルのメインレストランのうどんが「おかしい」

無事、チェックインも終わり、部屋に入る

入り口で靴を脱ぎ、靴下も脱ぐ

この解放感が日本人に生まれた良さのひとつともいえる

欧米人は、靴のまま部屋を闊歩する

ここも、アメリカのホテルチェーンが運営してるだけあって、玄関に靴を脱ぐ場所が区切られているわけではない

絨毯に、なんとなく「線」を見出して、そこを敷居とする

長く滞在するときは、黒いガムテープを貼って、オリジナルの敷居を設けたりするときもある

部屋にいるときは、たいてい裸足に備え付けの使い捨てのスリッパを履き過ごす

部屋は7階、窓からの景色だが、窓枠から離れたところからみれば、街の彼方に立山連峰を望むことができる

が、近くに寄ると、階下の大き目のセブンイレブンがあり、興醒めとまではいかないが、急に現実に引き戻された感がないこともない

隣にある富山城が眺望の部屋もあるだろうから、長くいることになるなら、途中で部屋を替えてみてもいいかな

主要なホテルの隣には、必ずと言っていいほどセブンイレブンがある

「必ずコンビニがある」という方が正しいのかもしれないが、個人的にセブンイレブンを贔屓にしているので、ついついそう見えるのかもしれない

セブンイレブンには「イブ」がいる

イブとは、聖書で有名な逸話、人類のはじまり、エデンの園、アダムとイブのイブ

しかも2人もいる

SEVEN ELEVEN

そう

S「EVE」N 
EL「EVE」N

「EVE」が2人

ちょっとしたハーレムだ

まぁ、こじつけなんだが

日本中、いろんなところを飛びまわる、しかも時間がランダムな仕事をしていると「通常のメシ」にありつけないこともしばしば

人というのは食べ物でできている

ソウルフード、エナジーフード

もし、セブンイレブンにある食べ物で元気を取り戻せるなら、それにこしたことはない

特に、世界的にウィルスが蔓延して、飲食店が自粛していたときは、なおさら世話になった

ホテルのレストランも閉鎖されていたり、ルームサービスさえ「20時までの提供です」と早仕舞いしてしまっている期間もあり

せっかく地方に来たのに、地元のうまいもんのひとつも味わうことなく「コンビニの弁当かぁ…」とガッカリするのではなく「やった!セブンイレブンがある!」と

さすがの「くいだおれ」の街、大阪もウィルスの波には勝てず

大阪の最高級ホテル、リッツ・カールトンの高層の部屋からの素晴らしい夜景を眺めながら、セブンイレブンのミートソーススパゲッティを食べた

富山に来る、ひとつ前の播州赤穂での仕事?はとんでもなくしんどいものだったのだが、やはり自粛と重なり、いつもなら喜び勇んで食べにいく「地のものの店」は全滅だった

それでも「イブ」がいる、2人も!

宿泊していた駅横の東横イン、その横でもキラキラと控えていてくれた

田舎のセブンイレブンは、真っ暗闇に本当に光ってみえる

そして、セブンイレブンは全国どこの店舗でも、たいてい品揃えが変わらない。同じオニギリ、同じお弁当、同じお惣菜が並んでいる

他のコンビニチェーンは、意外とランダムだったりする

セブンイレブンをマインドの中で、自分専用のエナジーステーションにできたなら、日本中どこに行っても、24時間、戦える男になれます

今回も、そんな「セブンイレブンめし」をいただくことになるかもしれない部屋

部屋は広めだ

けしてグレードの高い部屋だからということではなく。今回の予約ではアップグレードは設定しなかった

だからこそ残念なことがある。家具の配置だ

デスクをうまく配置すると、ひとつの部屋で、ワークとレスト、仕事と休息を気分を変えてとることができるようになる

デスクを壁に向かってではなく、窓から外の景色が見えるように向ける

狭い部屋であれば、仕方がない

デスクが化粧台も兼ねているからだ

だが、せっかく広めの部屋なのだ

ウィルスの蔓延でリモートワークも増えた。つまりは部屋で仕事する機会も増える

デスクの配置を少しだけ変える

「寝るだけ」から、ちょっとした工夫で、多彩な可能性を秘めた部屋へと変貌を遂げる

その配置転換が、のちのち面倒なトラブルを生むことになる

勝手に配置を変えたことで、怒られた?

違う、そんなことではない

なんだったら、デスクの位置を変えたいとフロントに電話して願いでれば、このクラスのホテルであれば、快く応じてくれる

配線で固定されている、など特別な事情がない限り

「あとで、元に戻すから」と言うと、たいていは「そのままで構いませんよ」と言ってくれるし、どんな風にレイアウトを変えるのか、確認の意味も兼ねてスタッフが手伝いにきてくれる

デスクの配置を変えると、デスクがあったところに大量の埃が溜まっていた

スタッフが慌てるそぶりもなく「掃除機をかけさせてほしい」と

取りに行き、戻ってきた

邪魔にならぬよう、入り口近くの風呂場にカラダを納めた

なんだか大きな掃除機だか、と見ていたら、そのスタッフが前を通りすぎるときによろけたのだ

そして、靴の硬いカカトで、裸足の足の甲あたりを、こう「グリっ!」と

よろけるがままに、全体重がカカトに集中しつつ「グリっ!」

普段なら避けれたのかもしれない

が、内側に開けた風呂場のドアに寄りかかっていたので、自分の体重は左足に偏って立っていて、すぐに反応して飛びのけなかった

なにより自分の部屋ということもあり、気を抜いていたのだとおもう

そこそこの痛みが走り、軽く呻いた気もする

さすがに慌てるスタッフ

氷を取りに行ったり、湿布を取りに行ったり

病院か、めんどくさいな

ホテル側「が」診断書をとっておかないと、のちのち揉めたときに困ることになる。しつこく病院に行くことを迫ってくるに違いない

ところが、ところがだ
一向に迫ってこない。どころか病院の「びよ」の字もでてこない。勧めてくる気配がない

責任者であるとか、マネージャーに連絡する様子もない

氷で冷やしていたら腫れてもこないし、そこまで痛くなかった

万が一のこともあるし、何が起きたか、備え付けの便箋に書き記して、サインして置いてもらえるか?と言うと、それもすんなりと

おいおい……俺が訴えたら、どうするんだ?

対応がおかしすぎないか?

そもそもスタッフの靴のカカトが硬いのもおかしい

歩くときにカツカツとうるさいから、客の静寂に配慮し、見た目はちゃんとした革靴でも、靴底はゴム製のものを履くのが普通だからだ

そう「おかしい」で思いだした

この「グリッ!と事故」が起きたのは、3日目のお昼ごろ、富山城側に部屋を移してもらったときのこと

部屋は8階。この富山城側の部屋からの眺めが最高だったのだ

窓から離れて観ても、窓に近づいて階下を見下ろしても

正面から眺めると城

近づくと、お堀や手前の公園の緑が眼下に拡がっている

右に寄ってから眺めると、桜が立ち並ぶ川沿いからの立山連峰

左に寄って眺めると、近代的な都会の街並みに切り替わる

富山の古代、中世、近代を、ひとつの窓枠に望めるのだ

ちなみに、7階だと微妙に低くて、9階だと微妙に高い

8階がベストだと思ったということを付け加えておく

さてさて、ところが、城側に向いた部屋数が圧倒的に少ない

ホテルの敷地を考えたら、設計する段階、建てる段階でもっと「城側の部屋」を増やせたはずだということ

これだけわかりやすく景色が違うのだから、誰が考えても城側の方が素晴らしい眺望になることがわかる

となれば、城側の部屋数が多くなるように設計するはずだろう、と

その疑問はすぐに解けた

あまりのことだったので、ストレートにスタッフに疑問をぶつけてみたからだ

なんと「城の方がホテルより後に建った」というのである

「城=古い」という先入観

城跡の公園ではあったが、こんな風に「富山城」として、もっともらしく建造され、城として公園ごと整備されたのは、ホテルが建造されたあと

お客様から同様の声が多いので、建て直すときには、きっと城側の部屋が多くなるように設計されると思われる

ことあと「グリっ!と事件」が起きるわけなのだが

ひとつおかしいと思いだすと、いろいろとおかしく感じる、違和感を感じるようになってしまう

そのキッカケとなったのが、うどん

うどんがおかしいと気がついてしまったことから始まる

うどんをおかしいと思ったのは、2日目の午前中、今回、富山にくるキッカケとなったSと会っているときだった

先ほどもチラッと書いたが、富山に来るひとつ前の仕事?がかなりしんどく厄介なものだった

観光の目玉、公共事業として、海沿いの山にハイキングコースをつくる、というのだが、その計画どおりに進めると山がおかしくなる

山があるから、その下に拡がる湾のプランクトンが豊富になる

プランクトンというのは、魚をはじめ、海の生き物たちのエサ

つまり、山は海にとっての発電所みたいなもの

そりゃ、観光資源もそこで生活する人たちの収入源として、欠かせないのかもしれないが、ハイキングコースはすでにあるのだ

別にそこに人が溢れかえって、新たに必要になったといつわけではない

その逆で「忘れ去られている」

地元の人たちは、江戸時代から存在する、その殿様のハイキングコースを忘れている

古くからありすぎるといつのもあるが、忘れ去られているということ自体、そもそもハイキングコースに需要がないってこと

にも関わらず、必要な公共事業として成り立ってしまうあたりが問題といえば、問題の根源ともいえる

地元の建設業者に金が廻り、その金が街に落とされる。そういった意味では正しいのだろうか

そのあたりの論議はさておき、いずれにしても山がおかしくなられては、海までおかしくなるわけで、可能なら中止してほしい

という、あくまで個人の意見
どこまで調査データを並べたところで、所詮、机上の空論

すでに決定している公共事業を覆すのは並大抵のことではない

しかも、肝心の被害を被るはずの、少なからずいる漁業関係者たちが、すでに容認しているから、事業として成立している

そこが肝心、それが肝心

要するに、部外者の余計なお世話なのだ

何か手立てはないか?と朝から夕暮れまで歩きまわる

何も浮かばないまま、徒労に明け暮れ、途方に暮れているときに、駅前で市議選のノボリを見つけた

出馬してやる!

勇んで役所に赴いたが、戦う前から惨敗だった

渋谷区民だったことを忘れていた。住民票は遥か彼方、東京にある

最低でも半年は、そこに住んでいる必要があった。それが出馬の条件だったのだ

Sは、富山と東京とバリ島に拠点を持ち、互いになにかと仕事をサポートしあっている仲間のような存在

サポートし合うというよりも、サポートしてもらっていることの方が多く、感謝しかない

出馬だのなんだの、またワケのわからないことをやっている

それはいつものことだが、今回はなんだかやたらと焦燥しきって、さらには意気消沈している、と聞いたとかで

心配して連絡してきてくれただけでなく、現地まで回収しにきてくれたのだ

「これから富山に帰るんだが、一緒に行かないか?それでしばらく休めよ」と

ふらふらで上の空の俺を富山まで連れてきて、このホテルに放り込み

2日目、様子を見にまたホテルまで来てくれた

こんな流れだったので、特に予定があるわけでもなく、とりあえず、ということで一階のレストランに入った

そこで「氷見うどん」のチケットがあったことを思い出す

「氷見うどん、コシがあってうまいんだよ」とSもオーダーした

(2)に続く☟


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