仕事ができないリーダーの特徴
今回の記事では、私が考える「仕事ができないリーダーの特徴」である、
「スタッフの話を聞かない」
「チーム全体で課題を共有しない」
という二つの特徴について解説していきたいと思います。
1 「スタッフの話を聞かない」
#僕の失敗談
僕はデイサービスで働いていたころ、
パソコンで書類を作ることに集中している時は、
しっかりとスタッフの話を聞けていないことがありました。
デイサービスでは利用者さんの「通所計画書」を作る作業
など、意外とパソコンを使う機会は多いものです。
そんな時にスタッフに話しかけられても、
目線はパソコン、
手元はキーをカタカタ打ちながら、
耳だけでスタッフの話を聞く。
ということをやっていました。
傾聴という言葉の「聴く」という文字には
「耳」と
「目」と
「心」が含まれているから、
その全てを使って聴くことが大切なんだ、
とよく言われます。
僕はパソコンに向き合いながら
「耳」だけでスタッフの話を聞いていて
「目」と「心」を使っていなかったから
その聴き方は、間違いだったわけです。
スタッフの話をしっかり聞けていない状態が続くと、
さまざまな問題が起こってきます。
利用者さんが落ち着かなくなったり、スタッフ同士の仲が悪くなったり、
愚痴をたくさん言うようになったりします。
僕は職場で次々と問題が起き、その対応でかなり苦労したのですが、
結局は僕がスタッフの話を傾聴しなかったことが原因だったのです。
#仕事の基本は「傾聴」
仕事の基本は「傾聴」です。介護の勉強をすればするほど、
「傾聴」が大事だと頭では分かっているはずなのに、
スタッフに対して「傾聴」ができていなかった。
それに気づいてからは、僕はある原理原則を作りました。
「スタッフ第一主義」
どんなに忙しくても、どんなに大事な仕事があっても、
スタッフから相談があれば、その相談を第一優先順位において
しっかりと話を傾聴する。
これを徹底的にやりました。
もちろん、パソコンに向かっている時にスタッフに話しかけられても、
手を止め、目はスタッフを見て、話を傾聴するようにしました。
そうすることでスタッフが生き生きし、利用者さんの笑顔が増えます。
スタッフ同士は協力し合い、
お互いのいいところを認め合うようになっていきます。
極端な話、「傾聴」さえできていれば、職場は回ります。
そのくらい「傾聴」は大事なのです。
昔書いた「傾聴の技術」についての記事がありますので、
参考に置いておきますね。
利用者さんに使う「傾聴の技術」を解説したのものですが、
実はスタッフとのコミュニケーションにも応用できます。
お時間のある方はお読みください。
2 「チーム全体で課題を共有しない」
#共通理解があるから風呂掃除ができる
介助の方法など利用者さんの対応で気を付けることや、
業務のやり方について全体で共有すべきことは、
どこの職場でも何らかの形で
スタッフ全体に伝わるように工夫していると思います。
このように、チーム全体が共通理解を持っていることは
とても基本的で重要なことです。
僕の職場では
「入浴介助をやった人が風呂掃除をする」
という共通理解がありました。
入浴介助で濡れてもいい服装をしている人が
風呂掃除までやった方が効率的だからです。
もしその共通理解がチーム全体になければ、
入浴介助が終わった後に風呂掃除をしない人が出てきます。
スタッフの中には入浴介助が終わってクタクタになった後に
真面目に風呂掃除をしている人もいるわけです。
これでは、真面目にやっている人が損するだけなので、
不公平感が増え、不満につながっていきます。
#共通理解だけでなく課題共有もしていますか?
日常的に行われている申し送りや引き継ぎ、
業務の手順やルールを共通理解することなど、
どの職場でもさまざまな情報共有が行われています。
そして、このような情報共有の中でも一番大切なのが、
何か問題が起こった時にすぐに課題を共有すること
だと私は考えます。
たとえば利用者さんが転倒した時。
「どのような状況で転倒したのか」
「今後転倒を防止するために何が必要か」などを
話し合ったり、「事故報告書」を作成して
全員で課題の共有をすると思います。
このように、「転倒」→「事故報告」のように
対応方法がマニュアル化されているようなものは
どこの介護現場でも、課題共有されやすいと言えます。
事故が起きた際は記録に残したり、
市町村に報告したりするという義務を事業所は負っています。
なので、やらない事業所はないのです。
では、
「課題を分析し、報告することが義務ではないもの」
に関してはどうでしょう?
そういったものは重要な課題ではないのでしょうか?
(ついてきてください。これから説明します。)
#「最優先課題」とは
リーダーは基本的には現場の最前線に立って介護をするというより、
少し離れた位置から全体を俯瞰して見る立場です。
そのような立場にいるので、
「今、この職場で一番の課題は何なのか」を把握するのは
リーダーの役目とも言えます。
課題として起こり得るものは、次のようなものがあります。
■スタッフ同士のコミュニケーション
■業務量のバラつきによる一部スタッフの疲弊
■利用者さんとの関わりが希薄になっている
他にもあると思いますが、その職場によって、その時々で、
「今、一番取り組まなければいけない課題」というのは変わってくるものです。
これを「最優先課題」と呼ぶことにしましょう。
そして、リーダーには「最優先課題」を決定する役目があります。
決して「報告することが義務」のものだけではなく、
日常的に起きている職場の課題に優先順位をつけて対応する必要があるのです。
#「最優先課題」の決め方
課題に優先順位をつけて対応するということについて、
少しわかりづらいと思うので、車で例えたいと思います。
想像してみてください。
毎日通勤で乗っている車から、次のような問題が同時に起きています。
しかし、あなたにはお金がないので、どれか一つ直すだけで精一杯です。
あなたならどれを直しますか?
A. タイヤがすり減ってきている
B. エンジンルームから異音がしている
C. バックをするときに少しこすって傷とヘコミができた
以下、答え合わせです。
もしかすると見栄えを気にする人ならばCを選ぶかもしれません。
惜しいですが、優先順位を間違ってしまうとAを選ぶかもしれません。
この中で一番の課題はどれかというとBかと思いますので、
Bを選んだ方は正確な判断ができています。
エンジンルームから異音がすることは通常ではあり得ません。
毎日通勤で乗っている車が急に使えなくなり、日常生活に大変な
支障が出ることが考えられるので、Bを一番の課題として考えるべきです。
ちなみにタイヤのすり減りも早めにタイヤ交換する方が良いのですが、
注意すれば走れるので、ここでは「エンジンルームからの異音」を
「最優先課題」として決めています。
#職場の課題はチーム全体で共有する
車は個人の所有物なので、個人の課題となり、最優先課題がどれなのか
決める時も1人で判断することが多いと思います。
もちろん、誰かに相談はするかもしれませんが、基本的にどれから
修理をするのか最終決定権をもつのは自分です。
これは当事者が自分しかいないということが理由となっています。
しかし、職場ではそうはいきません。
職場で発生した課題の当事者は、スタッフ全員です。
なぜならその課題を放っておくことで、スタッフ全員に何らかの
悪影響が及ぼされることが考えられるからです。
先ほどもあげた以下の課題は、すべてスタッフが当事者のものです。
■スタッフ同士のコミュニケーション
■業務量のバラつきによる一部スタッフの疲弊
■利用者さんとの関わりが希薄になっている
このように複数ある課題の中から
最優先課題はどれなのかリーダーが決め、
チーム全体で共有し、解決策を考えていく。
これがリーダーの最も重要な仕事の一つとなります。
もちろん最優先課題を決める際にスタッフに相談し
どれが根本的な問題となっているのか考えることも必要です。
そういう意味では、リーダーは「相談力」や
スタッフを「頼る力」も必要となってきます。
なんでも1人でで決めるということでは決してありません。
あくまで最終的な決定権をリーダーが持つということだけで、
決定するまでに「相談」をしたりスタッフを「頼る」ことが必要です。
#根本的な問題を特定しよう
「最優先課題」を決める上で重要なことは、
一番根本的な問題はどれか、を特定することです。
では、次の3つの例の中では、
どれを最優先課題として設定するべきなのでしょうか?
■スタッフ同士のコミュニケーション
■業務量のバラつきによる一部スタッフの疲弊
■利用者さんとの関わりが希薄になっている
あくまで私ならですが、
「スタッフ同士のコミュニケーション」を
最優先課題としてチーム全体で課題を共有します。
理由を説明します。
「利用者さんとの関わりが希薄」を最優先課題にしたとします。
ミーティングで「利用者さんともっと関わるようにしましょう」と言ったとしても、
意識してスタッフが動いてくれるのはせいぜい3日くらいです。
「業務量のばらつきによる一部スタッフの疲弊」はどうでしょう。
業務量の見直しはたしかに急いで行うべきことかもしれませんが、
根本的な課題かと問われると、どうも何かが引っ掛かります。
例えば、一部職員が疲れ切っているならば、
他のスタッフが声かけしたり手伝えばいいことなのです。
これはコミュニケーションの問題ではないでしょうか?
利用者さんとの関わりが希薄なのも、
スタッフ同士が声かけをしあって、
「Aさん退屈そうだから、話し相手になってあげて」など
気軽に言えるような関係があれば改善されるのではないでしょうか。
つまり、これも根本的にはコミュニケーションの問題といえます。
#解決方法はチーム全員で考える
根本的な原因がどこなのかを冷静に見極められたら、
最後のステップは次のようになります。
■チーム全体で課題を共有する
■解決方法をスタッフと一緒に考える
「課題の共有」の仕方については、全体ミーティングや
リーダーとスタッフが1対1で話す個別面接の
どちらも活用するのがいいと思います。
個別面接では、全体ミーティングでは言えないような
人間関係のことや仕事の中で不安に思うことなどを聞くことができます。
「解決方法をスタッフと一緒に考える」上で、
特に個別面接は重要だと思います。
スタッフ一人一人の気持ちや考えを受け止めなければ、絶対に
正しい解決方法は導き出せないからです。
可能な限り全てのスタッフの意見を受け止め、
それをもとに何を解決していけばいいのかを、
スタッフ中心の立場にたってリーダーが判断することが大切です。
このように「チーム全員で考える」ということは、
みんなで同じ時間、
同じ場所に集まって行う「会議」のような形式だけでなく、
(会議は時間だけが過ぎていき、何も進展しないこともザラにあるので)
個別に話を聞いて、チームの総意を確認する方法も非常に有効です。
まとめ
■リーダーがスタッフの話を傾聴することで、スタッフが生き生きし、利用者さんの笑顔も増え、職場の問題は減る
■職場の中での「最優先課題」を決めるのはリーダーの役割。「最優先課題」は「根本的な問題はどれなのか」を考えることで導き出せる
■「最優先課題」が特定できたら、チーム全体で共有して解決方法を考える。その際には個別面接も活用しながら、可能な限りスタッフ全員から話を聞く
今回はゴールデンウィークということもあり少し長めの記事でした。
また来週の日曜日にお会いしましょう!
今回も最後まで読んでくれてありがとうございました。