【第19回】ゆるゆるM&Aセミナー:ざっくりバリュエーション!②類似企業比較法1
日本一ゆるゆるなM&Aセミナーです。気楽に読んでください。
バリュエーションシリーズ!!
第2回~第3回は、類似企業比較法について説明します。
代表的な手法は、
PER法
EV/EBITDAマルチプル法
PBR法
です。
■類似企業比較法の考え方
前回のおさらいですが、上場企業の会社の価値は時価総額です。
これは、不特定多数の自由取引で決まった価格なので、絶対に正しいという前提をおきます。
では、投資家は何をみて株価を決めて買ったり売ったりしているのでしょう?
上場企業が公開している財務諸表などに記載されている財務指標(②)をみて、それにふさわしい株価=すなわち時価総額を決める(①)のです。
そして、同じ業界で同じような規模で事業をしている企業同士であれば、当然に同じ時価総額に収束するはず、つまり、①÷②=マルチプルは一定になるという前提になります。
そうであれば、非上場企業でも財務指標がわかれば、②×マルチプル=①と会社の価値を逆算できるはず、というのが類似企業比較法の原理です(ゆえに、マルチプル法とも言います)
財務指標には、通常収益力に結び付く純利益やEBITDAを使いますが、純資産を使う場合もあります。それぞれ説明します。
■PER法
①を時価総額、②を純利益としてマルチプル法を適用することを、PER(Price Earnings Ratio:ピーイーアール)法といいます。
最も単純なP/Lから簡単に類推できるので重宝しますが、EV/EBITDA法に比べると理論的に詰め切れていない方法であることがわかります。
P/Lのみしか開示されていないときや、償却費がわからないとき、とにかくざっくり試算したいときに重宝します。
■EV/EBITDAマルチプル法
①を企業価値、②をEBITDAとしてマルチプル法を適用することを、EV/EBITDA(イーブイ・イービッダ)法といいます。
EVは企業価値(Enterprise Value)で、ざっくりいうと時価総額に対し、保有現金や借金の影響を外した正味の会社の価値となります。
EBITDA(Earnings Before Interest, Tax, Depreciation, and Amortization)は、その名称の通り、金利・税金・償却費(ノンキャッシュコスト)を付加する前の利益ということで、純利益に対し、その会社の正味の現金創出力を示しています。
このように、より正味の事業力に近い指標でマルチプルを比較する方が、事業によるキャッシュ創出力と関係ない余分なノイズ(保有現金・借金・金利・税金・償却費)を省けるため、類似企業比較法の中では最も理想に近い分析といえます。
問題点は、単純にP/Lの数字だけでは計算できないことですが、上場企業であれば必要な情報は有価証券報告書や決算短信で確認できます。
■PBR法
PBR(Price Book-value Ratio:ピービーアール)法は、①を時価総額、②を純資産としてマルチプル法を適用します。
つまり、収益力は指標としていませんので、この基準を適用する場面は相当限定的です。
(対象会社が赤字の場合はPERやEV/EBITDAが使えないこともあるので、PBRや前回説明したコストアプローチを参考にすることもあります)
■まとめ
今日は、類似企業比較法の導入を説明しました。ポイントは、
✔対象事業と、類似する上場企業とを比較することで、対象事業の価値を類推する
✔多用する方法の代表格は、EV/EBITDAマルチプル法
次回はより具体的に実例をもって説明します。お楽しみに☆