【第20回】ゆるゆるM&Aセミナー:ざっくりバリュエーション!③類似企業比較法2
メリークリスマス☆日本一ゆるゆるなM&Aセミナーです。気楽に読んでください。
今回は、類似企業比較法の実例(数値編)です。
数値を追いながら見ていただければ、どのような計算しているかよくわかると思います。
最初にざっくりと計算の手順を説明しておきます。
✔類似企業を数社ピックアップ
✔類似企業それぞれの時価総額と企業価値を算出
➡ 企業価値=時価総額-現預金+有利子負債+少数株主持分
✔マルチプルを算出し平均をとる
➡ PER=時価総額/純利益、EV/EBITDA=企業価値/EBITDA、
PBR=時価総額/純資産
✔対象企業の財務情報×マルチプルで時価総額・企業価値を逆算
➡ 必要に応じコントロールプレミアム・非流動性ディスカウントを考慮
■まずは類似企業を選択し、時価総額から企業価値を算出
対象企業と同じ業界の上場企業を複数社選びます。理論的には、数は多ければ多いほうが良いのですが、逆に地域の違い・サイズの違い・微妙に事業内容が異なるなどの誤差が出る可能性もあります。
交渉などで用いる場合は、類似企業をどこを選択するかが争われます。
買い手であればマルチプルが低いほうが対価を抑えられるので、いろいろな言い訳をつけてマルチプルが低い企業を多く採用できるロジックを考えます。
①時価総額は、自己株がある場合は自己株を除くことで、株主が保有している全株式=正味の会社全体の株式価値となります。
時価総額は日々変動するので、できるだけ直近を採用します。
②企業価値(EV)は、時価総額から現金・有利子負債・少数株主持ち分の影響を排除することで、正味の事業力が評価された価値として計算されます。
現金・有利子負債・少数株主持ち分は、必ず同じ時点でのB/Sから持ってきます。通常は直近決算期末のB/Sで時期を揃えます。
■マルチプル算出
上場企業のEBITDA・純利益・純資産を調べます。
これらの財務指標は、
✔直近決算期(すなわち、前年度1年間)のP/L、B/Sから参照する
✔もしくは当年度の見込み=会社予想もしくはアナリストコンセンサス(市場予想平均)から将来見込みを採用する
のいずれかのパターンがあります。
本来はなるべく将来予測を使った方がよいはずではあるのですが、予想はあくまで予想(会社予想は当事者の意図も含まれる)であることや、そもそも入手しにくいことから、実績を使うことも多いです。
いずれにしても同じ期のP/Lにそろえることが重要です。
数値をピックアップできたらマルチプルを算出します。
PER=時価総額/純利益
EV/EBITDA=企業価値/EBITDA
PBR=時価総額/純資産
基本的にはそれぞれの方法において、平均値を用います。
この例では、
EV/EBITDAマルチプルは平均4.0倍
PERは平均6.2倍
PBRは平均0.9倍
■対象事業の時価総額・企業価値を逆算
対象会社のEBITDA・純利益・純資産とマルチプルをかけることで時価総額・企業価値を逆算していきます。
但し、EBITDA・純利益・純資産は類似企業からマルチプル算出したときと同じ時点であることが重要です。
時点にこだわっている理由は、理論的に時点がずれるとマルチプルは変わるはずだからです。
■非流動性ディスカウント・マジョリティプレミアム
必要に応じ、算出された企業価値・株式価値(時価総額)に調整を行います。
非流動性ディスカウント
類似企業の株価は「市場でいつでも換金できる」ことが前提ですが、対象会社が非上場企業の場合は簡単には株式を現金化できないので、その分値引きされることが一般的です。ざっくりと30%前後といわれます。
マジョリティプレミアム
類似企業の株価を決める投資家(株主)は「対象会社のコントロールは持たない=議決権比率は半数以下」であることが前提ですが、対象会社の議決権過半数以上を買収する場合は「コントロール」を手に入れることができるので、その分値上げすることが一般的です。こちらもざっくり30%前後といわれます。
■まとめ
類似企業比較法の実際の計算方法について、数値を追えるように説明しました。ポイントは・・・
✔類似企業の選定がポイントとなる
➡ 有利となる企業を選定できるロジックを探し出せ
✔財務指標の時点をそろえることが大事
それでは、次回からついにDCF法です。お楽しみに☆