スイーツメモリー(フルーツタルト)
フルーツはそれだけでカラフルで宝石のようだ。鮮やかな色で、小鳥や動物、昆虫たちに食べてもらって、糞とともにより遠くへ種を運び、子孫を残すためなのだろうか。色や甘い香りで生き物をおびき寄せる。そういうふうに生物は繁栄してきたのだろう。
数年前、私の住んでいる団地に、突然何匹もの猿が現れた。TVのニュースでもとりあげられた。テレビの画面には、住宅の屋根や塀を伝っていく様子が、写っていた。庭の家庭菜園の野菜を、地面から抜いて、一口齧って、放り投げたり、赤ちゃんを抱いた母猿や、子どもの猿、その横をかぼちゃを抱えてひょこひょこ歩く猿等、画面で見る限りは面白い。アスファルトの上に、一口齧って、捨てて行ったゴーヤが写っていた。ゴーヤはやっぱり嫌いなのね。
その日の夕方も、友人宅の塀の上に、一匹の猿が現れたそうで、動画を送ってくれた。ブルーベリーの実を、一粒ずつ、「これ なんやろ? これ なんやろ?」 と、ゆっくりゆっくり確認して食べている感じで、動きが人間ぽくて笑える。
この団地から、一時間程、田舎へ行くと、猿は珍しくもなく、よく出没するらしい。今から十年くらい前も、この団地に、一匹のはぐれ猿が、現れた。その猿はペットボトルが好きらしく、よく空のペットボトルを、がーりがりがーりがり、地面にこすりつけて遊んでいた。大事そうに抱えて、横断報道を渡っていたこともあった。(手は挙げていなかった)
また、ある時は、バス停で、バス待ちの人の隣で、並んで立っていた。両手でガードレールを持って、ゆーらゆーら揺れていた。まるで、「ねえ、バス、まだ来ないのぉ?」と待っている幼児のようだった。その隣で、おばさんや学生が、何事ないように、まっすぐ前を見て並んでいた。知り合いの大学生のお嬢さんは、足に抱き着かれたそうだ。「だーめよ」ってそっと手をほどかせたそうだ。
そんな訳で、テレビで時々、住宅街に猿が現れて、大騒ぎになり、追い払ったり、捕獲しようとしたり、ニュースになるが、この団地に現れる猿は、みんななんとなく、「そっと静かに放っておこうね」という暗黙の了解があったのだ。
しかし、その後、猿が出没することが、市や保健所に、知られることとなり、追い払い作戦や、捕獲作戦が始まり、大きな音で驚かしたり、罠をしかけたりして、平和な時代は終わってしまった。今では、猿は凶暴で怖い存在になってしまった。
あの可愛いペットボトル猿は、どうなったのかなぁ。美味しい果物、食べているのかなぁ。
フルーツタルト
〇材料 … タルト(薄力粉 バター 砂糖 卵) カスタードクリーム(卵 砂糖、小麦粉 牛乳) いちご さくらんぼ バナナ キウイ ブルーベリー