2019年 小学生部門 最優秀賞『囚われちゃったお姫さま』
受賞者
森 小久良さん(小5)
読んだ本
『囚われちゃったお姫さま』パトリシア・C・リーデ作 田中亜希子訳 東京創元社
作品
「夢中になっちゃった 五年生」
私の住んでいる街に、去年大きな図書館が開館しました。本棚が奥までずらっと並んでいて、その間や窓ぎわに沿ってたくさんの机といすがあります。そこでゆっくり本を読むことができます。私のお気に入りの場所は、外国の本の棚の奥にある、丸い柱の周りをくるりと囲んでいるベンチです。
その日も柱にもたれて、大好きなちょっと怖い本を読んでいました。顔を上げた時、目の前の本棚に並んでいる分厚い本が気になりました。
囚われちゃった
お姫さま
背表紙の題名が二行で書かれるくらい厚いのです。でも、色がとてもかわいかったので、すぐ手に取っていました。表紙には、元気そうな女の子とドラゴンが描かれています。ドラゴンの目にはまつ毛があるので、きっと女の子のドラゴンに違いない!表紙を見たとたんに夢中になっちゃったのです!
このお話は、誰でも思い浮かべるおとぎ話の世界ですが、登場するお姫様や王子様がちょっと変なのです。お姫様として必要なあらゆるたしなみの勉強なんて、退屈でうんざりしているシモリーン。こっそり剣術、魔法、ラテン語、料理などお姫様らしくない事をしていると、ハンサムなだけで退屈な王子と結婚させられそうになります。もちろんシモリーンは逃げ出して、自分からドラゴンの囚われの姫になってしまいました。だってドラゴンの囚われの姫になるのって、カンペキに尊敬される行為だから!!
さて、この後は当然いろいろな事が起こります。登場人物達が個性的で思わずニヤリとしてしまうのです。なぜかというと、有名なおとぎ話のエピソードがたくさん散りばめられていて、それに気づいたときになんだか嬉しくなっちゃいます。私が、特に気に入っているのは『巨人の三つの願い』のところ。シモリーンの賢さには驚くばかりです。「年とって寿命で死ぬ」なんて、おとぎ話には出てこないでしょう。それで全員納得できるように話をまとめてしまうのですから。
アリアノーラが囚われの姫になったいきさつなんて、いったいいくつのお話が隠れているの! 普通石になったら動けないのに、石の王子は動けてるし! そんなありきたりでないワクワクする展開が繰り広げられていきます。
この本を、めいっぱい楽しむには「どれだけ元ネタのお話を知っているか?」だと思います。この楽しさは一度読んだだけではわからないでしょう。私は、お姫様の物語をたくさん読んだけどこんな物語もあるなんて……もっともっとお姫様の本を探して読みたいです。そうすると、またこの本を読んだ時に新しいネタを発見できるかもしれません。でもその前に、まずはこのお話の続きです。実は『魔法の森』シリーズはあと3冊あります。まだまだ私の楽しい時間は終わりそうにありません。
最後に、これからこの本を読もうと思っている人にアドバイスです。休み時間の教室では絶対に読まないで下さい。読んでいる時のあなたの顔は絶対にニヤニヤしているはずです。ひょっとしたらおかしな声を出して笑ってしまうかもしれませんよ。友達から変な目で見られるかもしれないので、読む時は気を付けて下さいね。
受賞のことば
「え? 本当?」受賞したと聞いた時、すぐに信じられなくてとてもびっくりしました。すごくうれしかったです。私は本を読むのは大好きだけど、文章を書くのが苦手です。だから、本当に面白い本なのにこの本の楽しさが伝わったかどうか心配でした。でも、受賞して面白さ、楽しさが伝わったんじゃないかなと安心しました。ありがとうございました。これからもワクワクする本を読んでいきたいです。
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(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。――読書探偵作文コンクール事務局)
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