見出し画像

切なくも心温まるミステリー「名探偵じゃなくても」

こんにちは、読書子です。
本日、紹介する本はこちら。
小西マサテル作「名探偵じゃなくても」

2023年このミステリーがすごい大賞受賞作「名探偵のままでいて」の続編です。
前作を読んで続きが気になっていたので手に取りました。
主役はレビー小体型認知症を患う71歳のおじいちゃん。
彼は孫娘から話を聞いただけで事件を解決してしまいます。
今作ではどんな事件が起こるのか?
それでは、簡単にあらすじを紹介します。

小学校教師・楓の祖父は元小学校の校長で、生徒たちからは「まどふき先生」と呼ばれ愛されてきた。
レビー小体型認知症を患う彼は、時々幻視や記憶障害などが起こるが、話を聞くだけでたちまち事件を解決してしまう安楽椅子探偵だ。

クリスマス直前のある夜、居酒屋で飲んでいた楓、同僚の岩田、岩田の後輩・四季との間にサンタクロースの話題が上る。
岩田は子どもの頃、クリスマスイブの夜にサンタクロースを見てベランダまで追いかけたが、彼は跡形もなく消えてしまったと話した。
3人でサンタクロースが消えた謎について議論する中、楓は紳士的な男性・我妻に声をかけられる。
彼は楓の祖父の教え子だと話すのだが・・

他にも、連続自殺未遂事件や奇妙な殺人事件など、レビー小体型認知症の祖父が見事な推理で事件を解決に導く。

今作は5編からなる連作短編です。
前作から時間が経っているので忘れている部分もありましたが、最初に登場人物の詳しい説明があったため、スムーズに読み進められました。
1作目「名探偵のままでいて」の内容を知らない人でも楽しめる作品だと思います。

前作の主要な登場人物は、小学校教師の楓、楓の祖父、楓の同僚・岩田、岩田の後輩・四季の4人。
今作では4人に加えて祖父の教え子である我妻という男性が登場し、物語をより面白くしています。

個人的に好きな話は終章「時間旅行をした男」です。
第一章から様々な事件を話を聞くだけで解決してきた祖父。
終章で楓は友人の美咲から、すずという名の少女に起きた「学校の七不思議」を解決してほしいと相談を受けます。

早速、すずと会うことになった楓と祖父。
すずは怯えた様子で「教室の前の階段が増えた」「誰もいないトイレから小さな女の子が出てきた」など、自身に起こった恐ろしい出来事を話します。

話を聞いた祖父は優しく「不思議な出来事に遭遇するのは幸せなことだよ」と言って解決編を語り始めました。
その後、祖父の言葉で安心したすずは笑顔をみせるのですが、実は物語の最後で彼女の秘密が明らかになります。
同時に祖父の病状が進行していることも分かるのですが、この様子が終章のタイトルへ繋がっていきます。
すずの秘密や祖父の病状が進行していると知った時、楓と美咲の気持ちを思うと少し切なくなりました。

また、物語が進むと岩田や我妻など、登場人物の悲しい過去も少しずつ明らかになっていきます。
彼らの過去を知った直後は暗い気持ちになりますが、祖父の「人生はいつもままならない。それでも前を向いてハッピーエンドを目指すべき、いや、目指さなければいけないんだ。」という言葉が背中を押してくれているように感じました。

ミステリーだけでなく、人間ドラマも面白い「名探偵じゃなくても」
気になる人は手に取ってみてください。

そして、こちらでは第1作「名探偵のままでいて」のあらすじや感想を紹介しています。
興味のある人はぜひ覗いてみてくださいね☆





いいなと思ったら応援しよう!