全人類に有効な特別支援教育の知恵ー『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(平熱さん)
特別支援学校教員の平熱さんの著者『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(東洋館出版社、2024年3月14日初版発行)が^学びになりました。サクッと読めてタメになる。「特別支援教育は全人類に有効です」と平熱さんが断言する理由がよく分かる。
いったい何が役に立つというのか。それは「分けると分かる」ということ。タイトルが「むずかしい」と「むつかしい」(これは著者の造語)を分けているように、さまざまな物事を分けていくと、理解がクリアになるという話です。
たとえば、「できた」と「できた」は違う。
ある先生の指導で出来ることが、翌年、別の先生が担任になったら出来ない。学校で調整された環境下で出来ることが、家では出来ない。
ある状況で出来ることを「できた」にカウントしてしまうと、他の場面でやれない時に「できない」として扱われてしまう。つまり減点されてしまう。
でも、できたとできるは違うと知っていれば、出来た時には「できたね!」と褒めてあげられる。でもどんな状況でも出来るわけではないと知っているから、サポートの仕方を工夫できる。少しずつハシゴを外すことができる。一気にではなく。
親はまさに、混同してしまうわけです。療育園で出来たことが家では出来ない。やっぱりこの子には障害があるんだな。特性はどうしようもないんだな、と。
本書で語られるのは、壁にぶつかっても思考停止しないための補助線の引き方です。補助線が一つ引かれると、問題はぐっと解きやすくなる。
分けると、どちらか選ばなくてはいけない気がしてくる。でも、違うよと本書は教えてくれる。この「同時にもつ」という発想も大切です。
先ほどの例で言えば、「できるけど、できない」状況は「できない」とイコールではない。その子はできるとできないを、同時にもった状態である。
だから、褒めつつ課題を指摘する、ネガティブとポジティブを併用することは可能である。
どうですか、頭が柔らかくなってきませんか。
こんな学びを生んだのは、著者が働く特別支援学校なんです。つまり、障害のある人が、この世の中においてどこか「生産性の乏しい人」と言われがちな人が、与えてれた学びなんです。
私は親として、著者が障害の「生み出すもの」に目を向けてくれたことを嬉しく思います。ありがとう、平熱さん。
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