イノベーション・オブ・ライフを再読する⑩人生はスナップショットではなく長編映画である
クレイトン・クリステンセンさん「イノベーション・オブ・ライフ」を再読する。いよいよラストの「終講」「謝辞」まで。
ここでは謝辞の、「ビジネス本は成功者のスナップショットを描き出すものが多いが、本書は映画のように描き出すことを心がけた」という部分を胸に刻みたい。
そう、人生とはスナップショットではなく長編映画なのだ。
人を妬む時、憧れるあまり過度な言動に走る時、私たちは人生をスナップショットだと思い込む。一瞬の煌びやかさが、自分にはとてもないものだと思える。だから一瞬の輝きを求めてあくせくする。
しかしほんのワンカットが素晴らしくても、映画全体が完成度の高いものになるわけではない。同じように、人生の瞬間の輝きを求めたところで、人生そのものが豊かになるわけではない。
本書のテーマである、なぜ成功者でも道を踏み外したり、私生活を蔑ろにするのかのヒントもここにある。その時、ひとは最高のスナップショットを求めているのだ。それが映画をぶち壊すものだと知らずに。
映画は見終わるまでは、良い映画なのか悪い映画なのか評価が難しい。そしてその完成度は、カメラ回し、演技、音響、脚本、あらゆる要素の総合値で決まる。
過ちを犯しそうになったとき、自分の人生の映画でこのシーンはいったいなんなのかを考えてみるのもいい。豊かな物語をぶち壊しはしないだろうか?
本書で語られた理論は、映画におけるシークエンスともいえる。ある程度は予測可能なのだ。もちろん人生の大部分は予測不能だが、理論の力を生かすことで物語の強度は増していく。
良い映画とまでは言わなくても、納得のいく映画を撮り切れるように努力したい。
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