子どもとチームになるーミニ読書感想『マンガでわかる 精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください』(中島美鈴さん・あらいぴろよさん)
『マンガでわかる 精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください』(主婦の友社、2022年2月28日初版発行)が、学びになりました。臨床心理士・中島美鈴さんが認知行動療法の知見を分かりやすく伝えてくれ、それをあらいぴろよさんが漫画に仕立てた本。子育ての「心構え」じゃなくて、「しくみ」に目を向ける。発想の転換を促してくれます。
ターゲットは小学校入学後。ある程度、親子間の意思疎通が取れるようになったタイミングを想定しています。発達障害や知的障害がある場合、導入時期はもう少し後ろになるかもしれない。私は子どもがまだ就学前ですが、それでも参考になりました。
本書が目を向ける「しくみ」とは、言い換えると環境要因のこと。たとえば、朝、服選びで手間取ってしまうのは、上着・下着・ズボンを選ぶ環境が、発達的に未熟な子どもには負担だから。なので、たとえばこれらのコーディネートをワンセットにしてまとめた「ロール」を用意しておけば、手間取りが解消できる、という話。
この発想の何が良いかと言えば、「しくみ」の問題にすると、困り事がその子の人格的問題から切り離せるということ。「準備が遅い」「だらしない」と思いがちな問題が、実は「服を決めにくいしくみ」だったと捉え直しができる。
本書では、このことが「親子がチームになる」と表現されます。私はそれがすごくナイスに思えた。
子どもに対して親が何かを強制・矯正するのではなく、「子どもと一緒」に向かっていける。「しくみ」という発想を取り入れることで、親と子どもが同じ方向を向けるようになる。
これは裏返すと、親が子どもを叱ることは「敵対関係」を招くということ。これも納得です。
問題行動を「しくみ」ではなく、その子の性格や特性に起因するものとみなすと、親と子どもは「問題を起こす側」「それを正す側」に分断されてしまう。当然子どもは防衛的になるし、なかなか問題行動を改めることは難しくなる。親は常に正す側にいて、なかなかこの構図を変えられない。
だから「しくみ」による対応に問題の形を捉え直す効果がある。敵対関係・いがみ合いから抜け出すために、本書の発想法が活かせると感じました。