「10代のための読書地図」が教えてくれた名作の魅力
「10代のための読書地図」(本の雑誌社)に紹介された本を読むという活動を続けている。読書地図を片手に本の森を歩く。今回で記事にまとめるのは3回目。10冊近くを読んだことになるけれど、どれも例外なく面白い。本当にハズレなしの読書地図だ。
今回、地図が導いてくれたのは「名作の街」とでも言おうか。どこかで聞いたことのある作品名、作家名。「今更読むきっかけもない」と思っていた名作は、やはり名作だったんだと実感する。古くて新しい喜びだ。
「サキ短編集」
又吉直樹さんがおすすめしてるのを聞いたことがある。ブラックユーモアの名手の作品はたしかにほろ苦いけれど、嫌味がない。「いやミス」とはまた違った味わいで、良薬というたとえがぴったりだ。たしかに10代におすすめできる。人生に深みがでそうな作品集。
「獣の奏者」
凶暴ながら人間に操られ兵器とされている「闘蛇」や、大戦を統べた国王の権威づけに用いられる「王獣」。幻想的でありながら、現実の国際関係や環境問題とのリンクが感じられる。骨太であり荘厳。日本版「指輪物語」といってもよさそうな、壮大なストーリーだった。
「進撃の巨人」や「不滅のあなたへ」といった漫画・アニメ作品が好きな少年少女は、本シリーズにのめり込むこと請け合いではないか。10代、それも10代前半に向けて渡したい作品。
「ドリトル先生航海記」
教室や図書館で見かけたことがある子も多いであろうドリトル先生もの。福岡伸一さん訳の新潮版を手に取った。動物との信頼関係や、誠実な人柄、ベタだけど胸躍る展開が待っている。
イラストもよい。物語を狭めることなく、むしろ独特の世界観を広げてくれる窓の役割を果たす。このおかげで、本が苦手という子も漫画的な楽しみ方ができるのではないか。補助線の役割を果たしている。
「Xの悲劇」
エラリー・クイーンの推理小説。作家の名前を聞いたことがあったけれど読みあぐねていたのだが、「なぜもっと早く読まなかったのか」と悔やむほど面白い。最近話題のミステリー「メインテーマは殺人」(アンソニー・ホロヴィッツ)や「ストーンサークルの殺人」(M・W・クレイヴン)に通じる面白さ。
犯人につながるヒントがそこかしこに描かれていて、とてもフェア。「伏線」の何たるかが学べる教科書的な一冊で、もはや国語教材にもなるレベルではないか。
これからもまだまだ、「10代のための読書地図」をもとに読み進めていくつもりだ。あといくつ、素晴らしい作品に出会えるだろうか。
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