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インドに行けない私たちに溢れ出るインド愛を届けてくれる本ーミニ読書感想「食べ歩くインド南・西編」(小林真樹さん)
小林真樹さん「食べ歩くインド 南・西編」(旅行人)がインドへの偏愛MAXで最高だった。小林さんはインド国内の食べ歩きを1990年代から20年以上継続。本書では、おすすめの食堂をひたすら紹介してくれる。インドになかなか行けない私たち読者に、笑っちゃうくらいのインド愛を届けてくれる一冊だ。
本書の特徴は、ひたすら具体的な情報が書かれている点。情緒的な文章が削ぎ落とされ、ある地域の食堂が次々と紹介される。「神田のこの路地の焼き鳥屋がうまい」というノリで、インドのむちゃくちゃローカルな店をどんどんプッシュしてくる。
正直、その偏愛ぶりは時に読者を置き去りにするレベル。1ページ目から特段の説明なしに「ノンベジ料理」という聞きなれない言葉が出てきて驚いた。しかし読み進めると、「宗教的背景で菜食主義も多いインドで、肉を使った料理をノンベジと言うのだな」と分かる。だからまったく問題ない。
料理の説明も同様で、冗長なところはゼロ。たとえば麻婆豆腐を麻婆豆腐とだけ書くような形で、聞きなれないインド料理名がバンバン出てくる。かっこ書きで端的な解説はなされるが、わざわざ料理が出てくるシーンや、口に含んだ時の描写に時間をかけない。その代わりに、各食堂と食べられる料理の列記に紙幅を費やす。
では本書はガイドブックかといえば、やっぱり「本」なのだ。紀行文として胸に残る。それは、著者がインド社会に分け入り、現地の人に混じりながら、普通だったら見つけようのない店を読者に示してくれるからだ。
食堂紹介の合間に出てくる、裏話的なコラムも面白い。たとえばインド料理は片手で食べることが多いので、ノートに記録することは困難。なのでスマホを使い、残った手でメモしたり、時には近くのインド人に料理名をタイプしてもらったりしたそうだ。
写真も豊富。前述のように、食べながらアワアワと撮影した写真には生活感とリアリティがにじむ。ワンプレートに少しずつ、色とりどりの具材がのせられているものが多く、これを手で混ぜながら食べるとカラフルな味覚になるんだなと具体的にイメージできる。
偏愛をぶつけられると、こんなに気持ちが良いんだな。読後、なんだか清々しい気持ちになる本だった。
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