ネガティブが人を救うーミニ読書感想『つげ義春日記』(つげ義春さん)
◎つげ義春さん『つげ義春日記』(講談社文芸文庫、2020年3月10日初版発行)
著者のつげ義春さんはネガティブです。ネガティブな日記。でも、そのネガティブさに救われる思いになる。人生の暗さを照らしてくれるのは、ポジティブではなくネガティブではないか。
妻のマキさんががんを患ってからは、輪をかけて悲観的になる。でもその気持ちが、分かる。家族が病にかかると、世界全体が病的に感じられる。
新しく買って、心躍るはずの自転車に、死の影を見る。そんなつげさんが、見いだす光もある。その明るさがちょうどいい。
「死がかけがえのないものになる」。悲しみや苦しみは、とはいえ完全に避けられず、避けるべきものでもない。いつか、あるいは誰かが、それを希望として受け取ってくれる日も来る。この日記のように。
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