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たった1日の稲妻
いちいち傷ついていたら生きていけないほど世の中は世知辛かったし、
たまに絶望するほど意地が悪かったし、けれどそのときどきで
心を救ってくれる出来事や出会いがあった。
この前、インスタでフォローしている人がメンタルブレイクしてしまった経験を話していて、聞いてみるとそれがたった1日の出来事で拍子抜けしてしまった。
落ち込んで、塞ぎ込んで、そこから回復するまでがたった1日。
その話を聞いて、なぜだか少し傷ついた気持ちになった。
そしてそんな自分に、びっくりした。
私にとって、メンタルブレイクはたった1日の出来事じゃなく、数ヶ月から年単位で回復までにたくさんの労力がいるものだからか、同じメンタルブレイクという言葉の定義のおっきな違いが、なぜか私を悲しくさせた。
”でも、そのときどきで心を救ってくれる出来事や出会いがあった”
うん、本当にそう。
一番惹かれた登場人物は、桃子さん。
39歳、独身、彼氏なし。
同居している母親からは、お見合いを勧められて、職場では若い子たちからグチグチ言われる立場にうんざりしている彼女。
彼女が恋愛の消極的なのは、ずっと昔、彼女が高校生の時の出来事と結びついている。
いや、そんな何十年前のこと、引きづりすぎでしょ。
前をみなよ。
きっと多くの人は彼女にこういう声をかけるんだと思う。
だけど、時間って本当に関係あるんだろうか。
作中で、私の大好きな茨城のり子さんの歳月という詩が紹介されているけれど、本当にそういうことなんだと思う。
けれど歳月ではないでしょう
たった1日っきりの
稲妻のような真実を
抱きしめて生き抜いている人もいますもの
私の二十数年の人生を振り返って、私にはソウルメイトと呼べる人がたった一人いた。
とても特別だったし、あの人と同じように自分が他人に心を開けることはもうないのかもしれないなと、感覚的に思っている。
これは聞こえは悲観的とか、閉鎖的になってしまうんだろうけど、私の意図はそうじゃない。
たった一人でも、そういう人に出会えて私は本当にラッキーだった。
そう思う。
たった一回の稲妻だった。
幸せかどうかはわからないけど、本当に本当に悲しくて不幸な状態に居続けられるほどわたしは強くないから、今、少なくとも不幸ではないんだと思ってる。
前を向くって、明るい未来を描くとか、そういうことだけではなくて、きっとこういう“たった一回の稲妻”抱えて生きるっていう方法もあるんだと思う。
私なりに、前を向いて生きていきたいなと思える一冊でした。
Written By あかり
アラサー女