人としておかしいと言われても、ありえないと言われても
何も決めず、全てから目を逸らせばいい。そういう人生が一番安全だ。会社が倒産しない限り、生きていける。平均寿命の八十七歳年越しまで生きるとしたら、定年退職してからの二十七年と少しの間、ひとりで何をしたらいいのだろう。
三十五歳、独身、彼氏なし。
主人公メイが心の中で呟くものは、そっくりそのまま私が日々心の中で呟いているもので笑った。
高校生から十年付き合っていた彼氏と別れてから、誰にも心を揺さぶられず、独身街道まっしぐらなメイの心を掻き乱すのは、ひと回りも下の若い男の子、杉本くんだ。
八年間もセックスしてないなんてことは、ありえないでしょ。人として、気持ち悪いですよ。
真正面から八年間恋愛をしてこなかったことを否定されるうちに、メイは三十五歳という年齢のこと、老後のこと、結婚、そして子供について深い思考に身を沈める。
いい大人が十年間も性欲を忘れて生きているのは、杉本君の言うように、気持ち悪いことなのだろう。性格に問題のある証拠にも思える。
友達が大学に行くから自分も大学に行き、友達が就職するから自分も就職する。多数派と同じ方へ行くという基本問題を解くだけで、先に進めない。結婚や出産や転職という応用問題を目にすると、解き方を想像することもできず、目を逸らす。
アラサーに片足を突っ込んだ身としては、共感しかないメイの悩み。
この歳で恋愛していなければ突っ込まれ、どうしてと言われ、恋愛していればじゃあ結婚は、子供は、という正解のない問題にはっきりとした答えを求められる。
うんざりだよ。
という妙齢の女性たちの声が聞こえます、聞こえます。笑
分かりますよ、だって私がそうだから。他人からのジャッジで一時期かなりやられた過去を思い出します。
その昔、大学生だった頃。私は中高女子校で恋愛なんて全くしないまま大学に入りました。するとびっくり、大学の女の子の会話は恋愛ばかり。教授の髪型が変、とか新発売のあのお菓子が美味しい、とかしか頭になかった私は、完全に置いてけぼりでした。同世代の関心は9割恋愛で、恋愛にも男の子にも興味を全く持てなかった私は、そこで初めて“周り”との溝を感じていきます。
そのまま彼氏を作らず(作れず?)にいたある日、どうでもいい男に誘われてデートをしました。(男の人に興味がなさすぎたため、選ぶということができなくて、誘われたらとりあえずOKと言っていた過去の私、、、お馬鹿さん)
え?! 今まで彼氏いたことないの? どっかおかしいのかもね。
初めて他人に真正面からおかしい、と言われた瞬間でした。ショックを受けた自分にもびっくりで、そこからかなり迷走した人生を送りました。(経験しなくて良い経験をしたなあと今でも思います。)
ただもし私がおかしい、として、どうすればいいのでしょう?
自分って取り替え不可。この自分と死ぬまで生きていかなきゃいけないし、理性で“結婚”や“恋愛”、はたまた“人生”の正解を出したって、心が求めていないのなら、その“正解”が私の人生に何の足しになるんだろう?
いい人生とは、なんなのだろう。
メイもこの問いに向き合うことになります。
未来のことなんて分からなくても、自分の性格や今までの生活から、何となくの予想はできる。だからこそ、未来には予想じゃなくて、思い・こころざし、みたいな逆説的に確かなものが必要だよなあと共感します。
この本は、ぜひ恋愛や結婚、出産、そんな人生の大きな節目について考える女性に是非手に取ってみてほしいです。
メイが最終的に出した答え、私もとってもわかるから、恋人がいてもいなくても、結婚しようが独身だろうが、親に孫を見せられようが出来なかろうが、前を向いて生きていたいなあ。
Written by あかり
アラサー女