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まくどく本02「岩波新書」読みやすくなった?

まくどく本は、文芸書?

みなさま、こんばんは。どく社代表の末澤寧史です。
今回は、ほっと一息🍵「まくどく本」コーナーです。まくどく本とは、枕元に置いておきたい本のことです。まくどく本マガジンのトップ画像、ご覧になりました? 
豪華すぎる? 

ですよね〜。これについては、原田さんから後日解説があると思いますが、さっそく力作コーナーになってまいりましたね。

ところで、まくどく本といわれて、さて、自分はどんな本を枕元に置いているんだろうと思って改めてみてみたら……。

寝る前のほっとひととき、詩の本とか、文学を読みたいと思って置いているんですが、実際は、忙しさにかまけてお守りのよう……。く、くやしい。『なぜ働いていると本を読めなくなるのか?』の犠牲になるのは、自分の場合はだいたい文学という現実…。『はてしない物語』(岩波書店)をハードカバーで読もうとして、途中で終わってるなあ。く、くやしい。半身社会はやってくるのか? 三宅さ〜〜ん。

てなわけで、まくどく本には、文学を据えたいという心理が働くようです。

一方、寝る前に実際に読んで、これはよかったなあという本を振り返ると、最近は、岩波新書率がやたらと高い。高校生のとき、先生にすすめられて読むようになったものの、社会に出てからはずいぶん疎遠になっていました。

が、ここに来て、岩波新書回帰。書物復権。最近読んでいてがぜん面白かった本をいくつか。

『学力喪失 認知科学による回復への道筋』(今井むつみ、2024年)

学力とはなんなのか。いまの学校教育の方法が、実は子どもたちが本来みなもつ学ぶ力、学ぶ意欲を削いでしまっているという認知科学者による衝撃の書。母語を習得するように、自然と学びに向き合うことができることが理想的なあり方だと著者は解説します。でも、課題、宿題、受験に追われるうちに、勉強嫌いに陥る子どもも少なくない。教室の椅子に座っているだけで、実はほとんど内容を理解しないままという子も少なくないという。わたしたちが本来もつ学ぶ力を取り戻すために重要なのが、ものごとの意味を体験と関連づける「スキーマ」の構築であり、「記号接地(体験と言語をつなげるというような意味)」だと提言する本書。全親、先生、政治家が読むと日本の教育ががらりと変わりそう。子どもの興味を焚きつけ、関心が起こるまで待つ教育ができたら素晴らしいのだけど。

『重い障害を生きるということ』(高谷清、2011年)

重度の障害のある人たちの福祉・医療施設びわ湖学園の医師による書籍。妻が借りてきていて読んだのですが、『人と人のあいだを生きる』をちょうど編集していたこともあって、内容がスルスル入ってきた。衝撃だったのが、脳性まひの子どもが親元から離れて施設に入る不安で、体が硬直して発熱などをおこして亡くなってしまうという事故が何度かあったことが紹介されていること。不安や、恐怖が人の心をむしばみ、体も破壊していくという恐ろしい事実。一方、びわ湖学園の成り立ちに加え、重度障害のある子どもたちの福祉施設が、戦後、どう立ち上がっていったか、医師たちの人生をかけたストーリーが記されているパートもとても胸に迫るドキュメンタリーになっていて、胸に熱いものが込み上げてくる1冊です。

『教員不足 誰が子どもを支えるのか』(佐久間亜紀)

教育史の研究者による実証研究。教員不足といえば、わが子の学校でも、先生が急に長期欠席することになり、管理職の先生がフォローに入り、かと思ったら、今度は管理職の先生が病に伏し……なんていうことがあったりして、身近にもある光景ですが、まさにその背景に、教員の非正規化であったり、35人学級になるのはいいけど、先生がさほど増えていないという構造的な問題があるという。小中学校の教員不足の問題が顕在化するのが2010年ごろから。子どもたちの不登校が急増するのも、だいたい同じころで、相関している気が…。近年話題の教室マルトリートメント(子どもへの不適切なかかわり)が生まれる背景の一つとも言えそうですが、現場でがんばる先生たちをなんとか社会で応援したいものです。

寝る前30分の読み応え

第一線の学者や専門家が、噛み砕いて書いているので、わかりやすいうえ、データも豊富で説得的。日々流れていくニュースを追っていても、なかなか思考や考えは深めにくいものですが、やはり新書を1冊読むと、だれかとそのテーマについて語りたくなるくらいには知識が得られ、視点が増えます。

どく社でも広い意味で教育にまつわる本の企画を練っている(!新刊の気配)こともあってか、教育関係の本をあれこれ読みあさりつつ、眠りについているようです。

なんで岩波新書なんだろうと考えると、寝る前に30分ほど読んで、それなりに読み応えを得たいというときに、その気持ちに応えてくれているのかも? 
1章の字数の目安などが、編集方針で設計されていたりすると、すごいなあ。むかしは骨太な本が多くて、それはそれで背伸びして読んでいましたが、最近は、よりパッと読みやすいシリーズになっている印象もあります。

岩波新書公式さん、いかがでしょう?

余談で思い出しましたが、いまの岩波新書赤版のデザインって、名装丁家の故桂川潤さんのデザインなんですよね。どく社の本は、カバーをはがすと面白い本(個人的に、「本のヌード」がすごい本と名づけています)がたくさんありますが、桂川さんにはそんな本づくりも応援していただいていました。

左が現在の装丁


なんだか役に立つ本ばかり読んでいる気もするので、ここちよく眠れる本なども探ってみたいと思う所存です。本って、本当に魅力的ですね。

では、本日はこんなところで。今晩もゆっくり、おやすみなさい。