【映画の感想】メタな視点の難しさ デッドプール&ウルヴァリン マトリックスレザレクションズ
【デッドプール&ウルヴァリンの感想】
今さらデッドプール&ウルヴァリンを見ましたが、楽屋ネタをずっと表舞台で見せつけられたように感じました
メタ性がデッドプール作品の売りとはいえ、物語全体をメタ構造にしてしまったことは物語そのものや各キャラクターの魅力を殺してしまったのではないでしょうか
デッドプールの過去作は、デッドプールが時にメタな視点に立ち物語から脱線したかと思えば物語の中で生きる登場人物として役割を果たしたりするというトリッキーさが面白かったのに、当作品は話の構造上ほぼ全ての登場人物がある程度メタの視点にいるので別にデッドプールがいなくてもよかった感が拭えない
どこか斜に構えた視点で繰り広げられる戦いの中で、キャラクターの悲しい過去とか世界の危機とか言われても正直全部どうでもよく感じました
私は"チェスのコマ"に感情移入できるほど感受性が高くないので、満を持して登場させたであろうウルヴァリンが非常にもったいないと思いました
【マトリックスレザレクションズの感想】
ちょうど同じタイミングでマトリックスレザレクションズを観たのですが、こちらも作中にメタな視点をもちこむ作品でした
元々のマトリックス自体が虚構と現実の世界を行き来する話なので仕方ないっちゃ仕方ないのですが
当作品では、「過去のマトリックス三部作がゲーム作品として扱われており、その続編を作ることになる」というところから物語がスタートします
その中で「有名な物語の続編を作ること」について作中で議論が繰り広げられるのですが、それ自体がこのレザレクションズという続編について言及しているような、過去作品よりもよりメタな立場に立っているような作りになっていました
ただ、このメタ視点があまりうまく機能しているとは思えませんでした
というのも、結局のところ当作品はマトリックスの過去作品と似たような展開になってしまうので
、「よりメタな視点に立ったと思ったのに結局外には出ていけなかった」という感想を持ってしまいました
良くも悪くも"続編"になってしまった感がありました
【メタな視点の難しさについて】
人の能力には、物語に共感して物語と相互作用することがあるように思います
おそらく他者とコミュニケーションするための能力が拡張されたものではないでしょうか
メタ的な視点の物語が難しいのはおそらく、コミュニケーションの文脈において、冷笑的な、斜に構えた雰囲気を感じてしまうからかもしれません
鑑賞後の気持ちは、真面目な話をしにきたのにはぐらかされたような、真剣に話を聞いてくれないような虚脱感と似たようなところがある気がします
物語の全てがギャグならば許容できる気がしますが、真剣な物語との食い合わせはあまりよくないのではないでしょうか
あるいはいっそ、メタな視点をさらなる物語で包み込むような巨大な構造にしてほしいように感じました
そんなものを思いつけるのは稀なような気もしますが、物語をもっと信じてほしいところです