それ、もしかして「嫌われる努力」しちゃってませんか?
「あなたの為だから」と前置きをしながら、あなたの欠点を指摘する人がいるとします。
その人のことを怖いと感じたり、少し遠ざけたりすることはありませんか?
それは、実はそのまま自分にも返ってくることです。
もしあなたが、日常的に同僚や組織の苦手や粗を見つけ、些細なことでも改善点を指摘するようなことをしているとしたら。
それ、今すぐやめた方がいいです。
良かれと思っていうことが「嫌われる努力」になっていることがあるからです。
この記事では、そんな「嫌われる努力」になってしまうことと、どう改めていくかをいくつか紹介します。
1. 「嫌われる努力」の正体
なぜ私たちは「嫌われる努力」をしてしまうのか
驚くべきことに、多くの場合、「嫌われる努力」は善意から始まります。この前提が非常に重要です。
組織をより良くしたい、同僚に成長してほしい、そんな思いが根底にあるはずです。しかし、その善意が空回りすると、周囲との関係性を損なう結果になってしまいます。
特に以下のような行動が「嫌われる努力」になりやすいのです。
心理学的な視点から見た「嫌われる努力」
心理学者のエドワード・デシの自己決定理論によれば、人間には「自律性」「有能性」「関係性」という3つの基本的欲求があります。
「嫌われる努力」は、実はこれらすべてを阻害する可能性があるのです。
2. 「嫌われる努力」の具体例
Case 1:完璧主義的なプロジェクトマネージャー
あるIT企業のプロジェクトマネージャーAさんは、品質へのこだわりが強く、チームメンバーの成果物に対して細かい指摘を繰り返していました。
しかし、次第にチームメンバーからの報告が減り、最終的には重要な問題すら報告されなくなってしまいました。
Case 2:熱心すぎる先輩社員
商社で働くBさんは、後輩の成長を真剣に考え、些細なミスも見過ごさず指摘していました。
しかし、その結果、後輩たちは萎縮し、自主的な行動が減少。部署全体の生産性が低下してしまいました。
3. 「嫌われる努力」を「歓迎される支援」に変える方法
原則1:タイミングを制する者が心を制する
指摘や助言は「その場」ではなく、1on1など適切な場で行う
緊急性のない改善点は、相手から尋ねられてから、仕方なく…といったテイで伝える
とにかく、相手が助言を求めているときを見極める
原則2:「問題の指摘」より「可能性の提示」
「ここが間違っている」ではなく「これ、実際にはどうなるだろう?」
具体的な将来イメージを話させる(こちらからは示さない)
選択肢は複数提示する
原則3:「私の経験」を武器にする
「こうすべき」ではなく「私はこうしたら失敗した」
示唆よりも共感
意思決定を徹底的に避ける
4. 明日から実践できる具体的なアクション
その1:会話の90%を「質問」にする
・指摘や助言の代わりに「それは具体的にどういう状況ですか?」
・相手の発言の後に、会議の進行で求められたら、「もし実行したら、どんな結果が予想されますか?」
・解決策を求められても「他にも可能性はありそうですか?」と問い返す
その2:「言いたいこと」は必ずメモだけにする
・相手に伝えたくなった指摘や助言は、すべてメモに記録
・1週間後に見返して、本当に伝える必要があるか判断
・伝える必要があると判断したものは、相手から質問があるまで待つ
その3:自分の失敗談を毎日1つは話す
・会議での発言は自分の失敗体験から始める
・「私も同じような経験があって、こんな失敗をしました」と共感を示す
・解決策は示してもいいが、「こうしよう」と決定は促してはいけない
まずは1週間、この3つのアクションを徹底してみてください。特に最初の3日間は、「言いたいことをすべてメモに書く」ことだけでも、大きな変化を感じられるはずです。
なお、ハーバード・ビジネス・スクールでは、マネージャーが部下への直接的なアドバイスを75%削減し、代わりに質問を増やす実験が行われました。
結果、チームでは、6ヶ月後のパフォーマンスが平均23%向上したという研究成果が出ています。
これは、部下が自ら考え、決断する機会が増えたためと分析されています。
さいごに
「嫌われる努力」は、多くの場合、相手への思いやりや組織への貢献意欲から生まれます。しかし、その善意が逆効果になることも少なくありません。
重要なのは、指摘や助言を「与える」のではなく、相手と「共に考える」姿勢です。そうすることで、「嫌われる努力」は「歓迎される支援」へと変わっていくはずです。
参考文献
本記事の内容をより深く理解したい方は、以下の書籍をお勧めします。
『なぜ人と組織は変われないのか』中竹竜二著
『人を伸ばす力―内発と自律のすすめ』エドワード・デシ, リチャード・フラスト著
『超情報化社会におけるサバイバル術 「いいひと」戦略』岡田斗司夫 著
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