ミルクセーキとレスカと
父が亡くなったものの喪失感がなく
離れて暮らしていたせいだろうか。
とは言え、入院してからは度々、面会し、
最後を迎える数週間は、毎日面会に言っていた。
会話は出来なくても。
受け答えをしようとする様子は伺えた。
母のこともあり、感情のバグが起きているようで。
そんな私の様子を知ってか知らずか
パートナーがある映画を一緒に観ようと誘って来た。
『まぁ、なんか泣いた方がいいかな。泣くかななんて思って』と笑っていた。
パートナーは私が感動して涙する姿が良いらしく。
変なフェチだ。笑
観た映画は『喪う』
離れて暮らす訳あり三人姉妹が父の死と向き合うと言う物語。
映画の見出しに、あらすじがあって、それを読んだ瞬間私は、涙腺が崩壊したのだが、
実際に見てみると、三人姉妹のキャラの濃さに
こりゃ泣く映画じゃないな。と思いながら観ていたが、まぁ、良い映画だったと思う。
映画の中の父親の最後の姿は、私の父と重なりそうで重ならないものがあったが
でも、子を思う父親の気持ちや、父親を思う娘の気持ちはとても良かった。
映画の後に、涙することない私だったので、
パートナーも私も
『三姉妹のキャラクター良かった。良すぎて濃すぎて、話入ってこないところあったねー』なんて会話をした。
その後に、食事をしながら孤独のグルメを見ていたんだけれども、
ミルクセーキとレスカが、私の心を射抜いてきやがった。
まさかの、これか。
涙が止まらず、父との思い出が駆け巡った。
父は若かりし頃、バーテンダーをしていて、シェイカーを振っていた。
後に、祖父母が経営する喫茶店兼スナックを母と継ぎ、私が子供の頃は、よくカクテルを作っていた記憶がある。
私は父がシェイカーを振る姿が好きだった。
家業は嫌いだったけれども、その姿はとても好きだった。
度々、シェイカーを振り、ミルクセーキを作ってくれた。
レモンスカッシュも美味しかった。
当時はレスカって言ってた。今じゃ死語なのかな。
父は人当たりがよく、世話好きだった。
母のことを度々
『お前はええかっこしいだ!』と口論をしていたが、
子供から見ると、
バカみたいに人当たりよく世話好きな父親の方が
ええかっこしいじゃないかと、いつも思っていた。
そんな発言も、父の母に対する嫉妬だったことは、子供ながらになんとなく感じていた。
まぁ、優しくて、まぁ、そう、優しい父だった。
子供に対しては。
母に対しては感情の捌け口だったように見えた。
弱い心の持ち主だったんだと思う。優しすぎる故に。
そんなことを思いながら、
就寝したのだが、深夜に息苦しく
目が覚めた。
誰かに頭を押さえつけられていて、
胸まで圧迫されていて呼吸が出来ない。
過呼吸になりそうで、苦しい。
ふと、産道から出る時に出たいのに出られない
苦しさが脳裏に浮かんだ。
暗さと狭さと息苦しさ
生まれる直前はこんなにも恐怖と不安に
苛まされるのかと。
苦しすぎてパートナーに窓を開けてもらって
少し落ち着いた。
父が亡くなってから冷静さを留めてきた分の
反動なんだろうか。
カウンセリングや鑑定をする時には、
『どんな形でも感情を抑えすぎないように』なんて
伝えている割に、
自分自身が感情と向き合わず、
シャットダウンしていたことに改めて
気づいた。
子供の頃から、感情の表現が上手くは無い。
今回は、ミルクセーキとレスカのおかげで
溜まっていた感情を上手く出せたような気がする。
孤独のグルメに感謝しよう。
寄り添ってくれているパートナーにも
勿論。