ブスの休日

　『ローマの休日』に因んで『老婆の休日』なんて誰かがうまいこと言っていたね。そのとおり、年齢を重ねても、お一人様でも、素晴らしい休日を過ごしたいものである。

　今日は日帰りでプチ旅行へ出掛けるつもりでいた。宮沢賢治記念館へ行きたかったのだ。年間を通して特別展をやっているので、コロナ以前は定期的に訪ねるのが楽しみだった。もう4年ぐらい行っていない。その間にたくさんのことを見逃してしまったんだろうなと、大好きな賢治のことを思って切なくなる。今は『イギリス海岸展』をやっているらしい。「今月こそは絶対に行くぞ！」そう意気込んでいたのだけれど・・・。

　ーー結局、断念してしまった。現地はどうやら警報級の土砂降りらしいのと、なにより寝起きの顔がひどくむくんでいたのとで、すっかり心が折れてしまったのだ。

　朝、鏡を見て自分がブスだった時、いちいち動揺してしまうのはなぜなんだろうね。今に始まったブスじゃないでしょうに。生まれた時からずっとブスだったでしょうに。
「美人は３日で飽きるがブスは３日で慣れる」って言うじゃないの。いいかげん慣れなさいっつの。

　しかし今朝の私はめずらしくジタバタして、化粧でもしてみたらどうにかなるかも知れないと、久々にやってみたのだ。
　普段はほとんどノーメイクだけれど、一応、化粧道具は持っている。ーーだが無駄だった。やはり土台が大事だな。ぬかるみに家は建たない。これは明らかな施工不良である。腫れぼったいアイシャドウとか、乾燥じわを強調させるパウダーとか、そのくせ鼻はぎとぎとにテカったりとか、私の顔は、寝起きよりもさらにブスをこじらせてしまった。こんな顔では賢治に会いには行けないーー。

　

　化粧を落とし、本日の予定を練りなおす。私はメモ間だ。思い付いたことを箇条書きしてみる。

□むくみ、原因
□ミルクティーがぶ飲み
□牛乳を買いに行く
□ヘアブラシ新調
□全粒粉パスタ大盛り
□図書館に行くかも
□SADEのDVD観る
□こまったさん全巻読む
□アイス食べたい

　そうだ、アイスがあるぞ。昨夜、作って置いたのだった。お手製の「ビニール袋の中でバナナを握りつぶしてレーズンとかおからパウダーとかオートミールとか好きなもの入れて牛乳と混ぜてもみもみ冷凍」したやつだ。とりあえずこれを食べて元気を出そう。ブスの休日は始まったばかりなのだ。パンパンにむくんだ顔で楽しく過ごすのだ。