◎手帖P23「未来に繋がるカカオ」
2021/1/06.13.20 OA
甘いものが美味しい季節です。チョコレートソムリエの札谷加奈子さんに今年のトレンドについて伺いました。
札谷さんはチョコレートのセレクトショップTOMOE SAVEUR(トモエサブール)の代表取締役でもあり、毎年阪急うめだ本店で開催され大人気の「バレンタイン チョコレート博覧会」の「カカオワールド」や「タブレットミュージアム」の仕掛け人。
「チョコレートソムリエ」とは、チョコレートを作る職人ではなく、チョコレートをお客様の要望に合わせたものを選んだり、日本に紹介したいと思うものを紹介したりするお仕事で、ワインソムリエのチョコレート版!札谷さんは特に海外のチョコレートのうち、いわゆる板チョコをメインに紹介してくれます。本当にカカオの産地を飛び回り、深く関係性を作っている札谷さんだからこそ!なチョコばかり。TOMOE SAVEURのインスタグラムを見ているとスクショが止まりません!札谷さんの説明を聞くと、その板チョコの向こうに見たことのない世界を感じることができる、バックボーンが素敵なものばかり。
まずは、近年話題になっている「Bean to Bar」についておさらい。日本でも増えてきていますよね。原料であるカカオ豆からチョコレートになるまでの全ての製造工程を、一つの工房で行うこと。最近は、より農家に近い形での製造を目指した「tree to bar」や「farm to Bar」という「農園まで自社で!」な工房も増えてきているそうですよ。
そもそもお茶が好きで、お茶の会社に就職したら、まさかのチョコ部門に配属され勉強をしていたらカカオについて詳しく知りたくなって、そのうちまだ日本では馴染みがない海外のBean to Barにたどりついて、カカオの魅力に取り憑かれてしまったという札谷さん。そう、札谷さんって、チョコレートというよりカカオの人っていうイメージです。
チョコレートのトレンドは、去年一昨年くらいから、カカオが料理の世界に広がり出したそうです。カカオニブがスーパーフードとして流行したのも記憶に新しいですが、カカオニブ以外にも、カカオはフルーツなので、果汁のピューレやシロップ、豆の半分くらいが油でそれがカカオバターやカカオパウダーに。チョコにする以外のものがどんどん製品になり、それを使う料理を開発するシェフが増えてきているそうですよ。
そしてチョコレートで今年注目なのが、去年から人気が出始めた「お茶チョコ(ティーチョコ)」。と言っても抹茶フレーバーのものではなく。お茶とチョコは渋みと酸味(カカオは果実なので酸味が強いのです)がぶつかってしまって、美味しく合わせるのが難しいそうです。チョコレートに合わせてお茶をブレンドしているチョコがいろいろと生まれてきているんですって。
例えば、シンガポールのBeen to barチョコレートブランド「FOSSA CHOCOLATE」。札谷さんが初めて工房を訪問した時に、お茶をワイングラスに入れて出してくれたほど、美味しいティーチョコを作るのが上手なんですって。そこで、水害に遭って困っていた熊本の「お茶のカジハラ」をサポートしたいと思った札谷さんは、フォッサチョコレートにコラボしない?と誘ったんだそうです。そうしたら、二つ返事でやってみたいと言ってくれて、しかもとっても美味しいものを3種類も開発してくれたのだとか!さらには、TOMOE SAVEURの特注だけではなく、シンガポールで自分たちで販売するものにも、カジハラさんのお茶を使いたいと言って、そこに新たな繋がりが生まれたんだそうです。コロナで国外に出ることが難しくなっていますが、こんな風に交流がうまれて、チョコが出来たなんて、素敵ですよね。行き来ができるようになったら、お茶のカジハラさんと一緒にシンガポールにも行きたいし、シンガポールから熊本のお茶畑にも来てもらいたいですよね。チョコの形を使ってですが、シンガポールで熊本のお茶が受入れられたということですもんね!
もうひとつ、札谷さんが生んだものが、最近リリースになりました。それが「カカオ醤(ジャン)」。先ほどのカカオが料理界にも・・・というトレンドのお話もありましたが、これ、調味料なんです。カカオと醤油で「カカオ醤」。開発には四年かかったそうです。カカオと醤油の風味どちらも感じられるんですよ。
始まりは「チョコレートと醤油、同じ発酵食品なら、融合させて醤油ができないか?」という思いつき。札谷さんが毎年主催しているベトナムのカカオ産地ツアーに参加していた和歌山県の湯浅醤油さんが「カカオに麹菌をつけて発酵させることは可能か?」と考えたことがきっかけでカカオ醤の開発が始まりました。両方の味や風味を感じられるようにするのがとても難しかったそうです・・・。そんなカカオ醤は、今までの家庭料理に乗せるだけで違う料理になったり、ソースに少し入れてコクを出すような「隠し味」に使用したりと、様々な可能性を持つ調味料!!醤油が合うものなら、大体合います。(土井個人見解)
また、カカオ醤が誕生したことによって、見えてきた可能も。
新たな可能性①
砂糖を使っていないので、砂糖の摂取ができない人にもカカオを楽しんでもらえる
新たな可能性②
カカオ醤は和洋を問わず様々に使えるので、カカオが料理の世界で活躍するきっかけに!!
新たな可能性③
舌で感じることのできる五味のうちの「うまみ」に馴染みのない国の方でも、カカオ醤で「うまみ」を理解できる教材のような存在に?
新たな可能性④
チョコレート以外でカカオを使うという「視点を変える」開発のきっかけに!!
札谷さんはもともと、作り手の思いやカカオ産地の思いを伝えたい、出会いやきっかけを作って、食べた人を驚かせたい!という思いから、カカオ産地のことを日本に伝えることをメインに活動されていました。
ですが、去年からなかなか海外に行けなくなったことをきっかけに、日本の文化や食材を勉強して、チョコレートメーカーに知ってもらいたい、そして創作欲に火をつけ、次のアイデアを生み出すきっかけを作りたい!と思うようになったそうです。
そんな札谷さんの活動は、実は「SDGs」という言葉が生まれるよりも前から「SDGs」に繋がる事ばかり。しかも17項目の全てに当てはまっていると言えます。それは、たくさんの問題を抱えるカカオの産地をサポートすることに繋がるようなチョコレートばかりを、札谷さんが日本に紹介してくれているから。しかも、味のことをきっかけに、ちゃんとそういった産地の背景も教えてくれるから。ひとくち食べるごとに、私たちも関わることが出来ます。
中でも
1 貧困をなくそう
5 ジェンダー平等を実現しよう
8 働き甲斐も経済成長も
13気候変動に具体的な対策を
などには、深く関わっていくことになります。
お話に出てきたティーチョコレートや、カカオ醤は、TOMOE SAVEURで購入できます。詳しくは公式HPをチェックしてみてください♫
美味しいBean to Barで、カカオの産地を知って、未来を耕したいですね。
▼TOMOE SAVEUR
https://t-sav.com
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