公金ゼロ円でも図書館は運営できる。なんでもシェアして、誰も無理しない「さんかく」の参画メソッド。
シャッター通り商店街だった焼津駅前通り商店街のなかではじめた小さな挑戦「みんなの図書館さんかく」は、2月15日にプレオープン、3月3日に正式オープンしました。
気づけば、開館から約3ヶ月半の時間が経過しました。たったこれだけの期間だったのに、振り返るととても濃密な時間でした。
「行政に任せているだけでは間に合わない!市民が中心になってまちづくりにガッツリ取り組んでいかなければ!」と意気込み、波長が合う仲間たちと一般社団法人トリナスをつくったのが、今年の1月。
「赤字にしないんだったらいいよ」と、メンバーに言われて、もともと個人のプロジェクトとして動かしていた「みんなの図書館さんかく」をトリナスの1事業として位置付けて、ここまで取り組んできました。
「みんなの図書館さんかく」の大きな特徴は、公金を一円ももらわずに図書館を運営していることです。「自分たちがほしい場所は、自分たちでつくる。」だから、不確実性が高い補助金や助成金などに頼らならい持続可能なシステムを常に考えてきました。
大家さんに「図書館がやりたいんです!」と話したときに、「お金どうするの?」と聞かれて、何も思い浮かばす「どうにかします!」と言っていたのが昨年の夏頃。
全国の私設図書館の事例を探しても、自宅を解放したり、お店に併設されていたりと、図書館単体で成立しているものはほとんど見つけられませんでした。「なんとかなるだろう」ととりあえず物件は借りたものの、開館がどんどん近づくに連れて、お金をどうしていこう...と発狂したのを覚えています。
いろいろ考えて、やっとひねり出したのが、「一箱本棚オーナー」の制度です。一箱本棚を月2,000円で借りることができて、棚に自分の好きな本を自由に置くことができるというものです。
このシステムをまわりに話したら、「お金にもならない、図書館のそんな本棚借りたい人なんているの?」と反対意見をたくさんもらいました。でも、たくさんの人と話すなかで「それなら借りてみたい!」という方がちょこちょこ出てきて、その言葉に自信をもらいながら、「とりあえず、これでやっちまえ!」の精神でプレオープンをスタートさせました。
結果的に、クラウドファンディングで購入された方も含めて、現時点で30名の方が一箱本棚オーナーとして契約をしてくれています。それも「とりあえず1ヶ月お試しで...」と契約された方の多くが、その翌月に「1年契約しちゃいます!」と契約を更新してくれています。
これで最低限の家賃や水道光熱費が賄えていて、安定的に運営をすることができています。
実は、駅前通り商店街の先っぽに来年の秋頃、子ども館ができる計画になっていて、ここに子ども図書館も併設されるようなのです。だったら、さんかくは「大人の図書館」にしようと、子どもの本はあまり置いていません。
でも、意外にも小学生たちがちょこちょこ来てくれていて、居場所みたいな使い方もしてくれています。先日は、よく来てくれる小学生の女の子のひとりが「ここのこともっと宣伝してあげるから、紙とペンを貸して!」と言うので、なにかと思ったら、こんな素敵なポスターをつくってくれました。これは本当に嬉しかったなぁ、さんかくの宝です。
「みんなの図書館さんかく」には、チャレンジショップのスペースを併設していてます。一緒にさんかくの立ち上げをしてきた、デザイナーの三浦さんが「しましまコーヒースタンド」を出店していて、平日の週3日は美味しいコーヒーを飲むことができます。
残りの週4日が余っているので、誰かやってくれる人がいないかなぁと思っていた矢先、「アジアのお茶を出したいんですよねぇ」という女性が現れ、「ぜ、ぜひやってください!」と即答して、アジアのお茶BARもスタートしました。
いまは毎週土曜日に美味しいお茶を飲むことができて、ぼくにとっても幸せな時間がつくられています。
実は「アジアのお茶BAR」のこの看板の字は、「さんかく」を会場に一箱本棚オーナーのひとりが開催している筆ペン教室で習ったものなのです。こんな風に「さんかく」内で循環が起こっている感じ、なんだか素敵じゃないですか。
その日、その時間、そこに集まった人によって「さんかく」はいろんな表情を見せていて、想像もしていなかったようなことがたくさん起こります。その偶発性がこの場所の良さだったりもするのです。
とある日は、その場にたまたまいた小学生と大学生が一緒にトランプをしはじめたりもします。一応、ここ図書館なんだけどね。笑 もちろんこんな利用も大歓迎です。
「セミナーの会場として使いたい!」と言われて、「どうぞどうぞ」と貸してみることもあります。なぜかテーマはミスターサタン 笑
そもそも正式オープンした3月3日が偶発性の重なりでした。テープカットをしようと決めたのは、その日の午前中。その計画を地元の自治会長に話したら、「それなら3時33分33秒に切るのがいいね」とノリノリで言われて、その場にいた人で即席テープカット式でした。1歳児から70代のおじさんが一緒にテープカットしたこの瞬間は、「さんかく」のあり方をそのまま表現しているかのようです。
「一箱本棚のレプリカ作りたいんですよねぇ」ととある一箱本棚オーナーさんに言われて、「え?どういうこと?」と思っていたら、数週間後にこんな写真がSNSに投稿されていて2度見しました。笑
ご本人いわく「これを自宅に置いておくと、本の入れ替えのイメージが湧くんですよね」とのことです。こんな「さんかく愛」を出してくれたら、嬉しすぎるに決まってます。
「運営はどうしてるの?お店番はいるの?」とよく聞かれます。まだはじまったばかりの場所ですので、いまは自分がお店番として立つことが多いですが、チャレンジショップ部分でお店が出ているときは、お店番自体をお願いしてしまうこともあります。
ほかにも一箱本棚オーナーの方が「お店番に立つよ!」と言ってくれることもあって、せっかくなのでお願いをしています。写真は釣り教室の先生もしている岩見さん。嬉しそうにお店番をしています 笑
ぼく自身は、お店番をしながらデスクワークをしているので、半分オフィスみたいになっていて、調べものをするのにも便利だったりします。図書館ですし。あとはチャレンジショップに出店している方や一箱本棚オーナーの方が「お店番するよー」と言ってくださるので、やりたいときにお店番をするスタイルで運営できています。
そもそもこの場所にいる時間が結構好きです。木の良い香りがして、ゆるりとながれるこの時間、ここを利用する誰よりもここが好きな自信があります。笑
ほかにも「文房具つかう?」と言って、ペンやファイルを寄贈してくださるおばさまがいたり、「お菓子食べてねー」といつもお菓子を持ってきてくれるおじいちゃんがいたり、この前は小学生の女の子が駄菓子屋さんで買ってきたお菓子を「あげる!」と言ってくれたりもしました。
「さんかく」は自分にとって、私設の公共空間をつくる小さな社会実験で、やってみることで見えてきたことはたくさんあります。まだ外には出していませんが、月ごとにレポートもまとめていて、これもちょっとずつこのマガジンでご紹介ができればと考えています。
まだ3ヶ月くらいの時間しか経過していないこの場所での実験を通して、ひとつわかったことは、意外と図書館は自分たちでつくれるってことです。
こんな場所憧れる!と言われたりもしますが、いくつかの要素が重なれば、どのまちでもきっとできる仕組みになっています。もちろんめちゃくちゃ稼ぐことはできませんが、現状で「さんかく」は黒字経営で、なにかあったときの蓄えもちょっとずつできています。
「さんかく」の第二フェーズに向けて、3つ仕込んでいることがあります。
ひとつは、「市民大学」をつくることです。よくある市民大学と違って、すべての授業を9人限定にしようと考えています。なぜなら「さんかく」には、椅子が9個しかないのです。それに広く浅くよりも、狭く深くのほうが「さんかく」には合っています。めちゃニッチなテーマの授業をたくさん企画します。
もうひとつは、「本の販売」をすることです。実は地元の書店とのコラボが決まっていて、「さんかく」で本の販売をしていくことになっています。本の予約販売もしていくので、ほしい本があったらぜひご予約ください。私設図書館が地元書店とコラボって、それだけでワクワクしませんか?
最後は、「一箱古本市」をやってみることです。これは一箱本棚オーナーさんの持ち込み企画で、あまりにも一箱古本市への想いが強い方だったので、「一緒にやりましょう!」とはじめてみることにしました。コロナが落ち着けば、やれるかなぁ。最初は小さくやってみます。
まだまだ「さんかく」の社会実験は続いていきますが、大きな手応えも感じています。今後の実験経過を見たい方は、ぜひ「さんかくマガジン」をご購読を!そして、「さんかく」にもぜひ足を運んでください。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?