見出し画像

社会をプロトタイピングする。事業を計画しないというやり方。

なにか新しいプロジェクト(新規事業)をはじめようとするとき、皆さんはどんな手順で進めますか?

一般的なルートで考えれば、企画書をつくり、組織内で吟味し、場合によっては市場調査をして、プロジェクトをリリースする。

大体はそんな感じでしょうか。

もちろんこうした一般的な事業立案、プロジェクト立案の方法を知っておくことは大事で、いわゆるPDCAサイクルをまわしていくことはビジネスの当たり前になりつつあります(高校生にまちづくりプロジェクトを教えるスクールをいくつか担当していますが、まずはこのことからはじめます)

調査、計画、実施のサイクルはまだ通用するのか?

ただ、人口減やコロナ禍によって、社会の当たり前が目まぐるしく変化しているいまの社会では、これが通用しなくなってきてるんじゃないの?と、最近思ったりしています。

例えば、自分はいまシャッター通り商店街の空き店舗で「みんなの図書館さんかく」という私設図書館を、市民の参画によって黒字経営で運営しています。

実はこのプロジェクトは、思いついてから開館するまでを約半年間で進めてきました。この間で、コンセプトを定め、レイアウトを決めて、内装工事をし、本の寄贈を集め、広報をして、と、いま振り返ると本当にすごいスピード感です。

計画しないことが、さんかくの良いところだ。

もちろんきちんとした事業計画もつくっておらず、当初は「計画しないことがさんかくの良いところだ」と話して、関係者に怒られたものです(笑)

というのも、いまでこそ「さんかく」の代名詞になっている「一箱本棚オーナー制度」ですが、開館当初はこれで事業の基盤をつくるなんて想像もしていなかったのです。

一箱本棚オーナー制度は、みんなの図書館のなかに自分だけの本棚を持つことができるオーナー制度です。

むしろ、初期のイメージでは、市民大学をつくってそこをきちんと収益化すること、そして足りない部分は、自分の事務所だと思って自分で家賃を払えば良いと考えていたのです。(なんなら開館1ヶ月前くらいまではそんな感じでした)

でも、「さんかく」の場をつくってみたら、一箱本棚を借りたいという人がどんどん現れ、「あれ?これもしかしていける?」と思ってきて、お貸しする本棚を20棚、30棚にして、気付けば現在は約48棚の一箱本棚オーナーさんがいます。

これは本当に計画し得ないことでした。

そして、付け足して言えば、この「さんかく」の仕組みが持続可能性が高いかは未だに謎なのです。というのも、私たちの図書館の開館は去年の3月で、来月でやっと1年を迎えます。そう、まだまだひよっこなのです。

ですから2年目を迎える「さんかく」になったら、本棚オーナーが次々に消えて、気付いたら潰れてしまっているということもあるかもしれませんし、この仕組みが持続可能かどうかは誰にもわかりません。

それにも関わらず「これはいいですよー!」と偉そうに情報発信しまくっている僕の責任もあり、去年から今年にかけて全国に5館も同じ仕組みを使った図書館ができてしまいました(もし、本元の「さんかく」が潰れてしまったらすみません(笑))

でも、僕は潰れたら潰れたで仕方ないと思ったりもしています。まあ、それはそれでおもしろいじゃないですか。

人間はいつでも計画したがります。ライプランにキャリアプラン、事業計画、活動計画。もちろん工事現場や工場など、緻密な準備や計画が求められる場もあります。むしろそういう場は計画が命です。

しかし、僕の経験上、大抵のことは計画してもその通りに進んだ試しはありません。例えば、ぼくの小学生の時の将来の夢はラーメン屋さんですが、いまは自分でも説明するのも難しい、よくわからない仕事をしています(笑)

私たちは計画通りにいかないと、それを失敗だと決めつけてしまいます。その軸で考えれば、「さんかく」も予想外の部分で収益を上げることになっているので、失敗と言えるかもしれません。

でも、本当にそうなのでしょうか?

上にも書いたように、これからの社会の未来はまったく予測ができません。最近、山口周さんの本を読みましたが、ビジネスは役割を終えたのではないか?と言及されているくらい不確実な世の中です。

つまり、計画したとしても、計画通りにいかない方が当たり前の時代になったとも言えるかもしれません。

社会をプロトタイピングする

そこでこれから大事になってくるのは、プロトタイピング的な思考法で「つくって試す」のサイクルを早いスピードでまわしていくことだと考えています。

一般的にプロトタイピングとは、実働するモデル(プロトタイプ)を早期に製作し、フィードバックを得ることで、設計を検証していく作業のことを指しています。(例えば、車であれば、まず試験車をつくって、実際に運転してみて、乗り心地や機能、精度を試してから量産につなげていきます)

これまでも様々なフィールドでプロトタイピングは行われてきましたが、こうした不確実性が高い社会では、このサイクルを次々にまわしていかなければ、前提となる条件がすぐに変わってしまうのです。

いま流行りのClubhouseも緊急事態宣言下の日本だから爆発的な人気になっています。しかし、これは自宅にいる時間が長くなったことを前提にしているサービスであり、もしかすると外出が自由にできるようになった社会では下火になってしまう可能性も大いにあります。

このことは何にでも共通して言えて、長い期間をかけて計画していたものが全く通用しなくなった、方向性を大きく変えなければいけない、という経験はこの1年間で誰にでもあったはずです。

こうした社会への対策方法は非常にシンプルで、計画から実行までのスパンを短くする、そしてうまくいかなかったときのために小さく実行する、の大きく2つです。

これがつまり、プロトタイピングなのです。実験思考と言っても良いかもしれません。

あなたがなにかアイデアを持っているのなら、まわりからなんと言われようと、まず小さく一回やってみる。ここで失敗したとしても、それは未来への学びなので、そんなにダメージはありません。

例えば、「さんかく」はいつ潰れても良いと思っていると上で書きましたが、これは半分本音で、失敗したら失敗したで仕方ないと考えています。

もし途中からうまくいかなくなったとしても、僕自身は本のコミュニティづくりをやった経験を得られるし、きちんとうまくいかなかった原因をふりかえれば、次に繋げていくことができます。

仮に事業サイクルを調査→計画→実行→検証と考えると、自分のサイクルには実行→検証しかないわけです(正確には、走りながら計画と実行をする)先金はこの考え方で、どんどんプロジェクト推進をしています。

このやり方の重要なポイントのひとつは「アレンジ力」が求められることです。

例えば、
・失敗しても成功と思う
・走りながら出てきた資源で、その場その時に組み立てる
・最初のイメージや計画していたことに縛られない

などができないと、結構つらいやり方になっています。

計画するなというわけではない。計画に固執しない。

誤解を招かないように補足すると、「計画するな」というわけではありません。重要なのは、計画に時間をかけすぎないこと、そして計画に固執しないことです。

いまの時代、どんな方法でやるか?は様々な打ち手があって、それこそネットで調べれば、たくさんの事例や情報が出てきます。だからやり方よりも、なぜやるか?のが最も大事だと考えています。

サイモン・シネックさんが言っているように、なにをやるか?どうやるか?ではなく、なぜやるか?を突き詰める。

そうすれば、やり方(つまりは計画)に固執しなくなるし、芯の強い事業が生まれるんじゃないかと思ったりするのです。

いいなと思ったら応援しよう!