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【交通事故の原因】蒸発現象(自車と対向車の前照灯の間で道路を横断中の歩行者が蒸発)を防ぐために、対向車と行き違うときや他車の直後を通行しているときは前照灯を減光するか下向きに切り替える。交通量の多い市街地の道路等でも前照灯を下向きに切り替える。

1週間ほど前に新聞やテレビで報道された(ローカル)ニュースについて、念のため、書き留めます。

(前略)

去年10月7日の夜、岡山市東区大多羅町の信号機のない交差点で、岡山東警察署の50代の警部補が私用で乗用車を運転していたところ、横断歩道を歩いて渡っていた70代の女性をはねました。女性は一時、意識不明となる大けがをしました。

警部補は当初、過失運転傷害の疑いで逮捕されましたが、その後、釈放され、任意での捜査が続けられていました。

警察が警部補の車のドライブレコーダーを分析したところ、事故の直前、警部補の車と対向車の双方のヘッドライトの光が重なり歩行者の姿が見えなくなる「蒸発」という現象が起きていたとみられることが捜査関係者への取材で分かりました。

これまでの調べに対し、警部補は容疑を認めているということで、警察は安全を確認する注意義務を怠ったとして、16日、警部補を過失運転傷害の疑いで書類送検しました。

(後略)

対向車(プリウス)がハイビームを点灯
対向車(プリウス)がロービームを点灯

自動車教習所で教わった(教科書に載っていた)蒸発現象(ヘッドライト・グレア現象)についてすっかり忘れている(ペーパー)ドライバーは少なくないようですが、LED化に伴い年々ヘッドライト(前照灯)が眩しくなる(眩しすぎる)中、歩行者にとっても、運転者にとっても、危険度が高まっていると感じる今日この頃です。

(※ 左右ドアミラー・サイドミラー(車外後写鏡)やルームミラー・バックミラー(室内後写鏡)に(1台・2~3台・4~5台後方の)後続車の強烈な前照灯の光が射し込んで、鏡で後方を確認することができないことも多々あります。)

(※ 蒸発現象(ヘッドライト・グレア現象)は海外でも大きな問題になっているようです。)

https://www.cbc.ca/news/canada/british-columbia/headlights-led-driving-safety-night-1.7409099

https://www.rac.co.uk/drive/advice/road-safety/headlight-glare/

年々ライトが眩しくなっているにも関わらず、2017年3月、歩行者を巻き込む事故を防止する意図で国家公安委員会が「交通の方法に関する教則」を改正した際に、夜間のハイビーム(走行用前照灯)使用が明文化されたこともあって

交通の方法に関する教則
(昭和五十三年十月三十日)
(国家公安委員会告示第三号)

道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第百八条の規定に基づき、交通の方法に関する教則(昭和四十七年国家公安委員会告示第一号)の全部を次のように改正する。

交通の方法に関する教則

第6章 危険な場所などでの運転

第3節 夜間

1 夜間の走行

(1) 夜間は視界が悪くなるため、歩行者や自転車などの発見が遅れます。また、速度感が鈍り、速度超過になりがちです。その上、夜間は、過労運転や酒酔い運転をする者や、酔つて歩く者などがいたりするので、昼間より速度を落として慎重に運転しましよう。少しでも危ないと感じたときは、まず速度を落とすことが大切です。

(2) 走行中には、自分の車と対向車のライトで、道路の中央付近の歩行者が見えなくなることがあるので、十分注意しましよう。

(3) 視線は、できるだけ先の方へ向け、少しでも早く前方の障害物を発見するようにしましよう。

(4) 前の車に続いて走るときは、その車のブレーキ灯に注意しましよう。

(5) 幹線道路などで長時間単調な運転を続けると眠くなります。眠気を防ぐために窓を開けて新鮮な空気を入れ、少しでも眠くなつたら、安全な場所に車を止めて、休息をとるようにしましよう。

(6) 薄暮時には事故が多く発生しますので、早めにライトを点灯し、自分の車の存在を知らせるようにしましよう。

(昭62公安告1・一部改正)

2 灯火

(1) 夜間、道路を通行するときは、前照灯、車幅灯、尾灯などをつけなければなりません。昼間でも、トンネルの中や濃い霧の中などで50メートル(高速道路では200メートル)先が見えないような場所を通行するときも同じです。

(2) 前照灯は、交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、上向きにして、歩行者などを少しでも早く発見するようにしましよう。ただし、対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を通行しているときは、前照灯を減光するか、下向きに切り替えなければなりません。

(3) 交通量の多い市街地の道路などでは、前照灯を下向きに切り替えて運転しましよう。また、対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目がくらまないようにしましよう。

(4) 見通しの悪い交差点やカーブなどの手前では、前照灯を上向きにするか点滅させて、ほかの車や歩行者に交差点への接近を知らせましよう。

(5) 室内灯は、バスのほかは、走行中につけないようにしましよう。

(6) 夜間、道路に駐停車するときは、非常点滅表示灯、駐車灯又は尾灯をつけなければなりません。昼間でも、トンネルの中や濃い霧の中などで50メートル先が見えないような場所に駐停車するときも同じです。しかし、道路照明などにより、50メートル後方から見える場所に駐停車しているときや、停止表示器材を置いて駐停車しているときは別です。夜間、高速道路でやむを得ず駐停車する場合には、非常点滅表示灯、駐車灯又は尾灯をつけるほか、停止表示器材を置かなければなりません。

(平28公安告54・一部改正) 

何年か前から、夜でも明るい大都市の中心部を除く日本中で、対向車があろうとなかろうと、赤信号で停車中も含め、常時ハイビームで走行・停車するドライバー(老若男女)が増えています。

自動車運転免許の更新時に警視庁や各都道府県警のハイビームの使用を推奨する講習を聞きかじったドライバーの皆さんには、関係法令に目を通すことをお薦めします。この記事の末尾に該当箇所を引用しましたが、対向車があるときにはロービーム(すれ違い用前照灯)にする必要がある旨、明確に定められています。

ハイビーム(走行用前照灯)点灯
ロービーム(すれ違い用前照灯)点灯

メーカーを問わず、現在販売されている自動車の大半にはオートハイビーム機能が装備されており、周囲の照度(対向車のヘッドライトの有無)に応じて、自動でハイビームとロービームが切り替わります。オートハイビームにしておけば、ハイビームで走行し続けることはないはずですが...

また、夜でも明るい大都市の中心部では、赤信号で交差点(横断歩道)の手前で停車するときに前照灯を消す(車幅灯と薄暮灯は点灯)ドライバーが少なくありませんが

メーカーを問わず、現在販売されている自動車には(新型車については平成30年3月8日以降、継続生産車については平成32年10月8日以降、搭載が義務付けられた)すれ違い用前照灯(ロービーム)自動点灯機能が装備されており、停車中に前照灯を消しても、走行を再開すると前照灯が点きます。

繰り返しになりますが、お時間があれば、関係法令に目を通すことをお薦めします。


:道路交通法 / 政令:道路交通法施行令

道路交通法

第五十二条(車両等の灯火)

1 車両等は、夜間(日没時から日出時までの時間をいう。以下この条及び第六十三条の九第二項において同じ。)、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。政令で定める場合においては、夜間以外の時間にあつても、同様とする。

2 車両等が、夜間(前項後段の場合を含む。)、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等、灯火を操作しなければならない。

道路交通法施行令

第十九条(夜間以外の時間で灯火をつけなければならない場合

法第五十二条第一項後段の政令で定める場合は、トンネルの中、濃霧がかかつている場所その他の場所で、視界が高速自動車国道及び自動車専用道路においては二百メートル、その他の道路においては五十メートル以下であるような暗い場所を通行する場合及び当該場所に停車し、又は駐車している場合とする。

第二十条(他の車両等と行き違う場合等の灯火の操作

法第五十二条第二項の規定による灯火の操作は、次の各号に掲げる区分に従い、それぞれ当該各号に定める方法によつて行うものとする。

一 車両の保安基準に関する規定に定める走行用前照灯で光度が一万カンデラを超えるものをつけ、車両の保安基準に関する規定に定めるすれ違い用前照灯又は前部霧灯を備える自動車 すれ違い用前照灯又は前部霧灯のいずれかをつけ走行用前照灯を消すこと。

二 光度が一万カンデラを超える前照灯をつけている自動車(前号に掲げる自動車を除く。) 前照灯の光度を減じ、又はその照射方向を下向きとすること。

三 光度が一万カンデラを超える前照灯をつけている原動機付自転車 前照灯の光度を減じ、又はその照射方向を下向きとすること。

四 トロリーバス 前照灯の光度を減じ、又はその照射方向を下向きとすること。

道路運送車両の保安基準

第三十二条(前照灯等)

1 自動車(被牽けん引自動車を除く。第四項において同じ。)の前面には、走行用前照灯を備えなければならない。ただし、当該装置と同等の性能を有する配光可変型前照灯(夜間の走行状態に応じて、自動的に照射光線の光度及びその方向の空間的な分布を調整できる前照灯をいう。以下同じ。)を備える自動車として告示で定めるものにあつては、この限りでない。

2 走行用前照灯は、夜間に自動車の前方にある交通上の障害物を確認できるものとして、灯光の色、明るさ等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。

3 走行用前照灯は、その性能を損なわないように、かつ、取付位置、取付方法等に関し告示で定める基準に適合するように取り付けられなければならない。

4 自動車の前面には、すれ違い用前照灯を備えなければならない。ただし、配光可変型前照灯又は最高速度二十キロメートル毎時未満の自動車であつて光度が告示で定める基準未満である走行用前照灯を備えるものにあつては、この限りでない。

5 すれ違い用前照灯は、夜間に自動車の前方にある交通上の障害物を確認でき、かつ、その照射光線が他の交通を妨げないものとして、灯光の色、明るさ等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。

6 すれ違い用前照灯は、その性能を損なわないように、かつ、取付位置、取付方法等に関し告示で定める基準に適合するように取り付けられなければならない。

7 自動車(二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車並びに被牽けん引自動車を除く。)の前面には、配光可変型前照灯を備えることができる。

8 配光可変型前照灯は、自動車の前方にある交通上の障害物を確認でき、かつ、必要な場合にあつてはその照射光線が他の交通を妨げないものとして、灯光の色、明るさ等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。

9 配光可変型前照灯は、その性能を損なわないように、かつ、取付位置、取付方法等に関し告示で定める基準に適合するように取り付けられなければならない。

10 自動車には、前照灯の照射方向の調節に係る性能等に関し告示で定める基準に適合する前照灯照射方向調節装置(前照灯(走行用前照灯、すれ違い用前照灯及び配光可変型前照灯をいう。以下この章において同じ。)の照射方向を自動車の乗車又は積載の状態に応じて鉛直方向に調節するための装置をいう。)を備えることができる。

11 配光可変型前照灯(当該灯火装置の光源から出される光の総量等が告示で定める性能を有するものに限る。)には、前照灯洗浄器を備えなければならない。

12 前照灯洗浄器は、前照灯のレンズ面の外側が汚染された場合において、当該部分を洗浄することにより前照灯の光度を回復できるものとして、洗浄性能等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。

13 前照灯洗浄器は、その性能を損なわないように、かつ、取付位置、取付方法等に関し告示で定める基準に適合するように取り付けられなければならない。



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