続【安全第一】事故や故障に際し、横付けした鉄道車両へ渡り板で乗客を移動-並列停車した車両同士の間隔および必要な渡り板の長さ(新幹線・在来線)
二つ前の記事
で事故車両・故障車両に横付けした救援車両へ渡り板を使用して乗客を移動する(新幹線とマリンライナーと東京モノレールの)訓練を含む事例を幾つか参照しましたが
駅(プラットホーム)以外の場所に緊急停車した車両と救援車両の複線線路における間隔について、念のため、書き留めます。
軌道A(例えば、上り線路)と軌道B(例えば、下り線路)の間隔の最小値は軌道Aの中心と軌道Bの中心の間隔として法令に定められています。
軌道中心間隔(即ち、車両中心間隔)は車両限界の基礎限界の最大幅に一定の幅を加算した値です。もし車両の横幅が車両限界の基礎限界の最大幅に等しいと、複線線路の直線部ですれ違う(離合する)車両と車両の間隔は加算した値(在来線では 600 mm、新幹線では 800 mm)に等しくなりますが、実際には、車両の横幅が車両限界の基礎限界の最大幅より狭い分だけ、間隔は拡がります。
尚、前述の規定を(新幹線の)車両限界の基礎限界の最大幅に適用した値が新幹線鉄道実施基準に示されていますが、山陽新幹線以降に建設された新幹線については 100 mm 余裕を持たせてあるため、新幹線鉄道実施基準に記載されている軌道中心間隔は 100 mm 広くなっています。
例えば、軌道中心間隔(即ち、車両中心間隔)4200 mm で敷設された東海道新幹線の複線線路(直線部)では、4200 mm から車体の幅(N700系では 3360 mm)の右半分と左半分(上り列車と下り列車)を引く(結果的に車体の幅を引く)と、上りと下りですれ違う(離合する)新幹線の車体と車体の間隔は 840 mm になります。
軌道中心間隔(即ち、車両中心間隔)4300 mm で敷設された山陽新幹線の複線線路(直線部)では、4300 mm から車体の幅(N700系では 3360 mm)の右半分と左半分(上り列車と下り列車)を引く(結果的に車体の幅を引く)と、上りと下りですれ違う(離合する)新幹線の車体と車体の間隔は 940 mm になります。
東北新幹線では、例えば、E5系・H5系の車体の幅は 3350 mm なので、上りと下りですれ違う(離合する)新幹線の車体と車体の間隔は 950 mm になります。
北陸新幹線では(E5系・H5系より最高速度が遅く、車体傾斜装置を装備していない)E7系・W7系の車体の幅はE5系・H5系より 30 mm 広い 3380 mm なので、上りと下りですれ違う(離合する)新幹線の車体と車体の間隔は 920 mm になります。
https://www.youtube.com/shorts/7y9HM6b0A2E
新幹線がすれ違う(離合する)際、上り列車と下り列車は1メートルも離れていないわけですから、車内に座っていても風圧(?)を感じるような気がする方もいらっしゃるのでは...
実際、通過追越駅で停車中のこだまやひかりの横をのぞみが通り過ぎると、こだまやひかりはドスン(?)と揺れます。
(※ 山陽新幹線以降は、東北新幹線も青函トンネルも北海道新幹線も軌道中心間隔 4300 mm で建設されていますが、青函トンネルの三線軌条の部分では、片方の標準軌ともう片方の狭軌との軌道中心間隔は 184 mm(標準軌と狭軌の差の半分)拡がり 4484 mm になります。)
在来線の複線線路(直線部)は軌道中心間隔(即ち、車両中心間隔)3600 mm で敷設されています(※ 末尾に引用した記事もご参照ください。)が、二つ前の記事でふれたマリンライナーの高松寄りの車両(5000系)の幅と岡山寄りの車両(223系)の幅は共に 2950 mm です。
従って、上りと下りですれ違う(離合する)マリンライナーの車体と車体の間隔は 650 mm になります。(但し、二つ前の記事でも述べた通り、先週末の日曜日にマリンライナー10号が緊急停車した本四備讃線(瀬戸大橋線)の橋梁部分では、橋の下層部の構造上、上り線路と下り線路はかなり離れて(軌道中心間隔は 6200 mm)敷設されています。マリンライナーの高松寄りの車両(5000系)の幅と岡山寄りの車両(223系)の幅は共に 2950 mm ですので、上りと下りですれ違う(離合する)マリンライナーの車体と車体の間隔は 3250 mm になります。)
以上のことから、事故車両・故障車両に横付けした救援車両へ乗客を移動する際に使用する渡り板の長さは一般的には 1500 mm(1.5 m)あれば十分であると考えられますが、駅では軌道中心間隔が少し拡がっていることを考慮して、また、軌道中心間隔が少し拡がった曲線部で乗客を移動する状況等に備えて、渡り板の長さが 2000 mm(2.0 m)あると安心かもしれません。
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