見出し画像

続【安全第一】事故や故障に際し、横付けした鉄道車両へ渡り板で乗客を移動-並列停車した車両同士の間隔および必要な渡り板の長さ(新幹線・在来線)

二つ前の記事

で事故車両・故障車両に横付けした救援車両へ渡り板を使用して乗客を移動する(新幹線とマリンライナーと東京モノレールの)訓練を含む事例を幾つか参照しましたが

非常用の渡り板(JR四国)
訓練の様子(JR四国)
瀬戸大橋上約6時間立ち往生の列車 渡り板見つからず乗客救出約2時間遅れる岡山放送

駅(プラットホーム)以外の場所に緊急停車した車両と救援車両の複線線路における間隔について、念のため、書き留めます。

@700nozomi at Instagram

軌道A(例えば、上り線路)と軌道B(例えば、下り線路)の間隔の最小値は軌道Aの中心と軌道Bの中心の間隔として法令に定められています。

鉄道に関する技術上の基準を定める省令

鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準

第Ⅲ章 線路

Ⅲ-11 第22条(軌道中心間隔)関係

軌道中心間隔は、車両の走行及び旅客、係員の安全に支障を及ぼすおそれのないものであり、次の基準に適合するものであること。

(1)普通鉄道(新幹線を除く。)及び特殊鉄道(無軌条電車、超電導磁気浮上式鉄道及び磁気誘導式鉄道を除く。)の軌道中心間隔は、次のとおりとする。

① 本線(列車速度が160km/h 以下のものに限る。)の直線における軌道中心間隔は、車両限界の基礎限界の最大幅に600mm を加えた数値以上とする。ただし、旅客が窓から身体を出すことのできない構造の車両のみが走行する区間では、車両限界の基礎限界の最大幅に400mm を加えた数値以上とする。

② 線間に待避する場合は、①の軌道中心間隔を700mm 以上拡大するものとする。

③ 曲線における軌道中心間隔は、車両の偏いに応じ、①又は②に規定する軌道中心間隔に次の式により計算して得られた数値を加えるものとする。ただし、この数値が建築限界と車両の基礎限界との間隔に比べて十分に小さい場合は、偏いに応じた拡大を省略することができる。なお、曲線による偏い量の算定式は、第20条解釈基準(3)に規定する曲線における建築限界、車両の偏いに応じた拡大量の算定式と同様とする。

W = A + W1 + W2

この式において、W、A、W1、W2は、それぞれ次の数値を表わすものとする。

W : 拡大寸法
A: カント差による偏い量
W1: 当該線における曲線による偏い量
W2: 隣接線における曲線による偏い量

(2)新幹線(超電導磁気浮上式鉄道を除く。)の軌道中心間隔は、次のとおりとする。

① 本線(列車速度が300km/h 以下のものに限る。)の直線における軌道中心間隔は、車両限界の基礎限界の最大幅に800mm を加えた数値(列車を160km/h 以下の速度で運転する箇所においては600mm)以上とし、作業上等必要な場合には、これを拡大すること。

② 曲線における軌道中心間隔は、車両の偏いに応じ、①の軌道中心間隔に(1)③の式により計算して得られた拡大量を加えるものとする。ただし、半径2,500m 以上の場合は、偏いに応じた拡大を省略することができる。

(3)超電導磁気浮上式鉄道の軌道中心間隔(ガイドウェイの中心間隔)5.8m 以上とする。ただし、車両の走行等に影響を与えるおそれがない場合は、この限りでない。

(4)磁気誘導式鉄道の軌道中心間隔(走行路の中心間隔)は、以下のとおりとする。

① 隣接する2線の相互の建築限界が支障しない間隔以上とすること。

②(1)②の規定は、磁気誘導式鉄道について準用する。

軌道中心間隔(即ち、車両中心間隔)は車両限界の基礎限界の最大幅に一定の幅を加算した値です。もし車両の横幅が車両限界の基礎限界の最大幅に等しいと、複線線路の直線部ですれ違う(離合する)車両と車両の間隔は加算した値(在来線では 600 mm、新幹線では 800 mm)に等しくなりますが、実際には、車両の横幅が車両限界の基礎限界の最大幅より狭い分だけ、間隔は拡がります。

特に大きな違いは線路の建設基準です。東海道新幹線は計画最高速度210km/h、最小曲線半径2500m、最急勾配20パーミル、縦曲線半径10000m、軌道中心間隔4200mmといった基準で建設されました。これに対し山陽新幹線は計画最高速度250km/h、最小曲線半径4000m、最急勾配15パーミル、縦曲線半径15000m、軌道中心間隔4300mmという基準になっています。

簡単にいえば、東海道新幹線より山陽新幹線のほうがカーブが緩く、坂道も緩く、上下線の間隔も広く、スピードを出しやすい構造になっているのです。

尚、前述の規定を(新幹線の)車両限界の基礎限界の最大幅に適用した値が新幹線鉄道実施基準に示されていますが、山陽新幹線以降に建設された新幹線については 100 mm 余裕を持たせてあるため、新幹線鉄道実施基準に記載されている軌道中心間隔は 100 mm 広くなっています。

新幹線鉄道実施基準

第2章 線路

第4節 施工基面の幅及び軌道中心間隔

第19条 軌道中心間隔は、車両の走行及び旅客、係員の安全に支障を及ぼすおそれのないものであり、次の基準に適合するものであること。

(1) 停車場外の直線における軌道中心間隔は、4.3m 以上とする。ただし、列車速度等から安全上問題のない個所においては、4.2mまで減ずることができる。

(2) 停車場内における軌道中心間隔は、4.6m 以上とする。ただし、作業上その必要のない箇所の軌道中心間隔は、4.2mまで減ずることができる。

(3) 曲線における軌道中心間隔は、車両の偏いに応じ、前二項の規定にかかわらず、第17 条「建築限界」3 項の曲線における建築限界、車両の偏いに応じた拡大量の算定式により加えるべき数値の二倍以上の数値を前二項の軌道中心間隔に加えたものとしなければならない。ただし、軌道中心間隔が4.3m、曲線半径1,000m以上又は軌道中心間隔が4.2m、曲線半径2,500m以上の場合は、偏いに応じた拡大を省略することができる。

N700系
日本車輌製造株式会社

例えば、軌道中心間隔(即ち、車両中心間隔)4200 mm で敷設された東海道新幹線の複線線路(直線部)では、4200 mm から車体の幅(N700系では 3360 mm)の右半分と左半分(上り列車と下り列車)を引く(結果的に車体の幅を引く)と、上りと下りですれ違う(離合する)新幹線の車体と車体の間隔は 840 mm になります。

東海道新幹線 - N700系

軌道中心間隔(即ち、車両中心間隔)4300 mm で敷設された山陽新幹線の複線線路(直線部)では、4300 mm から車体の幅(N700系では 3360 mm)の右半分と左半分(上り列車と下り列車)を引く(結果的に車体の幅を引く)と、上りと下りですれ違う(離合する)新幹線の車体と車体の間隔は 940 mm になります。

東北新幹線では、例えば、E5系・H5系の車体の幅は 3350 mm なので、上りと下りですれ違う(離合する)新幹線の車体と車体の間隔は 950 mm になります。

北陸新幹線では(E5系・H5系より最高速度が遅く、車体傾斜装置を装備していない)E7系・W7系の車体の幅はE5系・H5系より 30 mm 広い 3380 mm なので、上りと下りですれ違う(離合する)新幹線の車体と車体の間隔は 920 mm になります。

https://www.youtube.com/shorts/7y9HM6b0A2E

新幹線がすれ違う(離合する)際、上り列車と下り列車は1メートルも離れていないわけですから、車内に座っていても風圧(?)を感じるような気がする方もいらっしゃるのでは...

実際、通過追越駅で停車中のこだまやひかりの横をのぞみが通り過ぎると、こだまやひかりはドスン(?)と揺れます。

(※ 山陽新幹線以降は、東北新幹線も青函トンネルも北海道新幹線も軌道中心間隔 4300 mm で建設されていますが、青函トンネルの三線軌条の部分では、片方の標準軌ともう片方の狭軌との軌道中心間隔は 184 mm(標準軌と狭軌の差の半分)拡がり 4484 mm になります。)

Railwayに想いをこめて

在来線の複線線路(直線部)は軌道中心間隔(即ち、車両中心間隔)3600 mm で敷設されています(※ 末尾に引用した記事もご参照ください。)が、二つ前の記事でふれたマリンライナーの高松寄りの車両(5000系)の幅と岡山寄りの車両(223系)の幅は共に 2950 mm です。

出発進行!
出発進行!

従って、上りと下りですれ違う(離合する)マリンライナーの車体と車体の間隔は 650 mm になります。(但し、二つ前の記事でも述べた通り、先週末の日曜日にマリンライナー10号が緊急停車した本四備讃線(瀬戸大橋線)の橋梁部分では、橋の下層部の構造上、上り線路と下り線路はかなり離れて(軌道中心間隔は 6200 mm)敷設されています。マリンライナーの高松寄りの車両(5000系)の幅と岡山寄りの車両(223系)の幅は共に 2950 mm ですので、上りと下りですれ違う(離合する)マリンライナーの車体と車体の間隔は 3250 mm になります。)

下津井瀬戸大橋

以上のことから、事故車両・故障車両に横付けした救援車両へ乗客を移動する際に使用する渡り板の長さは一般的には 1500 mm(1.5 m)あれば十分であると考えられますが、駅では軌道中心間隔が少し拡がっていることを考慮して、また、軌道中心間隔が少し拡がった曲線部で乗客を移動する状況等に備えて、渡り板の長さが 2000 mm(2.0 m)あると安心かもしれません。

@nozomi_N9001

在来線


← 東京 

1号車

2号車

3号車

4号車

5号車

6号車

7号車

8号車

9号車(グリーン車)

10号車(グランクラス)

仙台・新青森・新函館北斗 →


いいなと思ったら応援しよう!