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もしロシア(核保有国)ウクライナ戦やイスラエル(核保有国)イラン戦で小型核兵器が使用されると . . .
前置きが長くなりました。お急ぎの方は、映画(『トータル・フィアーズ』と『アメリカン・アサシン』)の中で小型核兵器が爆発する様子が描かれた場面へ進んでください。
尚、専門家によれば、映画やドラマで核兵器が爆発する場面は間違いだらけだそうです。
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アメリカ合衆国とソヴィエト連邦が核軍縮交渉を行っていた20世紀の終盤とは異なり、戦略核兵器(strategic nuclear weapon)と戦術核兵器(tactical nuclear weapon)は使用目的・運用方法で分類されるようになりましたが、ウクライナ侵攻が始まった当初からロシアが後者(戦術核兵器)を使用するのではないかと懸念されてきました。
(前略)
戦略核と言った場合、米ロが直接的に互いを攻撃できる核兵器のことを指します。一方、戦術核と言った場合、米ロが直接撃ち合うものではなく、欧州など地域レベルの戦場で使われるものを想定しています。
つまり、戦略核、戦術核という言い方は核兵器の種類ではなく、核兵器の使い方の分類ということになります。
(後略)
資金と人員と武器が枯渇するウクライナに対してロシアの優位が伝えられる昨今でも、プーチン大統領は核兵器の影をちらつかせながら益々強気の姿勢を露わにしています。
(前略)
ロシアのプーチン大統領は29日、モスクワ中心部のクレムリン近くで、内政や外交の基本方針を示す、年次教書演説を行いました。
このなかで、ウクライナへの軍事侵攻について「圧倒的な多数の国民から支持された」と述べ、正当性を主張するとともに、ロシア側が優勢だと強調し、侵攻の継続に対する国民の結束を訴えました。
また「ロシアの戦略核兵器の戦力は、確実に使用できるよう準備が完了している」と述べ、ロシアの核戦力を誇示したうえで、ウクライナへの支援を続ける欧米側をけん制しました。
こうした発言に対しEUの報道官は29日、「ウクライナへの戦争を始めたのはプーチン大統領で、世界への影響を含む全ての責任がある」と述べたうえで「核兵器による脅しは絶対に容認できず、不適切だ」として、プーチン大統領を非難しています。
(後略)
(前略)
ロシア国防省は6日、プーチン大統領の指示を受けて「非戦略核兵器の核戦力の任務遂行を強化する目的で、演習の準備を開始した」と発表し、戦術核兵器を扱う部隊による演習を近く行うと明らかにしました。
(後略)
ウクライナ侵攻を開始して以降のプーチン大統領の発言を振り返ると、欧州とアメリカに対して、邪魔立てするなら核兵器の使用も辞さないという意志が、時間の経過に連れて、より堅固になっているように感じられます。
Putin's nuclear warnings since Russia invaded Ukraine
By Mark Trevelyan (March 13, 2024)
欧州に目を転じると、例えば、ロシアがウクライナへ侵攻した当初は事態をやや静観していたドイツも、軍事費を増額し、ウクライナへ武器を供与する一方、徴兵制度の復活や核兵器の保有まで国内で議論されているようです。
中東では、ハマスが停戦・休戦交渉へ前向きの姿勢を示す一方、イスラエルとイランの間の緊張は解けていません。それでも、例えば、ウラン濃縮プラント等の核関連施設を攻撃されない限り、イランがイスラエルに対して全面戦争を仕掛けることはなさそうです。
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日本の周辺においても紛争の火種は燻っているようです。例えば、1957年に出版されたネヴィル・シュート著『渚にて』(原題は On the Beach)
第三次世界大戦が勃発し、世界各地で4700個以上の核爆弾が炸裂した。戦争は短期間に終結した(北半球のすべてを炎で包んだのち、三十七日めの最後の大爆発とともに短く終わった)が、北半球は濃密な放射能に覆われ、汚染された諸国は次々と死滅していった。かろうじて生き残った合衆国の原潜〈スコーピオン〉は汚染帯を避けてメルボルンに退避してくる。オーストラリアはまだ無事だった。だが放射性物質は徐々に南下し、人類最後の日は刻々と近づいていた。
ソ連と中国のあいだで核戦争が勃発したことを初めて知らされた。もとはといえばイスラエル対アラブ諸国の戦いにアルバニアが介入したことからNATO対ソ連の戦いへと発展し、さらに中国対ソ連へと飛び火したのだった。
が1959年に映画化された『渚にて』(原題は On the Beach)はスタンリー・クレイマーが監督しグレゴリー・ペック、エヴァ・ガードナー、フレッド・アステア、アンソニー・パーキンス、他が出演した名作ですが
2000年にオーストラリアでリメイクされたテレビドラマ『エンド・オブ・ザ・ワールド』(原題は On the Beach)は、台湾海峡の有事が米中の全面核戦争に発展した結果、北半球が死滅している状況下で物語が始まります。
【 本編 】
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核出力の大小を問わず、プーチン大統領やネタニヤフ首相や配下の軍人が、勢い余って(あるいは、誤って)核兵器を実戦で使用することのないよう、切に願います。
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さて、『風の谷のナウシカ』は火の七日間で世界中が巨神兵に焼き払われた千年後の物語ですが
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第三次世界大戦や審判の日を舞台とする映画にこれまで登場した核兵器は、大陸間弾道ミサイルや大型爆撃機で遠方の攻撃目標に投下される戦略核兵器が大半を占め、戦術核兵器は例外的でした。
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小型核兵器が戦場で炸裂する映像が見当たらないので、代わりに、大都市で爆発する映像を紹介します。『トータル・フィアーズ』(2002年)では、第四次中東戦争(1973年)に際してアメリカからイスラエルへ提供された戦術核爆弾(爆弾を搭載した戦闘機が墜落し、未使用のまま地中に埋没)がネオナチの手に渡り、専門家の手で整備された後に、密かに米国へ持ち込まれ、ボルチモア(スーパーボウル開催中のスタジアム)で爆発します。
トータル・フィアーズ
原作はトム・クランシー著『恐怖の総和』
(ジャック・ライアン シリーズ)
また、戦場といえば戦場ですが、『アメリカン・アサシン』(2017年)では第6艦隊(アメリカ海軍)が航行する至近距離(但し、水中)で小型核兵器が炸裂しました。
アメリカン・アサシン
原作はヴィンス・フリン著『アメリカン・アサシン』
(ミッチ・ラップ シリーズ)
(※ 下記映像は、若干、編集・短縮されています。)
この映画に登場した爆弾(15kgのプルトニウム239を使用)はかなり小さいので、リニア・インプロ―ジョン方式であったかもしれません。
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海外で制作される映画やテレビドラマの中で、核兵器は単に超強力な爆弾として扱われることが多く、キノコ雲の下で死傷する市民や兵士の惨状が描かれることは稀ですが、東京タワー上空(高度 2,400メートル)で爆発した1メガトン(TNT換算)の核爆弾で東京が壊滅する様子が、40年前に放送されたNHK特集『世界の科学者は予見する・核戦争後の地球(1)-地球炎上-』の中で描かれています。
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ウクライナのどの部隊や軍事施設に対してロシアが小型核兵器の使用を検討しているのか判りませんが、79年間使われることのなかった核兵器が一度実戦に投入されれば、破滅への序曲を奏でることは間違いなさそうです。