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視点の自由研究No.86「視点_映画の魔力」
映画が好きだということは、以前このコラムでも書かせて頂きました。広告映像という業界に入るきっかけになった映画。撮影技術やCG、編集などのテクノロジーが進む一方で、それらの技術を全面に押し出さず、巧みなストーリー、手練手管の演出できっちりと魅せる映画も今も数多く作られています。
今回は、今も私の勉強とさせて頂いている映画を考えてみたいと思います。
「感情を動かす」
世の中のアートや創作物は、全て人の感情を動かすことが目的であると私は考えています。見る側に何かしらのメッセージとそこで相手側の心との間で生まれる感情の揺らぎを生み出すこと。
広告物も創作物である以上、見る人の感情を動かすのが仕事です。時には購買意欲を掻き立て、時に商品のイメージをいいなと感じさせる。ダイレクトな値段告知や情報告知だけに留まらず、クリエイティブのアイデアが組み込まれるのもこうした感情の動きこそが人を動かす原動力だからだと思います。
映画も全く同じで、感動を生む装置として発展してきたと思います。予告編などの事前情報で期待していた自分の感動と鑑賞後に違っていた心の動きですと、酷評になるのかもしれません。逆に大きく期待を超えたり、言葉にできないような感情を生んだ時には傑作と評価されるのではないでしょうか。
「鑑賞後感」
こうした鑑賞後感。映画で一番の醍醐味と言えるかもしれません。作り手側が考え、視聴者側に投げかけたい鑑賞後の地平は映画を作る上で一番重要な要素な気がしています。
映画を作ったことはありませんが、一観客としてまた一人の映像制作者として映画を見るとこの作り手側の鑑賞後感をどう作るかを意識せずにはいられません。言葉にしたいようなしたくないような感情。そんなものを持ち帰らせてくれる映画は、私にとってとても好きな映画になっています。
「演出は技術」
自分も映像を作る端くれ。広告映像である以上、クライアントの伝えたいメッセージを大切にしつつ、この鑑賞後感を大切にしたいと思っています。
そうした際に映画の演出は大変参考になります。映像尺に違いはあれど、多くの映画体験を経ることで、何を見せ、何を見せないか、音楽の当て方、役者の見せ方など多くの情報に映画は溢れています。こうした演出術は私にとってとても貴重で体系化は難しいのですが、やはり技術として昇華していると思っています。先人たちが培ってきたものに今の人たちが新たに技術の更新をしている。だからこそ単純なカットの編集が変わらずとも多くの物語が今も生まれてもいる。
そうした作り手たちの大河の流れを意識すると映像制作、演出は本当に奥深いなと感じています。
「映像の可能性」
かつて、そして今も戦争ではプロパガンダとして映像が使われています。モンタージュなど戦争中に見出された編集方法などもあると聞きます。
感情を動かす映像は人の行動を誘導させる力を持ち合わせています。こうした時により多くの映像に触れているというのは実は大変貴重なことかもしれません。様々な見方、捉え方ができるということは一元的な解釈を生まず、多様性を意識した社会を維持することにつながるのではないでしょうか。
映画という魔力。そこに魅入られた方も多いと思います。私もその一人です。願わくば映画が平和の装置として機能することを祈っています。
何より私自身がこれからも多くの映画を楽しみたいと思っています。
これからも映画産業が続いていくことを願っている一映画ファンでした。
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