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【Interview企画/学生小委員会】知事が感じたドボクの面白さ!【香川県知事-Vol.1】


はじめに

みなさんこんにちは!
土木学会学生小委員会インタビューWGです!
今年度から学生小委員会では、ユニークな経験やアイデアを持った方々との対話を通じて、これからの土木や社会に関わる若者に有益な情報を提供することを目的にしたインタビュー企画の連載を開始します。学生が聞きたい方にインタビューを実施する形式とわらしべ長者形式の2種類で進めていきます。

 今回からスタートするわらしべ長者シリーズは、インタビューした方に次にインタビューする方をわらしべ長者のように紹介していただく形で進めていきます。記念すべき第一弾は、池田豊人 香川県知事にインタビューを行いました。知事は、東京大学で土木工学を学んだ後に建設省(現:国土交通省)に入省し、近畿地方整備局長、道路局長などを歴任し、現在は、地元である香川県の知事を務めています。
 Vol.1である本記事では、池田知事が土木を学び始めたきっかけや学生時代に感じたこと、知事の思う土木の面白さを知ることができる記事になっています。筆者も含め多くの土木学生が思ってることについて語られていますので、ぜひ読んでみてください!

池田豊人知事プロフィール
1961年 香川県高松市生まれ
1980年 香川県立高松高等学校卒業
1984年 東京大学工学部土木工学科卒
1986年 東京大学大学院工学系研究科土木工学専攻修了
1986年 建設省に入省
2011年 国土交通省関東地方整備局道路部長
2015年 国土交通省大臣官房技術審議官
2016年 国土交通省近畿地方整備局長
2018年 国土交通省道路局長
2021年 日本製鉄(株)顧問
2022年 香川県知事就任

知事が国交省時代の経験から得たドボクの面白さ

大学時代

宮﨑(学生小委員会)――――――
 知事が土木工学を専攻した理由についてお教えください。

池田知事――――――
 僕が高校生の頃の四国は、瀬戸大橋もなかった。当時YSというプロペラ機が高松空港から飛んでいたけど、風が吹くとすぐに止まるので、島に閉じ込められてなかなか外に行けなかったんです。

YS-11型機
瀬戸大橋

 ここから出て、他の世界を見てみたい!このままだと小さい世界で終わってしまうのではないか、そう感じていました。今の人は、瀬戸大橋の開通が一番大きいと思うのですが、JALやANAの飛行機も1日14便飛んでいるので、そう感じないのかなと思います。しかし、当時は、とにかく外に行かなきゃみたいな意識があって、東京大学に進学しました。
 最初は、理科一類(工学系)に入って、3年生で各専攻に分かれるんだけど、その時は、こんなもんかなみたいな感じで土木を学ぶことにした。なので、そんなに思い詰めて選んだ感じではなかったと思います。後付けかもしれないけど、小さい頃から地図が好きで、小学生の時には、友達と地球儀や地図帳で地名を探す競争して遊んでいました。それと、僕は、理科系に進んだけど、小さい図面に設計とか化学の実験とかみたいな細かい作業があるものがあまり得意ではないんです。土木は、経済学をはじめ文科系的な分野もあるし、細かいことはないと思って決めた気がします。

大学での印象的な出来事

宮﨑(学生小委員会)――――――
 大学で土木を専攻しているときの印象的な出来事などがありましたら教えてください。

池田知事――――――
 20歳ぐらいの時だから、僕だけではないんですけど、大学の講義であった土質の圧密の実験とか、コンクリートのひび割れ実験にみんな面食らっていました。友達との会話でも「東京大学の実験室でこんなのやることなの?」とか「親が見たら驚くだろうな(笑)」みたいな話をしていた。

コンクリートのひび割れ実験の例

当時は、コンピューターが出始めた頃で、コンピューターを用いて計算したり、シミュレーションしたりして、地震の際に橋梁の構造が問題ないかどうかを判断したりする研究や都市計画や交通計画などの計画系の研究がかっこいいと思っていました。一方、土質実験とかコンクリートの実験とかは、「なんか、ださいなぁ~」ってムードがあったんですよ。だけど、10年ぐらい仕事をして気づきました。いわゆる科学的なものは、製造したものと机上の計算がおおむね一致します。しかし、土とかコンクリートの場合は、これまでの学術的なもので示された数式に則って、ここに力を加えたらどのぐらいでダメになるとか出すことはできるけど、それでもやってみないと分からない部分がある世界でした。結局、土にしてもコンクリートにしても、まだ判明していないことが多いですね。例えば、現場でコンクリートで作るときには、実験室のように骨材やセメントなどの材料を緻密に計測して混ぜ合わせることは難しいため、どうしてもばらつきが発生してしまいます。そういう中で、どうやったら壊れるかとかを考えるわけだからすべてを理解することが難しいです。土木は経験工学といわれますが、やっぱりやってみないと分からないが土木の面白さでもあり、土木技術者の価値にも繋がっていると思います。

国交省時代のエピソード

宮﨑(学生小委員会)――――――
 知事は、大学卒業後に国交省の道路局で主にお仕事をされていたと伺ったのですが、具体的には、どのような場面でそのように思われたのでしょうか?

池田知事――――――
 道路計画の立案では、交通の予測をしてから計画を作成します。例えば、ある道路を建設したら、こういうふうに流れが変化して渋滞が解消するみたいな予測を行うのだけど、はっきり言って、その計算はそんなに説得力がありません。既存の道路があって、渋滞の解消を目的にこの道路を建設すると説明する機会で説明しても「これ作って意味あるの?」と尋ねられて、計算結果を説明しても「ふーん」って感じであまり信用してもらえないことが多かったです。ところが、実例を用いて、今回の場所と似た状況の場所で実施された対策で解消・緩和されたことを踏まえて、今回この策を実施しますと説明すると、絶大な説得力がありました。私の経験的には、実際の社会で人を説得する場合において計算結果を用いても、あまり説得力がないですね。実例がある場合には、納得してもらえる場合が多い印象を持っています。

感想

 私も高校の通学中にダムの建設現場を見ていたことがきっかけで、何となく土木系学科に進学を決めました。しかし、国交省の道路局長まで勤められた方も、土木を専攻したきっかけが「何となく」という理由だったと伺い、驚きました。大学に進学する際、目的を明確に持っている人もいるでしょうが、18歳で進路を決める中で、「なんとなく」という気持ちで選ぶ人も多いのかもしれませんね。
 私も地盤とかコンクリートの分野は、実験とか大変そうだし、地味なイメージで何となく惹かれなくて、少し避ける形で都市計画・建設マネジメントの研究室に進みました(笑)。私のイメージかもしれませんが、同じような学生は、私以外にも結構いると思います。地盤の教授とかに「この分野は、重要なんだ!しっかり学びなさい!」って言われても全く心に響きませんでした。しかし、同じ考えを学生時代に持っていた方から重要性を説かれれると、インタビューのお話であった”実例には説得力がある”ではないですが、私も土木の本流?の分野についてもっと学んでおけばよかったのかもしれないと心が少し動きました。

最後に

最後まで、読んでいただきありがとうございました。
この記事が気に入った方は、リアクションやコメントを書いていただけると嬉しいです。
次回は、引き続き池田知事とのインタビューの様子をお伝えいたします。
現代社会と土木の関わり方に対する知事の持つ哲学や将来の日本、土木業界を担う若者に対するアドバイスなど次回も必見です!
お楽しみに!

<メンバー随時募集中!>

今回の記事を通して「インタビューを通して、直接話を聞いてみて考えを巡らせたい!」「インタビューしたい相手がいる!」という学生は、是非とも学生小委員会に参加し、私たちとともにいろいろな方へインタビューに行きましょう!
インタビューWG以外にも様々な活動を行っているので、興味のある方は、ぜひ一緒に活動をチェックしてみてください!

今回私達のインタビューのために貴重なお時間を頂戴しました
池田豊人様
池田恵様
には厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

<取材チーム>

学生小委員会
東洋大  宮﨑康平
東洋大  川端浩平
早稲田大 樋口蒼太朗
香川高専 土田虎之助
2023年7月2日 『池田とよひと後援会事務所』にて