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生息範囲拡大中のナガコガネグモArgiope bruennichi(クモ目:コガネグモ科)のゲノム・細胞遺伝学的手法による性染色体の同定(Sheffer et al., 25 May 2022)

抄録:
成長、生態、行動における雌雄の違いは、種の生態を力強く形成している。クモのような動物群では、外形から幼体の性別を識別することが難しいか、不可能な場合がある。この情報は、野外調査や行動実験、性比や分散に関する研究などの生態学的研究に有用である。性染色体を持つ種では、特定の性染色体の相補性に基づいて性を決定することができる。さらに、性染色体の配列に関する情報は、性染色体の進化を研究するための基礎となるものである。私たちは、細胞遺伝学的データとゲノムデータを組み合わせて、性的二型であるナガコガネグモArgiope bruennichiの性染色体を同定し、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応による性マーカーを設計した。その結果、このクモのゲノムサイズとGC含量は、大多数のクモ類で報告されている範囲に入ることがわかった。雄の核型は24本の先鋭染色体からなり、性染色体はX1X20系で、X染色体間の類似性はほとんどなく、これらの染色体はX染色体の分裂またはX染色体の初期重複とその後のコピーの独立分化によって生まれたことが示唆された。ナガコガネグモA. bruennichiでは、X染色体の大きさはほぼ同じであることが示唆された。これらは補体より小さな染色体である。この発見は、クモの進化や生態の研究に新たな方向性を与えるものである。

Sheffer, Monica M., Cordellier, Mathilde, Forman, Martin, Grewoldt, Malte, Hoffmann, Katharina, Jensen, Corinna, Kotz, Matěj, Král, Jiří, Kuss, Andreas W., Líznarová, Eva, Uhl, Gabriele. 2022. Identification of sex chromosomes using genomic and cytogenetic methods in a range-expanding spider, Argiope bruennichi (Araneae: Araneidae). Biological Journal of the Linnean Society, 136(3), 405–416.

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野口 大介(のぐち だいすけ)
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