アカオビゴケグモLatrodectus elegansの染色体レベルゲノムアセンブリから、毒と糸タンパク質の構成と進化が明らかになった(Wang et al., 25 May 2022)
抄録:
背景
クロゴケグモは,非常に強い神経毒を持つ毒と,多様な糸からなる立体的なクモの巣を併せ持つ生物である.しかし,クロゴケグモの高品質なリファレンス・ゲノムはまだ得られておらず,貴重なバイオマスの深い理解と応用の妨げになっていた.
研究成果
我々はアカオビゴケグモLatrodectus elegansのゲノムを構築した.ゲノムサイズは1.57 Gb,コンティグN50は4.34 Mb,スカフォールドN50は114.31 Mbであった.Hi-C〔ハイスルー染色体立体配座捕捉〕スカフォールディングにより,ゲノムの98.08%が14の擬似染色体に割り当てられ,BUSCOによる完全性解析により,真核生物のコア遺伝子の98.4%がこのゲノムに完全に存在していることが明らかになった.このゲノムのアノテーションにより,反復配列が506.09 Mb(32.30%)と20,167個のタンパク質コード遺伝子を占め,特に55個の毒素遺伝子と26個のスピドロインが確認され,それらの構成と進化についての予備的解析が提供された.
結論
クロゴケグモの染色体レベルのゲノムアセンブリを我々は初めて紹介し,実質的な毒素とスピドロイン遺伝子のリソースを提供することができた.これらの高品質なゲノムデータは,代表的なクモ〔ナガコガネグモA. bruennichiを含む〕のグループから貴重な資源を追加し,特に毒や網の紡ぎ方の多様化に関する重要な問題の観点から,クモのゲノム進化の深い探究に貢献するものである.また,この配列データは,クモのバイオマスのさらなる応用のための最初のテンプレートとなる.
Wang, Z., Zhu, K., Li, H., Gao, L., Huang, H., Ren, Y., Xiang, H. 2022. Chromosome‐level genome assembly of the black widow spider Latrodectus elegans illuminates composition and evolution of venom and silk proteins. GigaScience, 11, giac049(1-11).