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抗生物質を含むというクモ糸の神話(Fruergaard et al., 22 Oct 2021)

抄録:クモの糸はよく抗菌作用があると言われる.この考えは,クモ糸の抗菌作用(AMA; antimicrobial activity)を報告した研究に基づいている.しかし,これらの研究を精査してみると,その根拠は矛盾しており,せいぜい逸話的なものであることがわかる.我々は,クモの系統を超えた7種〔ナガコガネグモArgiope bruennichi, ニワオニグモAraneus diadematus, タランチュラの一種Caribena versicolor, ハイイロゴケグモLatrodectus geometricus, ショクヨウジョロウグモNephila edulis, イワガネグモ科の一種Stegodyphus dumicola, イエタナグモTegenaria domestica〕の異なる糸の抗菌特性を系統的に研究した.その結果,グラム陰性細菌のEscherichia coliとPseudomonas putida,およびグラム陽性細菌Bacillus subtilisに対する直接接触法とディスク拡散法において,糸のAMAを示す証拠は見つからなかった.さらに,染色実験と蛍光顕微鏡検査では,糸の表面に生きたバクテリアが存在することが示され,直接接触では抗菌効果がないことが示された.文献を批判的に評価したところ,AMAに関する発表された試験は少なく,肯定的な結果を主張する研究はすべて,方法論的な欠点によって損なわれていることが明らかになった.我々の分析によると,クモの糸に抗菌作用があるという一般的な考え方は,経験的なデータによって裏付けられてはいないことが明らかになった.

Fruergaard, S., Lund, M. B., Schramm, A., Vosegaard, T., Bilde, T. 2021. The myth of antibiotic spider silk. iScience, 24(10), 103125(17 pp.).




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