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ナガコガネグモArgiope bruennichiにおける雌の性フェロモン放出は体調に影響されるが,免疫系の機能には影響されない(Weiss & Schneider, 26 Mar 2022)

抄録:性フェロモンは種や性の認識シグナルとして機能するが,配偶相手の評価や選択にも同様に重要である.適応的な配偶相手の選択には,シグナルの特性と適合性に関連する形質との共変化が必要であり,これはシグナルの条件依存的なコストによって達成することができる.シグナル産生と免疫系機能など他の生命現象との間に生理的な関連性がある場合,性的シグナルの発現は体調の低下や病原体感受性の上昇をもたらす可能性がある.誠実なシグナル伝達理論によれば,高品質の個体のみが高品質の性シグナルを生成できるはずである.我々はこの予測をナガコガネグモArgiope bruennichiの雌の性シグナルで検証した.ナガコガネグモの雌は揮発性フェロモンであるメチルクエン酸トリメチルを分泌し,遠距離から雄を引きつけるだけでなく,近距離の雄の配偶相手の選択の主要な基盤となっている.最近の実験から,雌はフェロモンを慎重に利用し,必要に応じてフェロモンの分泌量を調整することが分かっており,フェロモン分泌のコストが示唆されている.本研究では,免疫挑戦と採餌の両方を用いた完全要因計画により,雌の生理的状態を操作した.餌を与えた雌または飢餓状態の雌に,無菌または細菌性リポ多糖を塗布した針で傷をつけた.フェロモン産生に対する免疫系刺激の影響は見られなかったが,採餌ストレスはフェロモン産生量を有意に減少させた.重要なことは,この反応がフェロモンの絶対量と体重で正規化された相対フェロモン量の両方の観点から明らかだったことで,この効果は体表面や体積の減少ではなく,フェロモン分泌の減少によるものであることが示されたことである.フェロモンが細胞内のエネルギー生産の主要な異化経路であるクエン酸サイクルと密接に関連していることから,シグナルの誠実さに関する「共有経路仮説」に従って,ナガコガネグモの雌のフェロモンが雌のエネルギー生産能力全般をシグナリングしている可能性を論証することができた.

Weiss, K., Schneider, J. M. 2022. Female sex pheromone emission is affected by body condition, but not immune system function, in the orb-web spider Argiope bruennichi. Ethology, 128(6), 471– 481.

https://doi.org/10.1111/eth.13280


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野口 大介(のぐち だいすけ)
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