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サラグモ類の染色体レベルのゲノムは,毒の組成と進化への洞察を提供する(Zhu et al., 18 Feb 2022)

抄録:クモは世界で最も豊富な毒を持つ捕食者である.クモの毒に関するこれまでの研究は,ほとんどがトランスクリプトームとプロテオームに依存しており,高品質のゲノムはわずかしか利用されていない.これは,クモの種の多様性との整合性からはほど遠い.本研究では,13本の染色体を含むクロナンキングモHylyphantes graminicolaの高品質染色体レベルゲノムアセンブリを構築し,ゲノム長931.68 Mb,スカフォールドN50 77.07 Mbを達成した.ゲノム,トランスクリプトーム,プロテオームプロファイリングを統合し,9つの毒素遺伝子ファミリーの中から合計59のコーディング遺伝子を同定した.その中で,グループ7アレルゲン(ALL7)タンパク質が初めてクモ毒に含まれることが報告された.このことから,ALL7は毒液中で重要な役割を果たしており,クモの新発見毒素の一種である可能性が示唆された.また,比較ゲノム解析により,クモ〔ナガコガネグモA. bruennichiを含む〕とサソリのゲノムに存在する主要な毒素遺伝子ファミリーの遺伝子数が,保守的な進化速度で類似していることを明らかにした.このことは,これらの毒素遺伝子が,クモやサソリが一次防御機能を果たすために,古代から(約4億年)保存されてきた「基本ツールキット」である可能性を示唆している.クモから高品質の染色体レベルのゲノムを得ることは,毒の研究や毒素資源の利用を促進するだけでなく,絹や行動の進化など,他の重要な形質における比較ゲノム解析の向上にもつながる.

Zhu, B., Jin, P., Hou, Z., Li, J., Wei, S., Li, S. 2022. Chromosomal-level genome of a sheet-web spider provides insight into the composition and evolution of venom. Molecular Ecology Resources, 00(Early View), 1– 16.

https://doi.org/10.1111/1755-0998.13601


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野口 大介(のぐち だいすけ)
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