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クモの円網由来の無定形糸のメソスケール構造(Riekel et al., 23 Oct 2020)

円網を構成する7-8本の糸繊維のうち,大瓶状腺の糸で構成される半結晶性放射状繊維の階層的な構造組織については,その魅力的な力学特性から,これまで詳細な研究が行われてきた.大瓶状腺の糸のナノフィブリル構造はよく知られているが,メソスケール(50-100 nm以上)の集合体やその力学性能への寄与に関するノウハウは限られている.また,一般に結晶性の低い他の繊維の階層的な構造構成が円網の機能に寄与していることは,あまり知られていない.本研究では,走査型X線マイクロ・ナノ回折法を用いて,〔ナガコガネグモArigiope bruennichiの〕円網の中心部にある2本の完全な非晶質で,緻密な糸の繊維が異なるメソスケールの特徴を持つことを明らかにした.繊維のうちの1つは,硬い卵嚢の糸に似たフィブリル状の複合構造を持っている.もう一方の繊維は,無秩序なコアに巻きついたナノフィブリル・リボンに基づくスキン・コア構造をしている.ナノフィブリルの一部は,メソスケールのフィブリルに集合しているように見える.この繊維は,大瓶状腺の糸の被膜に容易に付着するようになる.我々は,剥離した繊維が,ポリグリシンIIナノ結晶を含む糖タンパク質の表面薄層を引き裂いていることを観察した.この繊維が被膜に固定されていることから,大瓶状腺の糸の張力や凝集力を強化する役割を担っていることが示唆された.

Riekel, C., Burghammer, M. Rosenthal, M. 2020. Mesoscale structures in amorphous silks from a spider’s orb-web. Scientific Reports, 10, 18205.


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野口 大介(のぐち だいすけ)
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