生息域を拡大するクモArgiope bruennichi(クモ目:コガネグモ科)のゲノムおよび細胞遺伝学的手法による性染色体の同定(Sheffer et al., 08 Oct 2021a)
抄録:成長,生態,行動における雌雄の違いは,種の生物学を力強く形作る.クモなどの一部の動物集団では,幼体の性別を特定することが困難または不可能である.このような情報は,野外調査,行動実験,および性比や分散などの生態学的研究に有用である.性染色体を持つ種では,特定の性染色体の相補性に基づいて性別を決定することができる.さらに,性染色体の配列に関する情報は,性染色体の進化を研究するための基礎となる.本研究では,細胞遺伝学的データとゲノムデータを組み合わせて,性的二型を持つクモであるナガコガネグモArgiope bruennichiの性染色体を同定し,RT-qPCR性マーカーを設計した.その結果,このクモのゲノムサイズとGC含量は,大多数のクモ類で報告されている範囲に収まることがわかった.雄の核型は24本の逆心性染色体で形成されており,X1X20の性染色体システムを持っている.X染色体間の類似性はほとんどなく,これらの染色体の起源はX染色体の分裂,またはX染色体の初期の複製とその後のコピーの独立した分化によるものと考えられる.我々のデータは,A. bruennichiのX染色体の大きさが類似していることを示唆している.それらは相補のための小さな染色体である.今回の発見は,クモの進化・生態研究の新しい方向性を示すものである.
Sheffer, M. M., Cordellier, M., Forman, M., Grewoldt, M., Hoffmann, K., Jensen, C., Kotz, M., Král, J., Kuss, A. W., Líznarová, E., Uhl, G. 2021a. Identification of sex chromosomes using genomic and cytogenetic methods in a range-expanding spider, Argiope bruennichi (Araneae: Araneidae). Preprint from bioRxiv, 1–26.