日本人の対極はドイツ人だった
時間に対する姿勢、というのは国民性がモロに出ます。
以前参加した異文化研修 (cross-cultural training) でも、そのことを実感したものです。
この研修は、3人のイギリス人講師がショートコントを披露しながら、各国民の行動特性をユーモラスに紹介する形式で、なかなか楽しい余興でした。
研修の参加者:
デイヴィッド(イギリス人男性)
リカルド(イタリア人男性)
カトリーヌ(フランス人女性)
私(日本人男性、ドイツ駐在長し)
その他、日本人男性数名
最初にこんなお題が与えられました。
あなたは 3時から社内会議の予定が入っています。
2時 50分、大切な顧客から電話がかかってきました。
電話をとると、製品に対するクレームです。
顧客はたいへんお怒りで、10分で話が終わりそうにありません。
このとき、あなたがとる行動を次の 2つから選んでください。
A) 顧客の怒りが収まるまで電話応対し、会議には遅れて出る。
B) 3時前に「あとでコールバックします」と顧客に告げ、時間どおりに会議に出る。
イギリス人のデイヴィッドが発言しました。
「A。会議は私がいなくてもできるけど、顧客への応対は私にしかできないからね」
日本人男性が発言しました。
「私も A ですね。社内会議より、顧客のほうが重要だと思います」
講師が「あなたは?」とイタリア人のリカルドに訊きました。
リカルド「A かな」
講師「なぜですか?」
リカルド「そもそも、会議が時間どおりに始まると思ってないから」
講師「シシリアンタイム (笑)・・・A の人が多いですね。B という人は?」
挙手したのは私だけ。
講師「ほう。あなたは B。なぜですか?」
私「会議は予定されていた。顧客は突然電話してきた。予定を優先します」
講師「ははーん。あなたは・・・いえ、まあいいでしょう」
講師「カトリーヌ、あなたは?」
カトリーヌ「C) 会議の 10分前に電話なんかとらない」
フランス人、自由すぎ!
A or B の 2択なんですけど。
勝手に 3択にするのは・・・
だったら私も C だっつーの。
講師「C はさておき・・・A が多数ですね。Bと答えるのがドイツ人、つまり典型的な mono-chronic です。そこのあなた」
私「え? 私?」
講師「そうです。ドイツ人に認定されました」
mono-chronic: 予定は予定、約束は約束、一度決めたことは変えない
poly-chronic: 柔軟、臨機応変、ケースバイケースで優先順位を考える
時間に対する mono-chronic のトップ 3
1位 ドイツ
2位 オランダ
3位 スウェーデン
時間に対する poly-chronic のトップ 3
1位 インドネシア
2位 タイ
3位 メキシコ
この mono-chronic / poly-chronic 測定は、ドイツを 1、インドネシアを 10とし、各国を 10段階で格付しています。
日本は、10段階で 7という格付。(真ん中よりpoly-chronic寄り)
同じ 7に格付されたのは、韓国、中国、インド、トルコ、ロシア、スペイン。
この mono / poly の 2極モデルは、時間に対する姿勢だけでなく、いろんなテーマに使えます。
次のテーマは、「役割と責任」に対する mono 型と poly 型。
mono 型の役割と責任: 個人の責任範囲を明確に定義する
poly 型の役割と責任: 個人の責任範囲を敢えて曖昧にしておく
役割と責任に対する mono のトップ 3
1位 ドイツ
2位 カナダ
3位 オランダ
役割と責任に対する poly のトップ 3
1位 日本
2位 インドネシア
3位 ベトナム
次に、「人間関係」に対する姿勢。
mono 型の人間関係: 仕事上の人間関係をプライベートに持ち込まないドライな関係。「あの人苦手」などの私情を仕事に差し挟まない。残業しない。仕事が終わったらまっすぐ帰る。休暇をフルにとる。
poly 型の人間関係: 仕事と私生活の境界が曖昧で、職場の同僚と仕事外でも関わるウェットな関係。人間味がある温かい関係で、コミュニティのような居心地の良さがあるが、しがらみや煩わしさもある。お付き合い残業、会社の飲み会。周囲に気を遣って休暇がとれない。人間関係や感情(好き嫌い)が仕事に大きく影響する。
人間関係に対する mono のトップ 3
1位 ドイツ
2位 チェコ
3位 スウェーデン
人間関係に対する poly のトップ 3
1位 フィリピン
2位 インドネシア
3位 タイ
日本は 10段階で 8という格付。(タイに次ぐ poly の 4位)
同じ 8には、韓国、中国、インド、ブラジル、ベトナム、マレーシア。
最後に、high context / low context のランキングを紹介します。
high context 文化: 共有されている情報量が多いため、少しの言葉で伝わる
low context 文化: 当たり前のことも含め、言葉で全部説明する必要がある
講師は例として、長年連れ添った夫婦は high context、初デートする男女は low context、と説明しました。
high context のトップ 3
1位 日本
2位 韓国
3位 タイ
low context のトップ 3
1位 ドイツ
2位 オランダ
3位 スイス
ここで、イギリス人講師たちによるショートコント。
1人が日本人の役、もう 1人がドイツ人の役を演じます。
これがメチャメチャ上手い。
日本人役の講師は、日本人特有のカタカナ英語を見事に再現します。
ドイツ人役の講師は、濁音と破裂音を強調したドイツ訛りの英語を、ドデカい声でツバを飛ばしながら話します。
日本人「Hi Georg」
ドイツ人「Hallo, Honda-san」
日本人「How is that?」
ドイツ人「That... What is “THAT” ?」
日本人「I mean that of last week」
ドイツ人「THAT of last week...? What happened last week?」
日本人「He told you」
ドイツ人「He told me WHAT? Und... Who is “HE” ??」
日本人「Anyway, please do that, ok?」
ドイツ人「WHAT ARE YOU TALKING ABOUT!? Nein! Das ist nicht OK!!」
ヤバい。日本人よりドイツ人側の気持ちに共感している自分がいる。
うさぎのしっぽさんの記事(👇)を読んで、以前参加した異文化研修を思い出し、当時の研修レポート(という名の日記)を読み返しながら、この記事を書きました。
外資系でバリバリ働くうさぎのしっぽさんの『異文化理解力』シリーズは、書評とともに鋭い洞察とポイズンマインドあふれる笑いに満ちていて、とても面白いです。
また、ヨルダンで国際協力のお仕事をされながら、現地のアラブ人と本部の大和人の板挟みに悩まされているはびーびさんの記事(👇)も、同じテーマを扱っていて、たいへん示唆に富む体験談です。
両者に共通する精神は、文化の異なる人々に心を寄せ、同質性よりも違いを楽しみ、そんな多種多様な人間を愛しく感じているところだと思います。
私はドイツで、日本人とほぼ真逆な精神性に面食らい、ゲルマン集団と格闘しているうちに、すっかりジャーマナイズしてしまいました。
そんな私の「おつとめの三ヶ条」です。
✅ 残業しない
✅ 3週間休暇を年 2回とる
✅ 会社の飲み会には出ない