大人たちの作るドラマが観たいのです
むかしのドラマが好きです。
とくに 1980年代のドラマ。
70年代だとちょっと古くさく感じ、90年代だと面白くなくなる。
80年代がちょうどいいのです。
これは完全に私の個人的な好みでしかない、と思っていましたが、どうやらそうでもないらしい。
80年代のドラマと 90年代以降のドラマを比較するのによいサンプルがあります。
『北の国から』
調べてみたら、連続ドラマでの初回放送は 1981年でした。
このドラマは 2クール 24話で 1982年に終わったのですが、その後 1983年~2002年の間にスペシャル枠として 8回もの続編が制作されたそうです。
その間、主なキャストが変わっていないだけでなく、脚本・監督・プロデューサーから撮影・照明・音声などのスタッフにいたるまで、ほぼ同じ人たちが『北の国から』を制作してきました。
普通に考えれば、シリーズ全編にわたって同じクオリティ、同じテイストが保たれなければおかしいですよね。
ところが・・・
『北の国から』を連続ドラマ時代 (1981~82) から観た方ならご存じのとおり、この 21年間でまったく異なる作品になってしまっています。
いつから変わってしまったかは意見の分かれるところでしょう。
スペシャル版になった 83年から。
純が東京に出てグレた 89年から。
螢が突然不倫に走った 95年から。
あるいは、五郎が孫を溺愛する 02年を観て、この長い歳月をかけた親と子の物語も「もはや終わったな」と感じたかもしれません。
視聴率は、81年当初は 10%前後だったのが、スペシャル版を通じてぐんぐん上がっていき、2002年には 40%近くを記録したようです。
視聴者層が広がったことで、ストーリーが薄っぺらくなったり、新キャラに流行りのタレントを起用したこともあるのでしょう。
それにしても、制作陣が変わっていないなかで、ここまで変わってしまうのはありえないと思いませんか?
『北の国から』が変わったのは、世の中が変わってしまったからだと私は思いました。
倉本聰という人は、普遍的な家族愛を描きながら、過疎化や文明化といった社会問題に鋭く切り込んでいます。
とくにスペシャル版になってからは、その時代その時代の社会問題を取り上げていたように見えます。
非行問題、遠距離恋愛、ゴミ問題、不倫、離婚、農薬、携帯電話、出会い系サイト、などなど。
それがよくなかったんじゃないかなぁ。
マンネリ化を防ぐためのお化粧的位置づけだったのかもしれないけど、この物語にお化粧とか要らないんだよね。
螢が走って汽車を追いかけるだけで完璧な絵になるのですから。
社会問題のスケールが小さくなっているようにも感じます。
ちんけなメディアが取り上げるような、普遍的というより流行りのトピックを採り入れてみた。それでどんどんつまらなくなっていった。
時代に合わせようとしたわけですが、その時代(=現実社会)がつまらなくなっていったのと軌を一にして、作品までがつまらなくなっていったと思うのです。
同じ人たちが作ってきたのに。
それは、脚本・監督・プロデューサーを含む大人たちが、つまらない大人になってしまったことを意味するのかもしれません。
だとすれば、もうあの頃のようなドラマは未来永劫作られることはないのでしょうか。
世の中が変わるのは必然です。
良いことも悪いこともあります。
一方で、変わらないこともあると思うのです。
大人たちが作るドラマには、その変わらないことをていねいに語り継いでほしいと思いました。