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統計|時系列から因果関係を見る―概要編―

関係性の分析といえば相関分析をはじめ,回帰分析などの横断データの分析が挙げられるだろう。

これらの分析からは,
関係があることがわかる
影響があることがわかる

ただ,注意しなければいけないことがある。

・ 時間的先行性はわからない
・ モデル適合度から因果関係はわからない
・ 仮説の立て方次第で X → Y ,Y → X ,X ⇌ Y の
  どれもが成り立つ

さて,これらの問題を解決するにはどうしたらよいか?

一行目で挙げた分析は,
先行研究などから得られる理論的見地から仮説を立てたうえで
一時点データから2変数の関係性を検討する
   ↓
ではデータに時間的な要素を入れてしまえばよくない?
   ↓
パネル調査による縦断データを用いて
時系列変化から2変数の関係性を検討しよう!!

ということで,
今回は縦断データから変数間の影響の方向性を検討する
交差遅延効果モデル(Cross-lagged model)を紹介する。



因果関係を分析する

交差遅延効果モデル(交差遅れ効果モデル)はパネル調査で得られた2時点以上の縦断データの分析。まず説明の前に,「これだけ読んどけば大丈夫」という論文が以下の通り。

西田他(2014),岡林(2006),島本・石井(2010)

詳細は最後の文献リストに載せておくので,この記事を飛ばして読むか読んだ後に確認してほしい。

さて本題,交差遅延効果モデルはSEMを用いて以下のようなモデルを分析する。

図5

見かたは,β1 が有意で(赤),β2 が有意でない(青)と X → Y の因果関係を推定できる。基本は2時点(2波)のデータがあれば因果関係の推定は可能だが,3時点(以上)のデータを追加して分析することもある。

3時点以上とるとどうなるか?

図3

・ より柔軟かつ安定的に,変数間の因果関係を推定できる。
 (Finkel, 1995; 近江他,2005)
・ X1 → Y2 → X3 のような循環的な因果関係も見られる。
 (高比良他,2006) 


潜在変数があるときは

今までの図...,観測変数じゃん...,複数因子がある尺度を使ったときってどうしたらいいの?

安心してください,複数因子のある尺度合計得点を観測変数とせずに,潜在変数をモデルに組み込むこともできる

例えば,交差遅延効果モデルをググるとまず最初にぶつかる教科書のような論文では,以下のようなモデル図を検討している(西田他,2014)。
(さっきも出てきた論文)

図4

これさえ見れば説明は不要だと思う(手抜き)。
交差遅延効果モデルは結構応用が利く。


(2022年8月12日)
潜在変数の説明は手抜きで何もしてなかったが,最近自分のデータで分析してみて困ったことをメモしておく。

実は分析した結果,モデル適合度が悪く,(TLIとCFIが.80あたりでした)
さてどうしたものかと調べまくった結果,下位尺度に刺さっている誤差変数間の共分散を引くべきだということに気づいた。なんでそんな簡単なこと思いつかなかったんだろう…。おそらく論文の図に記載されるときに,誤差共分散まで書いてないから気づかなかったんだろうな。

ということでメモとして分析モデルの画像を貼り付けます。Amosとかでやってる人はこのまま同じように作れば問題ない(はず)。


今回はここで終了。次はこの記事を書くに至った理由に触れつつ,
交差遅延効果モデルの応用について,ある論文を引用しつつ紹介する予定。


(2021年6月9日)
続き投稿しました!
   ↓

(2023年8月29日)
続き投稿しました!!
   ↓↓

ここちがうよっていうところがあったら教えてください。
優しく易しくお願いします。


< 文献 >

Finkel, S. E. (1995). Causal analysis with panel data. Thousand Oaks, CA: Sage Publications.

西田 裕紀子・丹下 智香子・富田 真紀子・安藤 富士子・下方 浩史(2014).高齢者における知能と抑うつの相互関係:交差遅延効果モデルによる検討 発達心理学研究,25(1),76-86.

岡林 秀樹(2006).発達研究における問題点と縦断データの解析方法 パーソナリティ研究,15(1),76-86.

島本 好平・石井 源信(2010).運動部活動におけるスポーツ経験とライフスキル獲得との因果関係の推定 スポーツ心理学研究,37(2),89-99.

高比良 美詠子・安藤 玲子・坂本 章(2006).縦断調査による因果関係の推定:インターネット仕様と攻撃性の関係 パーソナリティ研究,15,87-102.


「これだけ読んどけば大丈夫」な論文



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