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インフレ目標「0%」超の良い部分と悪い部分

「0%」超の解釈
いよいよ衆院選まで1週間を切りました。各党の公約や候補者の主張等が連日報じられています。その中で立憲民主党が次期衆院選の公約の中で「新しい金融政策への転換」と銘打ち、日銀の物価安定目標を「2%」から「0%超」へと変更するとともに、政府・日銀の共同目標として「実質賃金の上昇」を掲げる方針を提示したことが一部で注目されています。日経新聞でもこの論点にクローズアップして記事を組んでいます:

この方針をどのように評価するかという照会を複数頂くため、筆者なりの所感を提示してみたいと思います。なお、物価情勢に絡んでは石破首相が総裁選直後の会見で「3年でデフレ脱却」と唱えたことについて違和感を唱える向きが多く、この点は下記noteでも議論いたしました。宜しければこちらも今回記事と合わせてお読み頂ければと思います:

結論から言えば、今回の立民提案に関しては、良い部分と悪い部分があると筆者は感じています

先に悪い部分から言えば、巷間指摘されるように、「2%」を「0%超」に修正するという情報発信が不必要に日銀のタカ派色をアピールする恐れがあるという点でしょう。もちろん、1.8%や1.5%でも「0%超」なので、過度な引き締めを意味するわけではありません。しかし、「2%」を「0%超」にするという字面が持つインパクトは小さくないと思います。市場参加者ひいては姿勢の人々にとって金融政策運営の善し悪しは残念ながら第一印象で決まりやすいのは否めません。真偽は別にして、です。

「0%超」というのは表現として単純過ぎるため、意図しないタカ派解釈から想定外の円高・株安を惹起しかねないでしょう。現に、この方針については「タカ派的過ぎる」との批判が非常に多いです。これに対し、泉健太・前立民代表はX上で「『0%近傍』という意味ではなく、『プラス領域』という意味」と釈明をしていました。また、同党におけるネクスト財務金融相である階猛議員も「明らかな誤解。我々は物価0ではなく実質賃金プラスを目標にしている」、「物価0%を目指すことはなく、実質賃金プラスなら物価2%でも何ら問題ない」とやはりX上で情報発信していらっしゃいます。さらに、野田佳彦代表も日本経済新聞などのインタビューで「物価上昇率がゼロを下回ってはいけないが、デフレ脱却に向けて柔軟性があった方がいいとの趣旨だ」と答えています。

では良い部分とは何でしょうか。

上述の立憲幹部の発言をまとめると、要するに「2%を無理やり目指すことはしない」という意図が透けます表現が最適解だとは思いませんが、物価目標の柔軟性を意識しているのは良い部分だと筆者は感じます。かねて言われていたように、現在の物価目標に関する政府・日銀の共同声明(アコード)が孕む最大の問題点は2%目標について「できるだけ早期に実現することを目指す」という部分です。この「できるだけ早期に」という概念が退くに退けない日銀の状況を創り出し、イールドカーブ・コントロール(YCC)に象徴される無理筋な政策運営の遠因になったのは間違いありません。

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