唐鎌大輔(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト)

慶大経卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会などを経て現職。著書に『弱い円の…

唐鎌大輔(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト)

慶大経卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会などを経て現職。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』、『「強い円」はどこへ行ったのか』、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』。所属学会:日本EU学会。※コメントは個人的見解であり所属組織とは無関係です

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米利下げ開始は円高の号砲なのか?

7月分も込めて▲50bp 9月17~18日に開催されたFOMCはFF金利誘導目標に関し、5.25~5.00%から4.75〜5.0%へ▲50bp引き下げることを決定しました。利下げは4年半ぶりの決定となります: 筆者は米国の経済・金融情勢を踏まえれば▲25bpが妥当と予想していましたので、外れたことになります。しかし、パウエルFRB議長の会見を見る限り、「本当は▲25bpで十分だが、7月にやらなかった分を加味して▲50bp」というロジックが透けました。そうであれば、辛うじて理

    • 総裁選と金融市場【現時点の頭の整理】

      総裁選、市場の争点定まらず さて、市場のニュースは今日のところはFOMCの大幅利下げに集まっていますが(これは後ほどやります)、9月27日に投開票が迫った自民党総裁選についても相場との関連で照会が増えています。正直、経済政策について相場を動かすほどの争点が浮上しているわけではないですが、現時点の情報に基づいて簡単な論点整理はしておきたいと思います: 票読みは筆者の専門外ですが、今回は過去最多となる9名が立候補していることから、1回目の投票で過半数を得る候補が現れず、上位2名

      • ドイツの産業空洞化とユーロ~エネルギー高に押し負ける「永遠の割安通貨」~

        ユーロ高とドイツの産業空洞化 前回のVW社のドイツ脱出を取り上げたnoteは沢山読んで頂きました。本件に関しては、先週(9月13日)にご出演させて頂いたテレビ東京「モーニングサテライト」の「経済視点」でも少しだけお話させて頂きました。得てして欧州を題材とした経済・金融議論は金融市場全般を対象にした議論よりも読み手を選ぶものですが、日本においてこのテーマは関心が高いようです。今後、テレビや動画でも解説を求められそうな雰囲気を感じます: 上述のnoteでも少し言及しましたが、ド

        • 9月ECB政策理事会の読み方~2度目の利下げと3度目以降~

          利下げ路線主張も10月は現状維持に 9月のECB政策理事会は市場予想通り、主要政策金利を▲25bpずつ引き下げることを決定しました。この辺り、報道されない部分も大きいように思えるので、掘り下げて解説させて頂こうと思います。ECBは総裁会見のスクリプトが日本時間翌朝にはアップされていますので、こちらをしっかり読み込むことがECBウォッチの基本となります: 確実に減速が予見される域内労働市場に加え、足許の一般物価情勢も減速が確認されていることから、今回の決定自体は元々既定路線と

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        • VW社のドイツ脱出とユーロ高

        • 弱い円の正体≒財ベースの購買力平価という仮説

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        • ドイツは日本の二の舞か?~産業空洞化について~

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          総裁選、市場の争点定まらず さて、市場のニュースは今日のところはFOMCの大幅利下げに集まっていますが(これは後ほどやります)、9月27日に投開票が迫った自民党総裁選についても相場との関連で照会が増えています。正直、経済政策について相場を動かすほどの争点が浮上しているわけではないですが、現時点の情報に基づいて簡単な論点整理はしておきたいと思います: 票読みは筆者の専門外ですが、今回は過去最多となる9名が立候補していることから、1回目の投票で過半数を得る候補が現れず、上位2名

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          ドイツの産業空洞化とユーロ~エネルギー高に押し負ける「永遠の割安通貨」~

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          ドイツの産業空洞化~日本の二の舞はあるのか?~

          産業空洞化を象徴するVW工場の閉鎖 9月2日、ドイツ最大手の自動車企業フォルクスワーゲン(VW)社がドイツ国内の工場閉鎖を検討しているとのニュースが大々的に報じられました: 従前より筆者はドイツ国内の経済活動に係るコストが上昇していることを背景に同国の直接投資フローが純流出に傾いている兆候に注目してきました。ドイツ企業の国外脱出は既に国際収支統計上では確認されつつあったもので、特に2022年から2023年にかけては海外からドイツへの対内直接投資が急減し直接投資全体では過去

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          「弱い円の正体」と購買力平価(後編)

          財PPP vs. サービスPPP 前編で見たように日本企業は「企業としての国際競争力を維持するために日本を脱出した」という道を歩んできたのが2010年前後からの史実でした。※沢山の方に読んで頂きました。有難うございます: 日本を脱出した結果、日本経済は「製造業の輸出拠点としての弱さ」を構造的に抱えることになったわけですが、これがPPPに根本的な影響を与えている、という議論の本丸に入りたいと思います。 まず、前編の最後でお見せしたように、PPPを財とサービスに分けた場合、「

          「弱い円の正体」と購買力平価(前編)

          意外に巧く行っている日銀正常化 早いものでもう9月になりました。激動の8月を駆け抜けて見て感じることは、まず日銀の正常化は意外と巧くいっているという印象です。というのも、当初大変な混乱を経たものの、結果だけを見れば日経平均株価は暴落水前の水準に戻り、円安の修正はかなり進みました。あくまで株・為替の水準について「結果だけを見れば」、政府・日銀が望んだ通りの結果になっているようにも読めます。 もっとも、高いボラティリティは様々な市場参加者のポートフォリオに傷痕を残しますので、そ

          ユーロ相場で起きていること~賃金・物価・需給~

          日米の経済・金融情勢に目が集まる中、欧州の動向からも視線を切らないようにしておきたいと思います。為替市場を見ておられる方は感じられている通り、現状、為替市場ではユーロ相場の騰勢が強まっています。この点、ユーロ圏の経済・金融情勢を如何に評価し、ECBの「次の一手」を読むかが重要になっています。特に、8月はECBが注視する四半期に一度の域内妥結賃金(労働組合の交渉賃金)が発表されていますので、この辺りを踏まえながら、現状整理だけしておきたいと思います。なお、既にメンバーシップ記事

          ユーロ相場で起きていること~賃金・物価・需給~

        記事

          折れていなかった個人の投資意欲

          投信経由の買い越しは年初来9兆円に到達 9月9日、財務省から発表された8月分の「対外及び対内証券売買契約等の状況」は相場急落を受けた家計部門の投資意欲がどのように変化したのかを確認する意味で非常に興味深い内容でした。また、機関投資家の中でも目立った動意があり、この点も注目されるものでした: 周知の通り、2024年1月以降、非課税枠が拡充されたNISA(新NISA)が導入され、家計部門は外貨建て資産(とりわけ米国株)への投資を重ねてきました。その勢いは昨年までのそれとは別次元

          ドイツの産業空洞化~日本の二の舞はあるのか?~

          産業空洞化を象徴するVW工場の閉鎖 9月2日、ドイツ最大手の自動車企業フォルクスワーゲン(VW)社がドイツ国内の工場閉鎖を検討しているとのニュースが大々的に報じられました: 従前より筆者はドイツ国内の経済活動に係るコストが上昇していることを背景に同国の直接投資フローが純流出に傾いている兆候に注目してきました。ドイツ企業の国外脱出は既に国際収支統計上では確認されつつあったもので、特に2022年から2023年にかけては海外からドイツへの対内直接投資が急減し直接投資全体では過去

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          「弱い円の正体」と購買力平価(後編)

          財PPP vs. サービスPPP 前編で見たように日本企業は「企業としての国際競争力を維持するために日本を脱出した」という道を歩んできたのが2010年前後からの史実でした。※沢山の方に読んで頂きました。有難うございます: 日本を脱出した結果、日本経済は「製造業の輸出拠点としての弱さ」を構造的に抱えることになったわけですが、これがPPPに根本的な影響を与えている、という議論の本丸に入りたいと思います。 まず、前編の最後でお見せしたように、PPPを財とサービスに分けた場合、「

          「弱い円の正体」と購買力平価(前編)

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          ユーロ相場で起きていること~賃金・物価・需給~

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          パウエル講演を終えて~もっと話して欲しかった労働市場の今後~

          注目されたジャクソンホール経済シンポジウムにおけるパウエルFRB議長の講演は「Review and Outlook」とシンプルなテーマで行われ、「The time has come for policy to adjust」との一節が材料視されました: もっとも、政策運営に新しい材料を示したとはいえず、従前織り込まれていた利下げ路線を追認したに過ぎないという見方になります。しかし、これを受けた円相場は騰勢を強めており、まさに利下げトレードが流行しているという印象が強いです:

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          円ロングは続くのか?~そのリスク~

          3年5か月ぶりのネット円ロング 為替市場ではやや円高地合いになってきました。主として米実体経済の弱体化がいよいよ可視化され、利下げもようやくダンディールとなってきたことでドルを手放しやすい空気は明らかに強まってきた感を覚えます: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN20D1J0Q4A820C2000000/ こうした中、投機筋の動向を推し量る上で参考にされるIMM通貨先物取引の状況に目をやると、円のネットポジションが8月16日時

          欧州の人手不足は解消されたのか?

          欧州の人手不足は収束中 米国や日本の材料に注目が集まる中、たまには欧州の話もという照会もありますので、今回はユーロ圏にスポットライトを当てたいと思います。実際、既に利下げ局面に突入しているECBが二の矢、三の矢を放つことができるのかという論点はFRBの利下げや日銀の利上げと等しく重要なイベントではあります。今回は日経COMEMOからお送りします: この点、ユーロ圏GDPの仕上がりを見ることが基本になりますが、こちらは若干の持ち直し傾向が見られます。需要項目別に分解すると純輸

          企業買収と「円安を活かすカード」~対内直接投資の観点から~

          本邦小売最大手企業に対し、カナダのコンビニエンスストア大手企業が買収提案を持ちかけたということが大きく報じられています。同報道は日本経済新聞による独自であり、「提案を知る複数の関係者」からの話とされていますが、買収提案に関しては当該企業が「法的拘束力のない初期的な買収提案を受けていることは事実」とのコメントを発表している。実現可否はさておき、提案自体は事実のようです。本件に係る買収金額は実現すれば5兆円以上とされ、海外企業による日本企業買収としては最大級になるそうです。 「

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          「仮面」の裏の出来事~24年上期の整理:日本円の需給~

          経常収支黒字は過去最大が視野 8月初頭、ドル/円相場は141円台まで急落したものの、その後はじりじりと値を戻しています。その後は岸田首相の退任など大きな政治材料も浮上、9月以降の総裁交代、その後の総選挙、米国の大統領選挙も重なり、元々怪しくなっていた金融市場の視界は政治的にも悪くなってまいりました。 なお、本日はこの状況で楽天証券のご依頼でライブを行うことになっています。もし宜しければ遊びに来てくださいませ。 相場の話に戻しますと、最近のドル/円相場の堅調は日銀利上げ観測

          「仮面」の裏の出来事~24年上期の整理:日本円の需給~

          ポスト岸田と金融市場

          本日、岸田文雄首相(自民党総裁)が首相官邸で会見し、9月に予定する総裁選に立候補しない意向を表明しました。情報が出揃ってはいないところですが、現状の所感を当方のメモも兼ねて整理しておきたいと思います。今回も目先のお話なので日経COMEMOとして投稿いたします。 派閥の政治資金問題などを受けて低迷していた支持率の影響を受け、再選が難しいという決断です。各種の世論調査では7~8割が岸田総裁の続投を望まないというメッセージが確認されていました。筆者は政治の専門家ではありませんが、

          注目したい「家計の円売り」の行方

          円ショートは巻き戻し完了 先週の円キャリー取引に関する連続投稿は大変多くの方に関心を持って頂きました。そこで論じたように、筆者は事が起きてから円キャリー取引の残高を争点として議論を展開し、それが円安の主因だったかのように語る風潮には賛同できない立場です: 半ば独り歩きしている感もある「600兆円」という残高は過去2年半の円安局面において殆ど使われてこなかった数字であり、この巻き戻しでドル/円相場が元の水準(円安の起点は2022年3月の113円付近)に引き戻されるかのような議