放送作家からの〝悪文注意報〟その表現がより伝わるために。
うちの息子と娘はある点でとても対照的です。
例えば、一日で起きた出来事について僕に教えるとき。「あのさ、今日は〇〇なことがあって」と切り出すところまでは一緒なのに……、
その先、話が入ってくるかどうかがまるで違う😅
一方はスッとくるけど、一方は今ひとつ。不思議なことに、3歳年下の娘のほうが昔から伝わりがイイんです。どうして、そんな差が生まれるのか。
話の構成がうまいから?
いえ、原因はもっと「そもそも」な部分にあります。
〝話〟の構成ではなく〝一文〟の作り方がうまいからなんです。
では、例文で解説していきましょう。
娘に「誰もが知っている漫画ってなんだろう?」と尋ねたところ『鬼滅の刃』との答えが返ってきたので、そちらの名場面を描写することにします。
仕事でこのような原稿を見かけたら、僕は〝悪文注意報〟を出します。文章として破綻はしていませんが、ちょっと不親切に感じます。
1段落目、僕ならこうします。
↓ ↓ ↓
字数は増えているのですが、情報はスッと入ってきませんか。
ポイントは〝一文の長さ〟と〝修飾語〟です。
(旧)はとにかく一文に情報を詰め込みすぎ。人間の脳って、一度に処理できる情報が意外と少ないんです。なので、なるべくシンプルな表現にしてあげる必要があります。
心理学の分野では〝認知負荷〟というそうです。
対策としては……、
①長い一文を二文、三文に分ける
②余計な「修飾語」は後回し
(旧)は「煉獄」という主語の前に、長々と修飾語があります。受け手にとっては〝認知負荷〟が大きいわけです。
つまり、場面が想像しにくい。
試しに、頭の中で映像化してみてください。
最初は「煉獄のアップ」から。
その場にいない猗窩座とはならないはず。
次は「炭治郎との位置関係」がわかるカット。
そこから優しく声をかける。
受け手は「ああ、血みどろだ」「強敵に受けたものなのか」「炭治郎が泣き叫んでいる」「そこに声をかけたのか」と順番に理解していけます。
この感覚を文章を書くときに意識してほしいのです。
続いて、3段落目。
↓ ↓ ↓
ここも同じ理屈です。(旧)は「亡き母」がわかるまでが長すぎます。
あと細かい違いなのですが、(新)のほうがワンカット丁寧になっています。
(旧)はいきなり炭治郎越しのカットなのに対し、(新)は「なにかに気付く煉獄」を想像させてから、炭治郎越しのカットに行く感じです。
こうした〝間〟の描写も伝わる文章のコツといえるでしょう。
それを意識したのが、最後までの流れ。
↓ ↓ ↓
煉獄の問いかけに対し、母が答えるまで。
母の言葉に対して煉獄が笑顔を見せるまで。
映像化したら、たっぷりと〝間〟をとる場面です。なので、あえて改行と「……」を入れてみました。
(新)をつなげると、こうなります。
僕が行なった修正は、みっつ。
①長い一文を二文、三文に分ける
②余計な「修飾語」は後回し
③〝間〟をとる
あなたは〝一文〟の構成まで意識できていますか?
それと……、
〝句読点〟も意識できていますか? 未読の方、よかったら🤗